どうも、朝ドラ見るるです!
ついに始まりましたね、「虎に翼」! トラコこと、主人公・とも役の伊藤沙莉さんの演技が光ってた〜! これから半年間、トラコの成長を見守るのが楽しみです♪ 

ていうか個人的には……第1週からトラコに共感しまくりでした。いまドラマの舞台になっている昭和初期は、女の子は結婚して、“よき妻よき母”になるのが当たり前、という時代。その価値観にピンときていなかったトラコは、ひょんなことから“大学で法律を学ぶ”という、新たな選択肢を手にする──。

わけですが、令和を生きる見るる(ギリギリZ世代の20代)には、そんな価値観、ピンとこないどころじゃない! そりゃあ、よき妻もよき母も、悪き妻や悪き母より、ずっといいと思いますよ? でも、“それだけが女の幸せ”って人から決めつけられるのは、やっぱりありえない!

それに、自分の生き方くらい、自分で決めたいよ! たとえ、選んだ道の先で“地獄”が待っていたとしても、“自分で選んだ”ってことに意味がある、と思う!(←Z世代の主張)もちろん時代が違うんだってわかってるけど、例によってドラマの中のことだってわかってるけど、む〜。モヤモヤが止まらない!
うーん、これはがぜん、トラコを応援したくなってきたぞ……!

ところで、やっぱり、法律に詳しくない見るる的には「はて?」となるポイントも、いくつかありました。そこで今回も、「虎に翼」の時代背景に詳しいこの方に、いろいろ質問をぶつけてみたいと思います。

ジャーン! NHK解説委員の清永聡さん!
前回は、寅子のモデルである淵嘉ぶちよしさんのことを詳しく教えてもらいましたが、さて今回は……?

日本国憲法第14条「すべて国民は法の下に平等」プロローグに込められた意味とは?

見るる 「トラつば」、ついに始まりましたね〜!

清永さん 始まりましたね。もちろん私も見ましたが、良かったですね〜。特に、トラコが河原で「日本国憲法」の条文を読むシーン。さらに第14条1項の全文を読み上げるナレーションは印象的でしたね。

見るる それ、ほんとに冒頭じゃないですか(笑)! でも実は、ちょうどそこをお聞きしたかったんですよね。第1週を見て、このドラマが、新しい女性の生き方とか、男女平等とかを1つのテーマにしていくんだってことはわかったんですが……。日本国憲法をあれほど印象的に紹介する意味って、ズバリ、何なのでしょうか?

清永さん よくぞ聞いてくださいました。ではまず、日本国憲法第14条1項をおさらいしましょうか。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

見るる うんうん。 “法の下の平等”、学校でも習いました! ふだんは、あんまり意識しないし、当たり前のことを言っているようだけど、こうして改めてみると、大事なことですね。

清永さん あのシーンは、新憲法、つまり今の日本国憲法が、トラコの人生を大きく変える、あるいは支えるものになることを示唆しさしているのではないかと私は感じました。新憲法が公布されたのは1946(昭和21)年。戦後の焼け野原の中、日本国憲法が人々に希望を与えたということを表す描写だったのではないでしょうか。

見るる そういえば、トラコだけじゃなくて、橋の下にいたおばあさんや階段の上に座ってた女の子も、熱心に新聞を読んでいましたしね。それに、タイトルバックの映像でも、イラストになって再登場していました。

……ということは、これがこのドラマの大事なテーマのひとつですよってことを示しているんですよね。つまり、トラコのモデルである三淵嘉子さんにとっても、憲法14条は、よほど重大な意味を持ったものだったと?

清永さん 実は、三淵さん自身が、NHKのラジオで日本国憲法を初めて見た時の気持ちを語った内容が残されているんですよ。

「憲法で男女平等ということを知ったのが、私の一生の中で一番素晴らしい瞬間でした。いまの若い方には分からないでしょうが、本当に平等ではなかったの。だから本当に憲法というのは、日本の社会を新しい人間らしい社会にした大きな力だと思います」
(ラジオ第1「あの時わたしは」1981年5月放送より抜粋)

つまり、三淵さんもドラマと同じように、新憲法、特に14条を読んでその理念に感動した一人だったんです。

見るる “私の一生の中で一番素晴らしい瞬間”……!! そんなに!? うーん、確かにそれはよほどのことですね。なるほど、これから始まるドラマの冒頭に出てくるのも納得です。

あと、このお話をされている1981(昭和56)年って、見るるが生まれるずっと前なんですよね。だから、男女差別が激しすぎる昭和の価値観にピンと来ないのは、自分には当然だって思っちゃったんですけど……「若い方には分からないでしょうが」って、三淵さんほどの人に言われると逆に、「分からないままじゃだめ」なんだろう! と、思えてきました(笑)。若いとか世代とかじゃなく、ちゃんと知っておくべきですよね、憲法のことって。

清永さん はい。憲法については、現代も改憲・護憲双方でさまざまな意見がありますし、そうした議論は大切なことだと思います。ただ「憲法改正の是非」とは別に、あの時代、新しい憲法が戦後の日本で生きる“よすが”になった人がいたことは、歴史的な事実だと思いますよ。

そして、三淵さんが感じた憲法への「感動」が第1回からしっかり描写されていて、司法を扱う物語として、真っ正面から向き合っていることを示していると感じました。見るるさんも、このドラマを見ていくうちに、その意味が、どんどん実感できるようになってくると思いますよ。

見るる では、次の質問です! 時はさかのぼって、戦前の民法についてなんですけど……。

清永さん ああ、その件に関しては、私よりも、「虎に翼」で法律考証を担当されている“あの先生”に質問してみるのがいいんじゃないでしょうか。

見るる え、清永さんより詳しい方が……!? ありがとうございます、さっそく行ってきます。清永さん、今回も、ありがとうございました〜!

清永さん はい、おつかれさまでした。あ、そうそう、私が出演する番組「みみより!解説」でも、随時「虎に翼」の背景やモデルについて解説をする予定です。ぜひ、そっちもチェックしてみて……って、あれ? 見るるさん? 見るるさーーん?(もう行っちゃった……)

★後編に続く

※清永解説委員が出演する「みみより!解説」では、定期的に「虎に翼」にまつわる解説を放送します。番組公式サイトでも記事が読めます。
2024年4月2日放送の『みみより!解説「虎に翼」解説 三淵嘉子と“男女平等”』はこちらから(NHK公式サイトに移ります)

清永聡(きよなが・さとし)
NHK解説委員。1970年生まれ。社会部記者として司法クラブで最高裁判所などを担当。司法クラブキャップ、社会部副部長などを経て現職。著書に、『家庭裁判所物語』『三淵嘉子と家庭裁判所』(ともに日本評論社)など。「虎に翼」では取材担当として制作に参加。

取材・文/朝ドラ見るる イラスト/青井亜衣

"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。