週明け、いきなり寛伯父さん(竹野内豊)が亡くなってしまい、そのショックを引きずったまま、金曜日にはヤムおじさん(屋村草吉・阿部サダヲ)が出て行ってしまうという……喪失感に耐えた一週間でした。
(伯父さんが亡くなったときの状況は、やなせたかしさんが著書『人生なんて夢だけど』(フレーベル館)などに書いていますが、実際もほぼ、この通りだったようです)
一方で“おめでたい”のは、のぶ(今田美桜)と次郎(中島歩)の祝言、ですが、嵩(北村匠海)の気持ちを思うとこちらも手放しで喜べない……。
総じてダウン多めの一週間、この絶望の隣に希望を見つけられるといいんですが。今週もセリフとともに振り返ります。

もちろん、ネタバレですのでご承知おきください。


「それでも人生は続く。歩き続けるんだな」

船の一等機関士・次郎と結婚が決まったのぶ。
家族は大喜び。教師の仕事も続けることになっている。

一方、嵩は卒業制作に没頭。これを描きあげたら故郷に帰ってのぶに会おうと決めて。
銀座の雑踏が描かれた絵の中に、ひとり歩くワンピースの後ろ姿。手に持つのは“赤いハンドバッグ”だ。

柳井家では千尋(中沢元紀)が心配していた。
「のぶさんが結婚すること知ったら兄貴、卒倒してしまうがやないろうか」
そう言う千尋も元気がない。
そんな時、往診が終わった帰り際、寛に異変が……。

場面かわって、美術学校で卒業制作の絵に取り組む嵩。
そこに健ちゃん(辛島健太郎・高橋文哉)が駆け込んで来て電報を渡す。
嵩の顔色が変わる。
「チチキトク スグカヘレ」
それでも嵩は電報を机において卒業制作を続けるのだった。

寝ずに仕上げた嵩の絵を見た座間先生(山寺宏一)は
「お前らしいな。柳井嵩、この作品の提出をもって、本校での課程を終了と認める。さっさと行け!」
手に絵の具をつけたまま、夜汽車で向かう嵩。
柳井家につくと、布団の上の寛には、顔に白い布が掛けられていた……間に合わなかった。
千尋「おそいがや……もっと早うんてこれんかったがか」
こんな展開……あまりに驚いて見ていて思わず「うそっ」と小さく叫んでしまった……。

ひとり縁側に座って「伯父さん、ごめんなさい。怒ってるだろうな……ごめんなさい」と泣く嵩。
そこに千代子(戸田菜穂)が寄り添って、言う。
「嵩さん、寛さんは怒ってなんかいませんきね。寛さん、亡くなる前ね、嵩さんのこと話しよりました」

死の床で、意識が戻った寛の様子が挿入される。途切れ途切れの息で言う。
「嵩、今ごろ卒業制作必死に頑張りゆうがやろ。わしが邪魔してどうするが。最後まで描きあげんと半端で戻んて来たりしようたら、殴うちゃる。嵩が決めた道や。嵩の生きる道や。投げ出すがは許さん。嵩も、千尋も、投げ出すがは許さん」寛の遺言だったか。

そして、千代子は嵩に言う。
「寛さんと嵩さんはやっぱり心が通じおうちょったがよね」
涙の月曜日。週のスタートがキツかった。
※竹野内豊インタビュー)(※北村匠海 振り返りインタビュー

火曜日は寛のはいに羽多子(江口のりこ)とのぶが手を合わせる場面から。
千尋に挨拶をして出ていこうとする羽多子を千代子が呼び止める。

すっかりしょうすいして、やつれ、着物も着崩れている様子。
寛が好きだったウイスキーで献杯したい、という。
羽多子の亡くなった夫・結太郎(加瀬亮)と寛は子どものころから親友だった。
千代子はかつて、寛から「君はこの家と結婚したがか……」と叱られた、(※戸田菜穂インタビュー)と話す。
羽多子「寛先生にそんなに愛されて、千代子さん幸せやね」
千代子「私だけやのうて、嵩さんや千尋さんのことも、ほんまの父親以上に、愛して愛して……」
羽多子「ほんまにあったかい人や」
そのあと、千代子と羽多子は、それぞれの夫に“なぜ、さっさと先に向こうに行ってしまったのか”と恨みごとを言い合いながら、ウイスキーを飲むのだった。

屋村はのぶにあんぱんの入った袋を渡す。(いつも嵩を気にかけるヤムさん)
「どうせあいつのことだから、飯もろくにのどを通らずにメソメソしてんだろ」

いつものシーソーの空き地にいくと、そこに寛に言われた言葉を思い出しながら泣いている嵩がいた。

寛の回想シーン。
「なんのために生まれて、なにをしながら生きるがか、見つかるまで、もがけ。必死でもがけ」
「泣いても笑ろうても、陽はまた昇る。絶望の隣はにゃあ、希望じゃ」
(この回想シーンも泣けました……)

あんぱんの入った袋をのぶから手渡された嵩は、一口食べて「おいしい」。
「もっと早く、もっと早く帰ってれば。伯父さんに会えたんだ。でも、間に合わなかった……」
お礼の気持ちを伝えられないまま、寛と別れてしまったことを悔やむ嵩。
のぶは、寛先生はきっとわかってくれていたと慰める。
「ぼくは、最後の最後まで、ダメな息子だった。あの家に来た時、なんか、なんかへんな意地張って、伯父さんのこと、一度も“お父さん”って呼べなかった……もう、会えないんだもんな。ごめんなさい……ごめんなさい、お父さん。……お父さん」
のぶも、泣きながら、
「寛先生、きっと喜んちゅうで。嵩がやっとお父さんって呼んでくれたって。きっと、あの優しい目で笑いゆうやろ。それに、絵を完成させて、ようやったって」
少し笑みが出る嵩。
「ありがと。のぶちゃん」
「なにゆうがで。うちは、嵩の一番古い友達やき」
それを聞いて、何かを言い出そうとする嵩。
「のぶちゃん……ずっと伝えたかったことがあったんだ」
のぶ「なに?」
嵩「ぼくは……やっぱり、いいや。のぶちゃんの言う通り、のぶちゃんは僕の一番古い友達だから。これからも、よろしく」
のぶ「こちらこそ」

やっぱり言い出せない嵩だった。
寛伯父さんの死の“痛み”に耐える嵩が、さらに痛手を受けることにならずによかった、とも言えるけれど。

初七日が過ぎて、のぶに想いを伝えられないまま嵩は東京に帰ることに。
駅に向かう途中、朝田家の前でメイコ(原菜乃華)と挨拶しているところに、次郎が訪ねてくる。
「次の航海が決まったので、のぶさんに祝言の日取りをお伝えに来ました」
驚く嵩。慌てるメイコ。
嵩「祝言とかって……結婚するんですか?」
次郎「はい」
嵩「のぶちゃんと?」
次郎「はい」
「そ、それは、おめでとうございます」
そこにのぶが出てくる。
「のぶちゃん、お幸せに」やっと言う嵩。
「うん、ありがと」

その嵩をヤムさんが自転車で追ってくる。やっぱりどうしても心配なのだ。
「また線路に行くか?」と、わざとからかうように言う屋村に、
「大丈夫ですよ。絶望の隣は希望ですから。伯父さんのこの言葉を信じて、ぼくは生きていきます」
ところが屋村が続ける。
「本当の絶望は、こんなもんじゃないよ……それでも人生は続く。歩き続けるんだな」
「絶望の隣は、絶望の二丁目かもな」と笑わせて。


屋村「ヤなもんは ヤなんだよ」
蘭子「うちはもう、戦争なんか関わりとうない」

のぶが結婚して出ていく前の夜、三姉妹の寝室。
みんながメソメソし始めたところで、のぶがラジオ体操を始める。
半泣きで体操する娘たちの声が、階下の羽多子にも聞こえてきた。

翌日、のぶと次郎の祝言が朝田家で行われた。
のぶの打掛は黒地に鮮やかなオレンジの松が描かれている。
家族写真のシャッターは屋村が押した。

一方東京に戻った嵩はこたつでふて寝。
健ちゃんが銀座に誘うも、立ち上がる気配がない。
無理やり銀座に連れ出して、向かったのは、あのパン屋さん。
そこで意外な人物が……店内に母・登美子(松嶋菜々子)がいる!

「嵩? 嵩じゃないの」
嵩「東京にいたんだ。どうしてここに?」
登美子「ここのパン屋さん、憶えてる? こんなところで会えるなんてね。母さん、ずっとあなたに会いたかったのよ」

のぶと次郎の新婚生活が始まった。だが、次郎はすぐに航海に出ることになっていた。
のぶは次郎の荷造りする様子に父を思い出す。
次郎は地図を広げ、のぶに航海の話を聞かせるのだった。

のぶの勤める尋常小学校に陸軍の中佐が講演に来た。
その将校からのぶは、軍へ納める「乾パン」の注文を受けた。

有難い話、名誉なお役目! とよろこぶ朝田家一同。
そこへ帰ってきた蘭子(河合優実)は、ついっと家族の輪を素通りしていってしまう。

一方、朝田家の前を通った千尋。屋村が「あんぱん食うか?」と声をかけるも「また明日来ます」と通り過ぎ……。

気になった屋村があんぱんを持って後を追うと、シーソーに腰かけて本を読んでいた千尋は大きくため息……なんと、医者の勉強⁈
「わしがやるしかないがです」
屋村「お前も案外バカだな。医者はイヤイヤやるような仕事じゃねぇ。人間、得手不得手があって当たり前だ。神様がわざわざそう作ったんだからさ。どんなにがんばっても怖いもんは怖い、ヤなことはヤなんだよ」
「だいたいな、おまえがしょい込んで苦しむことを、あの先生が望んでいるわけねぇだろう。お前はお前の人生を生きろ」
千尋「ヤムさんは、銀座のパン屋におったがですよね?」
屋村「そんな昔のことは忘れたよ。適当だよ。適当に生きるって決めたんだ。適当は気楽でいいぞ。なぁ、優等生!」

その屋村が(風呂桶を持って、ご機嫌で)帰ってきたところで、のぶが乾パンを焼いてほしいと頼む。
聞くなり屋村は、その話を断ってくれと言う。
「おれは、ヤなもんはヤなんだよ。どうしてもやりたいなら勝手にやりな」
そこを止めに入る羽多子。

朝。釜次(吉田鋼太郎)は怒っている。
「こんなええ話、どういて断るがな!」
蘭子は「うちはわかる気がする」という。
「兵隊さんのために乾パンを作るがは、それを食べてもっと戦えっていうことやろ?」
国民が一丸となって早く戦争に勝たなければいけない、と言われても、それが嫌だと思う人もいる、と。「嫌なもんは嫌や」。

のぶと蘭子が言い争いをはじめそうになって、羽多子が「やめなさいっ!」
配達に出ていく屋村を見送り、羽多子はのぶに
「あんたの気持ちはわかるけんど、あの人に無理やり嫌な仕事をさせるわけにはいかん」婦人会で乾パンは断っておく、と言う。

その日学校で、のぶが乾パンの依頼を断ると、校長に叱られてしまう。うちに戻ってくると、そこには困っているメイコがひとり。

婦人会で羽多子が乾パンの依頼を断ると、
「お国のために乾パンは焼けん、そういうことですかっ」
と詰め寄られ、承諾するまでうちに帰してもらえない、というのだ。
もう一遍、屋村に頼んでみるというのぶを、蘭子が止める。
「うちはもう、戦争なんか関わりとうない」
メイコは「こんなん、いやや」と泣く。「このままやったら家族がバラバラになってしまう」
乾パンの受注を巡って、戦争へのそれぞれの思いが噴出、窮地に立たされた木曜日。


「これ以上、あいつを苦しめたらいかんがじゃ」

朝田パンのあんぱんは、ぱったり売れなくなった。
「陸軍に逆らった」とうわさになっているらしい。和尚もだんも心配して訪ねてくる。
羽多子も相変わらず、婦人会で仲間外れが続いていた。

夜、何やらメモを書いている屋村に釜次が近づく。書いているものをサッと隠す屋村。
はじめ、なぜ乾パンを焼かないのか詰め寄る釜次だったが、とうとう土下座して頼む。
「名誉が欲しいがやない、金が欲しいがでもない。羽多子さんや、あの子らがびんだがじゃ。……おまんも10年もここにおったらわかるじゃろ」
「おまんがそこまで突っぱねるがは、よっぽどのことや。わけをいいとうないがやったら言わんでもえい。詮索ばせんけんど、そこをなんとかこらえてやってくれんろうか。頼むっ」

ところが……屋村は逆に、話をしたくなった、と釜次を座らせる。
夜中、釜次だけに……それはどんな話だったのだろうか……。

翌朝、朝田パンに突然、陸軍から大量の小麦粉が届いた。ほかに上白糖、黒ゴマ、塩……。
憲兵がやって来て、材料を確認。
慌てる釜次や羽多子をしり目に、いますぐ乾パンを焼くように言う。

そこに現れた屋村。あんなに嫌がっていたのに、陸軍からの指示書を一瞥いちべつすると「昔のままだ」。
慣れた手つきで台に小麦粉を敷き、乾パン作りを始める。
前の晩、何があったのか……。

屋村は羽多子に手伝わせる。
「お前らも、ちゃんと、覚えろよ」
はしゃぐ朝田家の面々……の中に、心配そうに屋村を横目で見る釜次がいた。
出来上がった乾パンは、木箱に載せて出荷されていった。

明け方、荷物をまとめて出ていく屋村の姿があった。
なんども、振り返る。木戸をそっと閉めて……。

物音に気付いて寝所を抜け出すのぶ。そこに釜次が……黙って見送っていた。
追いかけようとするのぶを釜次が止める。どうして? というのぶに
「これ以上、あいつを苦しめたらいかんがじゃ」
「苦しめる? 釜じい、どういうこと?」

歩き去る屋村の姿が……消えた。


今週は、のぶや嵩(そして、見ている私たち)の心の支えともいうべき人たちが2人、いっぺんに去ってしまい、つらい、苦しい一週間でした。時代はさらに切迫していき、来週はとうとう嵩が出征してしまうようです。タイトルは「生きろ」。私たちの心の声でもあります。みんな、生きて! お願い! ほいたらね。