ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は、田沼意次おきつぐ役の渡辺謙さん、松前道廣みちひろ役のえなりかずきさんから!

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渡辺謙さんの第21回振り返り

——第21回以降、意次は蝦夷えぞ地(現在の北海道)へ進出することに関心を持ち始めます。意次はどのような可能性を見ていたのでしょうか?

それまで、いろいろな産業振興をやろうとしてきましたが、かなり手詰まり感があったんでしょう。未開の地で、大きなポテンシャルを持っているということは平賀源内げんない(安田顕)から聞かされていたし、蝦夷地が現状を打開する起爆剤になると考えたのではないでしょうか。だから、あげ(領地を召し上げること)に固執したんだと思います。

——最初に源内から蝦夷地の話を聞いたとき(第15回)、意次は関心を示しませんでした。

あのときは家基いえもと(奥智哉)の死をめぐって自分の立場が揺らぎかねない状況だったんです。落ち着いているときだったら、もっといい形で蝦夷地に関わることもできたのかもしれない。源内が亡くなった後にバタバタと手をつけたので、結果的に白てん(一橋治済はるさだ/生田斗真)や松前藩の裏をかかなければならないという、危ない橋を渡ることになってしまいました。


えなりかずきさんの第21回振り返り

——意外にも大河ドラマは初出演です。オファーを受けたときの感想をお聞かせください。

それはもう驚きました。元々時代劇が好きなのでとてもうれしかったですし、昔からの伝統的なドラマ枠に出演する責任感から、「頑張らなきゃ」と武者震いする思いでした。

NHKには小さい頃からバラエティー番組の撮影で通っていたのですが、ドラマとは縁がなくて。朝ドラのスタジオや大河ドラマのスタジオは、特に用事もないのに前を通ってから帰るという、憧れの場所でした。だから撮影初日には「とうとう大河のスタジオに入るんだ」と感動しましたし、「すごいセットだ」とか、「渡辺謙さんがいる」とキョロキョロしてしまいました(笑)。

渡辺謙さんは会うなり「ベストキャスティング!」と言って下さって……。 嬉しくてかたなかったです。渡辺謙さんのオーラがすごくて、あまり経験のないことなんですが、最初の撮影でセリフが飛びそうになりました。2~3行なのに、「何だったっけ、次のセリフ!?」となってしまって。プレッシャーがかかっていたんでしょうね。怖かったですし、でも楽しかったです。

——えなりさんが演じられる松前道廣は、松前家第八代当主です。12歳で家督を継ぎ、文武に秀でた人物と伝わりますが、今作ではかなりクセの強い役どころとして描かれていますね。

かなりぶっ飛んだ役どころですよね。最初の登場シーンで、道廣は人に向けて火縄銃をぶっ放します。それも幕府の人たちのいる前で。田沼意次はドン引きしていましたが、松前藩のなかでは当たり前のこと。道廣は狭い世界で育ったお坊ちゃまで、倫理観が飛んでしまっているんです。迷わず人に銃を向けられるタイプの人間なんですね。火縄銃をぶっ放すのも、楽しいことをしている雰囲気でやった方がいいんだろうなと思って、自分の趣味のゴルフやアーチェリーをするかのように撃つことを意識しました。

「類は友を呼ぶ」と言いますが、一橋家の治済とも仲良しです。ふたりとも権力闘争のなかで生まれ育ったから、誰かを殺すことなど「よくあること」なんですよね。火縄銃をぶっ放すのも、意次に「松前藩と一橋家とは、こんなに近い関係なんだぞ」と見せつけている部分があります。意次が引いていることに対して、ふたりとも喜びを感じている。そんなヤバい人間なんです。

今では僕も気分的に道廣になってしまっているのか、誰かを追い詰めるシーンが出てきても、最初に台本を読んだときの衝撃はもう感じません(笑)。

——役作りにあたって、何かされたことはありますか?

台本を読んで、当然ですけど、「そう言えば銃を撃ったことがないな」と思い立って、グアムに行きました(笑)。火縄銃はなかったんですけど、いろんな銃を試し撃ちして。現代の銃でも、20メートル先の的に当てるのは至難の業で、道廣の火縄銃の技術の高さを思い知りました。小さいころから武芸の訓練を受けていて、腕をあげるにつれて人格がねじれていったんでしょうね。

——今回の道廣役を通して、何か得るものはありそうでしょうか?

僕は役をいただくと、毎回自分の知らなかった部分が引き出される感覚があります。今回ですと、「自分は策略が好きなんだな」という発見がありました。あと、「人が引いている姿を見るのも好きなのかもしれない」とか(笑)。どんどん自分の知らない部分を引っ張り出してもらって、表現の場として、とても良い場所をいただいたと思っています。