聞き手 遠田恵子
車椅子ダンスに感動
——ダンスと出会ったのは、どんなきっかけで?
キャロット 入院中に看護助手の方から「車椅子ダンスっていうのがあるよ。退院したら調べてみたら?」と勧められたんです。以前、高校時代にバトントワリング部に入ってたという話をしたので、探してくれたみたいで。
退院後、早速車椅子ダンスの教室を探し出して見学に行ったら、私とは違う障害のある人たちが、車椅子を見事に操作して笑いながら音楽に合わせて踊ってました。その姿を見て、「すごい、こんな世界があるんだ」と感動して。それからその教室に入って、舞台にも上がるなどいろいろ経験させていただきました。
その後、ちょっと違うダンスもしたいなと思い、ちょうど自宅付近にジャズダンススタジオがあったので、電話して早速見学に行きました(笑)。
——行動力ありますよね。
キャロット あるんですよ(笑)。スタジオの先生からは「障害のある方を教えたことはないので、私も勉強させていただく形でよければ」と言っていただき、毎週通うようになりました。
世界中の人と触れ合いたい
——事故から7年弱。中学生だったお嬢さんも……。
キャロット はい、今年で22歳になります。
——お嬢さんもダンスの舞台を見に来られるんでしょうか。
キャロット それがですね、一切なくて(笑)。
——てれくさいのかしら?
キャロット 娘からは「テレビに出たりとか、目立つことはしないでね」と言われてたんですが、去年、世界中に配信された東京パラリンピックのオープニングセレモニーに出演しました! 娘はあきれてました(笑)。
——これからどんなことをやってみたいですか?
キャロット 子どもたちに、障害があっても笑って踊ってみんなと触れ合えることをもっと伝えたいのと、あとは娘への恩返しですね。
一人で踊る機会を重ねるごとにたくさんの拍手をもらって、最後には泣いてる人もいたり、「元気をくれてありがとう」と言ってくれる人もいたり。これからも、踊りを通して世界中の人たちと触れ合いたいと思っています。
——今どんなお気持ちですか。
キャロット 今この一瞬、もう本当に幸せです。これからも、一人でも多くの人たちに勇気・元気・笑顔を届けて舞っていきます!
※この記事は、2022年3月22日放送「ラジオ深夜便」の「右手右足を失っても 今がいちばん幸せ」を再構成したものです。
1967(昭和 42)年生まれ 、東京都出身。2015(平成27)年10月、トラックの衝突事故で右手と右足を切断。その後車椅子ダンスと出会い、現在は義手・義足のダンサーとして活躍中。
構成/後藤直子
(月刊誌『ラジオ深夜便』2022年7月号より)
購入・定期購読はこちら
12月号のおすすめ記事👇
▼前しか向かない、だから元気! 池畑慎之介
▼闘う現代美術家 村上隆の世界
▼毎日が終活 菊田あや子
▼深い呼吸で心を穏やかに 本間生夫 ほか