新・介護百人一首

車椅子
押す手に込める
このおも
ほんの少し
伝わりますように

岩手県荒田光希 18歳)

愛知県 匿名希望
愛知県 鈴沖麗穂
兵庫県 山本光範

詞書

ボランティア活動で介護施設に伺った際、車椅子を優しさを込めて押しました。この気持ちが利用者さんに伝わりますようにと願った当時の私の想いを歌にしました。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

後ろで押す人の表情は相手には見えない。しかし、部屋までの道を景色が見えるようにゆっくり歩いたり、ガタンという衝撃がないように歩いたり、確かに押す力で気持ちを伝えることはできる。生きてきた年数の差、立つ人と座る人、さまざまな違いを前に、どうしたらこの瞬間快適に過ごしてもらえるかと、相手の気持ちを想像する。表情や言葉だけではなく、自分の全身を使ったコミュケーションに突入した感動が描かれているように思った。

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2021年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。