「青のオーケストラ」 
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45

※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/


ああ、青野くんは人に恵まれているんだな……。
演奏において多くの示唆を与えてくれる先輩たちも。青野ママが入院したことを心配して駆けつけた仲間たちも。彼にとっては、かけがえのない存在。それがしっかりと伝わってくる、第16話「心配」でした。

それにしても。この流れ、引っ張りますねぇ。
前回の予告編で、佐伯直が口にしていた

青野くんに、話したいことがあるんだ。

という言葉の具体的な内容は、次回に持ち越しなのか!
いや、予想はしていたのだけれども! ドラマの「引き」としては、最高なんだけれども!! これは、ある種の「クリフハンガー」なのかもしれない……。
この佐伯の告白で、物語が大きな山場を迎えることは明白。それがどんな展開になりそうなのかを考える前に、まずは第16話「心配」の内容を整理しておきましょう。


定期演奏会に向けて合奏練習が行われる中、青野(声:千葉翔也)が部活に姿を見せなかった。顧問の鮎川先生(声:小野大輔)によると、青野の母親(声:斎藤千和)が倒れ、入院したのだという。部員たちは心配で今ひとつ身が入らないまま練習を続けるが、特に青野の母のことをよく知る律子(声:加隈亜衣)は、大きなショックを受けていた。何度かけても繋がらない電話。じっとしていられず、青野の家に様子を見に行くと決めた律子に、佐伯(声:土屋神葉)やハル(声:佐藤未奈子)、山田(声:古川慎)も加わった。

青野は、4人の突然の訪問に驚きながらも、母親が過労とストレスで体調を崩し、しばらく入院して様子を見ることになったと説明。さらに父親への反発から一度ヴァイオリンを手離したこと、佐伯のソロ演奏を聴いた後に彼を避けてしまった理由など、ぽつりぽつりと自分のことを話し始めた。
そんな青野の胸の内を聞けたことで4人は気持ちが少し落ち着き、帰宅の途につく。しかし、佐伯はひとり青野の家に引き返していた。


ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

精神的にいっぱいいっぱいだった青野くんの気持ちを、優しく解きほぐしてくれた仲間たち。青野くんは「いろいろしゃべりすぎた?」と恥ずかしがっていたけれど、本音を語ってくれたことにみんなはうれしく思い、青野くんはみんなが真剣に話を聞いてくれたことに感謝する。周囲と関わることに背を向けていた、かつての青野くんを考えると、雲泥の差だなと思いました。
中学のころ、武田先生は青野くんに「お前が思っているほど、周りの人間はお前の敵じゃないと思うぞ?」と言っていたけれど、頼ることができる存在が身近にいる、それに今気づくことができたのは、彼にとって大きな成長なんじゃないかな。
ちゃんと相手と向き合って、コミュニケーションして、理解すること。それは大人になっても(いや、なかなか素直になれない大人だからこそ)大事なことだからね。

そんなの改めて書き出したりしなくても、この作品を見ていれば充分伝わってくることなのだけれど、あえて文字にしてみました。

ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

個人的には、今回の"MVP"は山田くんですね。
自分の話をみんながちゃんと聞いてくれたことに最初は戸惑いを覚えた青野くんに対して、「青野は独り相撲のとこがあるからな」と気遣いを見せつつ、自分のことを人に話すのは勇気がいることだから、その頑張りを見せられたら「みんな真剣に聞くに決まってんだろ!」と力強く語ってくれた山田くん。ああ、なんて気遣いのできる子なんだろう!

青野くんの家を訪ねる話をしているときに、自分も行きたいと言い出せないハルちゃんに「みんなで行こう」と声をかけてくれたし。アニメでは描かれていないけれど、阿久井真先生の原作(おまけ漫画)では、ハルちゃんが青野くんへの差し入れとしてコンビニでおにぎりを買ったのも、元々は山田くんが言い出したことだったし。そう言えば、青野くんと個人練習したときも、佐伯のことを気にかけていたなぁ……。

もう、人生何周目?ってくらい、大人ですね(一方で、女子のことがすごく気になる年頃だけれど。笑)。彼くらい気配りできれば、コンサートマスターだって務められるのかな。チェリストだけど、大きなオーケストラでは複数のコンマスが置かれることもあるから、今後の精進次第ではワンチャンあるかも、と思えたりして。

さて、今回は目立った演奏シーンが登場しなかったので、配信公開されている【青のオーケストラ 聴きドコロ♪】では、前回、第15話「本音」の場面が紹介されています。

♪ドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』第2楽章」
演奏:1st ヴァイオリン/マリア・ドゥエニャス、2nd ヴァイオリン/関 朋岳、、ヴィオラ/a.有賀叶、チェロ/菅井瑛斗、コントラバス/長坂美玖

オーケストラ部のトップ奏者たちが奏でる「新世界より」第2楽章。先輩たちが大切にしている思い出「チキンカツの誓い」の、秋の夕暮れを音で表現したこの演奏を聴いて、佐伯は飛躍的に成長するわけですね。その成長に青野くんは焦りを感じ、彼を避けてしまった。それを今回、青野くんがちゃんと謝ったことで、佐伯は一安心しています。

良かった。俺…、青野くんに嫌われるようなことをしちゃったのかと思ったから…。
理由がわかって安心した。

ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

涙ぐみつつ、自分が抱える想いを明かした佐伯。何その、青野くん好きっぷり! 純粋な奴だなぁ。
でもさ、ちょっと待て。いちばん最初に青野くんとヴィヴァルディの「四季」より「春」を合奏したときには、「君なら弾けるでしょ」と言い放っていたし、演奏の中で挑発していたよね!? 彼の思考回路がどうなっているのか、腑に落ちてない人も多いはず。いったい、どんな過去を持っているの?
今回、青野くんが勇気を出して自分のことを語ったから、次は佐伯の番だよね。

これまで佐伯について語られているのは、
○ドイツで生まれ育ち、祖父はドイツ人(故人)
○祖母は健在で、現在は佐伯姓を名乗っている
○祖母と2人暮らしで、犬を飼っている
○日本語は話せるけれど、読み書きはまだ苦手
くらいかな?
青野くんに対する気持ちはちょっとわかりにくいけれど、佐伯を演じている土屋神葉さんも、このインタビューで「表現しきらない」ことに気をつけている、と言ってたしなぁ。

次回、7月30日に放送される第17話「もう一つの本音」は、予告編に登場したセリフだけでも情報量がたっぷり。明らかに、あれは少年時代の佐伯の声だよね。そして、今は亡き佐伯のおじいちゃんの声も……。ということは、そこで語られるであろう、佐伯の生い立ち。佐伯のおじいちゃんを含めた家族、そして幼なじみであるドイツ人兄妹も登場することになるわけですね!


「青野くんに、話したいことがあるんだ」
青野の家に戻ってきた佐伯は、深刻そうな表情で何かを切り出そうとするが、なかなか言葉にすることができない。そんな彼の目に留まったのは、家の中の防音室。青野が、父・龍仁とともに幼少期からヴァイオリンの練習に打ち込んだ部屋だ。そこに飾られたトロフィーやコンクールの記念写真を見た佐伯は、青野の過去に触れながら口を開き始める。声楽家の母のもと、ドイツで育った佐伯。彼が日本に戻ってきた目的は、青野に会うことだった。


さらに驚くべきことに、佐伯が青野龍仁のことを知っていた!? 予告編の背景に描かれていた楽譜は、パガニーニの「24のカプリース」だよね?
いよいよ「青のオーケストラ」という物語の根幹に大きくかかわる、重要な「秘密」が明らかに……。

だから、絶対に見逃しちゃダメです!
大事なことなので、声を大にして言います。

次回、見逃しちゃダメです!!!

ⓒ阿久井真/小学館/NHK・NEP・日本アニメーション

第16話「心配」の再放送は、Eテレ 7/27(木曜)午後7:20~7:45。
見逃し配信は、NHKプラスで7/30(日曜)午後5:25 まで。
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023072328021?cid=jp-3LMR2P87LQ

追記
青野ママが倒れたことを知って、心配するりっちゃんが思わず口にしていた「私、青野のお母さんのこと、自分の本当のお母さんに思っていたから…」という言葉。これ、文字にしてみると、ある種の「嫁宣言」にも感じられますね。(←勝手な思い込み
ハルちゃん、どうするよ!?(今回の物語の冒頭で、浴衣を着て青野くんと歩くことを「妄想」する場面、可愛すぎるやん?)
と思う一方で、原作コミックスの第10巻(第60曲「プレゼント」)あたりを読むと、りっちゃんの言葉には、より深い意味が含まれているんだなぁ、と気づかされたり。気になる人は(ネタバレOKなら)、原作をチェックだ!


今回も告知
8月のアニメ「青のオーケストラ」と「5分で楽しいクラシック」は、以下の放送が休止になります。

◆アニメ「青のオーケストラ」
8月6日(日曜)/【再放送】8月10日(木曜)
8月13日(日曜)/【再放送】8月17日(木曜)
8月20日(日曜)/【再放送】8月24日(木曜)
☆放送再開は、8月27日(日曜)の予定です。

◆「青のオーケストラ 5分で楽しいクラシック」
8月6日(日曜)
8月13日(日曜)
8月20日(日曜)
8月27日(日曜)
☆放送再開は、9月3日(日曜)の予定です。

カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。

☆これまでの感想記事は、ここに(https://steranet.jp/list/category/stera_aniken )。