とうとう嵩(北村匠海)は大陸(中国福建省)に派兵されました。
なぜか嵩を助けてくれる八木上等兵(八木信之介/妻夫木聡)との出会い。健ちゃん(辛島健太郎/高橋文哉)との再会。そして……木曜日は「圧巻の15分」(ネット上でも話題でした)。弟・千尋(中沢元紀)との別れのシーンは涙なしでは見られませんでした。「この戦争がなかったら……」の千尋のセリフはまるで一編の詩のようで……。
辛い一週間でしたが、しっかり振り返っていきましょう。
もちろんネタバレですのでご承知おきください。
「俺たちに逃げ場なんか、なか」

昭和17年6月、嵩は福岡小倉の連隊に転属になった。幼なじみの今野康太(櫻井健人)と一緒だ。
ここで「上官から殴られる」場面が次々と。
高知の言葉を話しただけで先輩の馬場力(板橋駿谷)にいきなり殴られ、
井伏鱒二の詩集を持っていただけで殴られ……(タイトルは『厄除け詩集』。有名な一節「ハナニアラシノタトヘモアルゾ サヨナラダケガ人生ダ」は4月28日、ヤムさん[阿部サダヲ]のセリフにもありました)。

そこに「戦友」(新兵の世話を焼く古兵、ということ)八木上等兵が登場。軍人勅諭を暗唱せよ、というが……。

起床ラッパから始まる一日。とにかくみんなと一緒、遅れてはいけない。
午前中は教練。昼食のあと学科または教練。とにかく殴られ続ける嵩……。
夕食はカレーだ。
芋の数が違うと言いがかりをつけられ叩かれ、ついでに初年兵全員が並ばされて(意味なく)叩かれ……。
八木「やめとけ、メシの最中は。埃が舞うだろう」
ボコボコにされた嵩は隣の康太に小声で「コンタ君、ぼく、ここでやっていけるかな」
しかし康太はカレーをほお張りながら「軍隊は天国や。ライスカレーはうまいにゃ」。そっと自分のカレーを康太に差し出す嵩。それを静かに見ている八木。
21時30分、消灯ラッパのあとも、八木はひとり月明かりの窓外をじっと見ていた。

嵩は馬の世話係になった。
八木上等兵とは何者なのか。嵩は同僚に聞いてみるがわからない。
神野班長(奥野瑛太)にも殴られる、が……その班長をたしなめる八木⁈ 謎だ。
ここで馬場が、初年兵を「かわいがろう」と画策。戦闘帽が盗まれた、といって、言いがかりをつけはじめる。
「畏くも!」で全員が直立不動。
「天皇陛下から貸与いただいた戦闘帽であるぞ!」

嵩はサンドバッグ状態に。そこに八木が割って入り嵩を連れ出す(救い出す)。
「お前は戦地までもたないかもしれんな、絶望して便所か裏庭で首を吊るってことだ……」
「軍人勅諭は? 朝までに暗記しろ」
嵩に靴磨きを命じる。そこに現れたのは……健ちゃん?

知らぬふりをする健ちゃんにショックを受ける嵩。
ワッサワッサワッサリンノ……と小声で歌うと……。
健太郎「なんで柳井君がここにおるとよ」
健ちゃんは炊事班にいるという。襟章は星が2つだ。(嵩は1つ)ちょっと早く入るだけで違うのだ。
3か月後、嵩は「班長殿の当番」となった。この役目、八木が推薦したらしい。
「健ちゃん、八木上等兵、知ってる?」
大卒なのに幹部候補生の試験を受けないから上に行けないとか、金鵄勲章(武功のあった軍人に与えられた)を持っているとか、特務機関から来たとか……噂の数々。
誰も本当のことはわからない。
兵隊は階級よりもメンコ(年数)の数が優先される、という。八木上等兵は4年兵だ。上官にも顔が利いて目を付けられたら野戦送りにされるという噂も。

ある日、中隊長が訪れ、突然「軍人勅諭の五か条を言ってみろ」
先輩の馬場はモゴモゴ……「おい新兵、お前はどうだ?」
お鉢が回ってきた嵩は完璧に言って見せる。静かに聞いている八木。
「第四条の意味は?」完璧。
「おまえ、柳井だったか? しっかりやれ」
八木にお礼を言う嵩。だが、八木は知らん顔。「何の話だ?」

中隊長から幹部候補生試験を受けさせろという指名があり、嵩は問題集を渡された。
これまた八木の一言で、一切の当番も使役も免除になり、嵩は必死に試験勉強をする。

八木にお礼を言うと、
「これで落ちたら古兵たちから何倍も仕返しされるな……引くも地獄、お前には受かるしか道はないな」

試験前日、徹夜で勉強したい嵩は厩舎の不寝番を申し出る。そこに健ちゃんがあんぱんを差し入れてくれた。
「千尋なら簡単に受かるのにな。……俺の自慢は弟だけだよ。またあの時みたいに笑える日が来るのかな?」

翌朝。不寝番のはずが寝落ちしてしまい「今日の試験は受けられんぞ!大バカ者!」嵩、ピンチ。
しかしどうやら受験は許されたようで……3週間後。中隊長の部屋に呼ばれた嵩は「こともあろうに不寝番が眠り込むとは何事だ!」と叱責された。
嵩「自分は幼少期から故郷の高知で『たっすいがぁ』と呼ばれておりまして……」
本来試験は受けられないはずだったが、班長がどうしてもと頼み、受験を許した、と知らされた。
試験は良くできていたが、居眠りをしていたため、乙幹に繰り下げ……つまり「乙種幹部候補生」に合格、だった。
班長に礼を言うと、「俺ではない。俺も頼まれたんだ。変わり者から」

部屋には八木がいた。
お礼を言うと、また知らん顔。
嵩「変わり者と言ったら八木上等兵殿しか」「なんだと?」
どうして幹部候補生の試験を受けないのかと問う嵩に、八木は、一日も早く娑婆に戻りたいから抵抗しているのだ、と答えた。

健ちゃんにもおめでとう、と言われる。
嵩「受かったことを聞いた時はうれしかったんだけど、よく考えたらどんどん戦争から逃げられなくなってる」
健太郎「俺たちに逃げ場なんか、なか」

そこに馬場が同僚をともなって来た。何をされるかびくびくする嵩と健ちゃん。
「柳井~」
「乙幹合格、おめでとう」ふたりは一升瓶を持ってきたのだった。
酒を酌み交わしながら「だいぶ殴ってすまんやったな」。
何か歌え、と言われて、「ワッサワッサ……」と歌う嵩だった。
「何のためにうまれて、何をして生きるがか。わからんまま終わるらぁて、そんながは嫌じゃ。この戦争さえなかったら……」

高知ののぶ(今田美桜)のもとには次郎(中島歩)から手紙が届く。
「のぶさん、元気にしていますか。……写真の腕は上がりましたか?」
「ここにいるとわかることがある。残念ながら君の言っていた通りにはならないと」
のぶが言っていたこと、とは「この戦争が終わるときは、日本が勝つ時です」を指していた。

入隊して2年後の夏。嵩は伍長になっていた。
初年兵2人に注意すると、彼らは「気をつけ」の姿勢をとって殴られる準備(?)をするが……。
「俺は殴るのは苦手だ。こっちの手が痛いからな」
初年兵と一緒に靴磨きを始める嵩。それを見ていた八木は「変わらんな」。

千尋から手紙が来た。差出人には海軍少尉の肩書が?
「前略。兄貴、元気か? 今度の土曜日、小倉で会おう」
白い海軍の制服を着た千尋がやってくる。
「おまえ、本当に海軍さんになったんだな」
「見ての通りだ。兄貴は伍長殿か」

木曜日は、嵩と千尋が向かい合って酒を酌み交わす場面から。
「千尋、どういうことだ? 俺はてっきり、京都帝国大学に行って勉強に励んでいるとばかり。ちゃんと説明しろ」
千尋「卒業が半年繰り上げになって、海軍予備学生に志願した」
嵩「志願?」
大学の学生同士の会話の中で「どうせ兵隊に行くなら、泥臭い陸軍より海軍に志願しよう」という流れになり、千尋も決心を促されたという。
「みんなが行くのに、一人だけ行かないわけにはいかなかった」
千尋は海軍に入ってからこれまでの訓練や任務について淡々と語った。
「任務は駆逐艦の一番底で、敵の潜水艦のスクリュー音を探知して爆雷を投下する」

「千尋……おまえどうしちゃったんだよ。なんでそんなに落ち着き払っていられるんだ? お前の口から爆雷を投下するなんて聞きたくなかったよ。お前が耳を澄ませて聞きたかったのは敵のスクリューの音じゃないだろう? 弱い者の声を聞いて救うために、法科に行ったんだろう? お前は家族にとっての誇りなんだよ。伯父さんや伯母さんにとっても、母さんにとっても自慢の息子で。俺にとっては世界でたった一人の弟なんだ。
伯父さんがよく言ってたじゃないか。何のためにうまれて、何をして生きるがか。敵の潜水艦をやっつけるためじゃないだろう」
千尋「もうやめてくれ!兄貴はわしにどうせいって言うがな? わし、5日後に佐世保から駆逐艦に乗るがや」
ハッとする嵩。
「行先は南方や。もう後戻りはできん。わしは、この国の美しい海や山や川を守るために戦う。伯母さんやおしんちゃんを守るため、それからわしを生んでくれたあの母さんを守るため、のぶさんや国民学校の子どもらを守るため、立派に闘う。そのためやったら命らぁおしゅうない」
兄貴もそうだろう、という千尋に無言の嵩。

渡したいものがある、と言って千尋は何かを取り出した。
「伯父さんの机の引き出しから出てきたがや」
それは小さい手帳だった。新聞記者をしていた父・清(二宮和也)が仕事で大陸に行ったとき、つけていた日誌だという。
「やっぱり、兄貴が持っちょったほうがいいき。お守りに」
「いや、いいよ。お守りなら千尋が持ってた方が」
千尋は「わしにはこれがあるき」と父の写真を見せる。
「小さいころ、伯父さんの家に来た時から、ずっと大切に持っちょった」
嵩「へえ、知らなかった。お前のことなら何でもわかってるつもりでいたけどな」
最後に何かバカみたいなことしないか? 柔道でも、拳闘でもいい、という嵩に、
「わしは、兄貴と殴り合いは二度とごめんや」
嵩「千尋がしたいこと、言ってみろ」
千尋「わしはもう一遍、シーソーに乗りたい」
嵩「のぶちゃんもいて、楽しかったな」
千尋「もう一遍、のぶさんに会いたいにゃぁ」
嵩の顔色が変わる。「おまえ……もしかして」
千尋「そうや。わしはのぶさんが好きや。子どものころからのぶさんを慕うちょった。兄貴の嫁さんになるがやったら、あきらめもついたのに」
「そうだったのか」(嵩は気づいてなかった……)

そこで千尋は突然、嵩の胸ぐらをつかんで
「何ぐずぐずしよったがな! 贈り物のハンドバッグも渡せんで、思いも伝えられんで、おめおめとのぶさんを他の男にとられて。のぶさんの言う通り、兄貴はたっすいがぁのあほじゃ!」
小さい声で「ごめん。何にも言えない」
千尋「わしは生きて帰れたら、もう誰にも遠慮はせん、今度こそのぶさんをつかまえる」
嵩「何言ってんだよ。彼女は人妻だぞ?」
千尋「かまわん!」
そして「わしもよく、伯父さんがいいよったあの言葉を思い出すがよ。何のためにうまれて、何をして生きるがか。わからんまま終わるらぁて、そんながは嫌じゃ」
「この戦争がなかったら、わしはもっと法学の道を究めて、腹をすかせた子どもらや虐げられた女性らを救いたかった。
この戦争がなかったら、いっぺんも優しいことばをかけちゃれんかった母さんに、親孝行したかった。
この戦争がなかったら、兄貴ともっと何べんも、酒を飲んで語り合いたかった。
この戦争さえなかったら、愛する国のために死ぬより、わしは、愛する人のために生きたい」

千尋を抱く嵩。
「千尋、生きて帰ってこい。必ず生きて帰れ。生きて帰ってきたら、今度こそ、自分の人生を生きろ」
「兄貴、お元気で」
「武運長久を!(小声で)祈ってるぞ」
「ありがとうございます。柳井千尋少尉、行きます!」と敬礼。
カナカナとヒグラシの声が窓から入ってきた。
(※中沢元紀インタビュー)
「なんとしてでも生きて帰りたいのです。何のためにうまれてきたのか、その理由すら、まだわからないから」
嵩のいる連隊も、大陸に行くことになった。出発前日、嵩は馬場の似顔絵を描いた。
酒を飲んで明るすぎるほど盛り上がる仲間たち。
ひとり外で月を見上げる八木。
「バカ騒ぎは性に合わん」
「兵隊って悲しいですね。自分たちがどこの戦地に送られるのかも教えてもらえないなんて」
日本の戦況を尋ねる嵩にあっさり「危ないな」と答える八木。
嵩は八木の横顔を描いている。
「明日をも知れぬ命だというのに、よく酒飲んで騒いでいられますよね」
「だから騒いでるんだ。そうでもしないと、不安に押しつぶされてしまうから。みんな必死に笑って恐怖に打ち勝とうとしている」
そして「お前はどうなんだ?」と八木が尋ねると、
「自分はこうして絵を描いていると心が落ち着くんです」
肩を組んで歌う兵士たちの声が聞こえてくる。
「戦友殿、いろいろありがとうございます」
嵩が、これまで自分を導いてくれたことへの礼を言うと、八木は
「井伏鱒二の詩集のせいだ」
詩集を見た時、同じ匂いを感じた、という。

これまでのお礼、と言って、描いた横顔を渡す嵩。絵をじっと見つめ……
「柳井、お前は俺と違って弱い。弱いものが軍隊でなんとかやっていくには、要領を覚え、進級して力をつけるしかない。だが、戦場ではその伍長の階級章なんか、お前を守ってはくれん。弱いものから死んでいく」
嵩「自分は、なんとしてでも生きて帰りたいのです。何のためにうまれてきたのか、その理由すら、まだわからないから。教えてください。自分のようなものが生き残るにはどうしたら……」
八木「弱いものが戦場で生き残るには、卑怯者になることだ。仲間がやられても仇をとろうなんて思うな」
(※妻夫木聡インタビュー)

嵩や健太郎がいる小倉連隊が向かったのは、中国福建省の奥地。
小休止をしているところでいきなり銃声が!
一斉に伏せて周囲に銃口を向ける嵩たち。一気に緊迫する。
人影に向かって発砲しようとしたところで、相手が日本兵だと判る。

康太と二人、中国の市場を見て歩いていると、いきなり声が。
「たっすいがぁの嵩か?」
岩男(濱尾ノリタカ)だった。嵩が伍長になっているので、岩男の方が敬礼する。
「自分は兵長の分際で失礼しました」
嵩「幼なじみなんだから、いいよ」
弁当を嵩から奪った小さい頃の思い出話を、岩男と康太は楽しそうにするのだった。

休養となったその日、上官が現れ突然、嵩が呼ばれた。
八木の横顔を描いた絵を見せて「これを描いたのはお前か?」と問い詰められ……。
来週は戦争が激しくなり、嵩たちはピンチに陥りそう。そして、予告ではどうやら高知にいるのぶたちも空襲に遭うような……次週は「逆転しない正義」。
「正義は逆転する」でスタートしたこのドラマ、逆転しない正義とは? ほいたらね。