「青のオーケストラ」
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45
※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/
こんな人とは絶対に仲良くなれるはずがない! 初対面のときにはそう思っていたのに、言葉を交わすうちにすっかり打ち解けたとか、気がついたら結婚していたとか、そんな話、よく聞きますよね。
ということで、りっちゃんと立花さんに雪解けが訪れたのかも、と思わせてくれる今回の物語。なにしろ立花さんは、第6話「雨の日」で、初めてりっちゃんと会話したときに強烈な言葉を放っていて。
あなたは初心者だよね。いつ辞めるの?
私、ただ部活を楽しみたいだけの人って嫌いなの。
うわぁ、りっちゃんじゃなかったら、心をへし折られているわ。ただ、立花さんはりっちゃんだけではなくて、周囲の人たちにも常に厳しい。それは何よりも、自分自身に対して厳しいからで……。そんなことが垣間見えた、第10話「初心者と経験者」でした。
定期演奏会のステージに立つメンバーを選ぶためのオーディションまで1週間を切り、部員たちが練習する音楽室にも緊張感が満ちていた。青野(声:千葉翔也)やハル(声:佐藤未奈子)たちが熱心に練習に取り組む姿を見た律子(声:加隈亜衣)は、自分が上手くなっているのか不安に駆られ、少し焦りを感じてしまう。そんな律子に対して、5歳でヴァイオリンを始めた経験者の立花(声:Lynn)は「オーディション曲を練習する前に初心者として基本を完璧にするべき」と指摘。2人の間には、険悪な空気が漂った。
下校前、教室で居残り練習をしている立花の演奏を外で聞いていた律子は、その演奏技術の高さに心を魅かれるとともに、2ndヴァイオリンのパートリーダー・米沢千佳(声:前田佳織里)が立花に事情を聞きにきたところを目撃。そして立花が米沢に語った本音を耳にして……。
同じ高校1年生なのに、かたやヴァイオリンを始めて10年という経験者。かたや1年ほどの初心者(しかも、実質は独学。でも、ヴァイオリン未経験の1年生女子たちが合奏練習参加を許されるまで2か月近くかかっているのに、りっちゃんは2週間で認められているから、まさに「快速列車」なわけだけれども)。それぞれの立場の違いから、ヴァイオリンに対する向き合い方は異なっていて。
さらに、りっちゃんも立花さんも、実は対人関係には不器用なところがあるから、ぶつかってしまうのは必至で。立花さんは正論を言っているのだけれど、どう相手に受け取られるかまでは、さほど注意を払わない。りっちゃんは人との距離感をつかめず、相手の言葉にストレートに反応してしまう。それが衝突したら、まあ、今回のようなバトルになるわけですね。
ただ、立花さんが千佳先輩と話をする中で、りっちゃんに対してイライラする理由として挙げた「秋音さんは独りよがりというか、自分の音しか聴いてない」「オケはみんなの音で成り立つから」という言葉は、りっちゃんの心にしっかり刺さっていて。
私、楽譜のことしか見てなかった?
ヴァイオリンをもっと上手く弾きたい。青野くんやハルちゃんに、早く追いつきたい。そればかり考えていた自分を省みて、立花さんの言う通りだと落ち込むりっちゃん。一方の立花さんも、「だから秋音さんは、周りの音をよく聴けば、もっと弾けるはずなんです」と、りっちゃんが一生懸命に練習に取り組んでいることを認めている。お互いのことを、ちゃんと理解できているんですよね。だから、今はぎくしゃくしている関係は、これから少しずつ変わっていくはず。
3年生の千佳先輩もそれがわかっているから、2人のことをしっかり見守っています。
立花さんと笑顔で会話して心を解きほぐし、経験者が初心者を上手くサポートできるように自分の経験を語りながら導いていく……。なんて、理想的な先輩なんだ。そんな先輩に接したことで、りっちゃんや立花さんも上級生になったときに、後輩たちの悩みを聞いてあげられるようになっているはず。それは、オーケストラに限らず、どんな部活でも、いや、大学生・社会人になっても、そうなのかもしれないですね。
正直に自分の気持ちを打ち明けて、互いに相手を少し理解できたことで、踏み出した新たな一歩。チキンカツを買い食いするりっちゃんに立花さんが出会った場面で、りっちゃんに背を向けた立花さんが「オーディション、出るなとは言わないから」と語りかけて走り去ったとき、表情は見えなかったけれど、立花さんはすっきりした笑顔を浮かべていた(でも顔は真っ赤だったはず)のではないかと思いました。いつか、もっともっと仲良くなれたらいいね。
ちなみに、劇中で演奏された曲を毎回ピックアップして紹介する動画は、今回は特別編ということで、これまでのエピソードの中からイチオシの名セリフ集を掲載。確かに、今回の演奏場面は個人とパート練習が中心だったものね。
「青オケ」名セリフ!まとめ集
あれ? 「青オケ」の名セリフって、もっともっとあるよね!? と思っていたら、リプライで好きなシーンを挙げると「次の動画で選ばれるかも!?」とのこと。これは、今後の展開に期待したいですね。
さて次回、6月18日に放送される第11話「決戦前夜」の内容は……。
オーディションの3日前。オーケストラ部の部員たちが練習に打ち込む中で、青野と佐伯(声:土屋神葉)は数学の小テストが赤点だったため、補習を受けていた。なんとか課題を終えた2人は、大急ぎで音楽室へ向かう。すでに合奏練習は始まっていて、2人は演奏が途切れたところから合奏に参加。指揮をする顧問の鮎川(声:小野大輔)は、オーディションでの演奏次第で席順を決める考えを持ち、コンサートマスターの原田(声:榎木淳弥)も1、2年生を競わせたいと思っているようだった。そして、決戦の日が迫る。
あらすじを読むと上のような流れになっていて、正直、これだと今ひとつ盛り上がりどころがわかりにくいかもしれない。原作最新巻まで読了済みの身からすれば、先々の展開につながる「アレ」が明かされることとか、鮎川先生が青野くんをどう思っているのかとか、具体的な内容をいろいろ書きたいところではあるのだけれど、どこまでがネタバレなのかわからず……。ううう、難しいところですね。
ただ、佐伯くんにかかわる、重要人物(しかも強烈な個性の持ち主だ)が登場して、それを演じているのが○○○さんという……!!!
ということで、またしてもお見逃しなく!の回になるはず。お楽しみに。
第10話「初心者と経験者」の再放送は、Eテレ 6/15(木曜)午後7:20~7:45。
見逃し配信は、NHKプラスで6/18(日曜)午後5:25 まで。
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023061102466
追記1
りっちゃん、立花さんに「猫背」になっていると指摘されたことから、視野を広げて楽譜にない世界が見えて、みんなの音を聴けるようになって、またひとつ成長。がんばれー!!
追記2
この「青のオーケストラ」って、今回の「楽譜」がセリフでは「じぶん」と読まれていたり、「立花」が「あいつ」と読まれていたり、漢字表記に対して独特のルビを振っていることが多々ある原作に合わせたセリフの表現がされています。これを字幕付き放送で見ると、字幕では原作同様、「楽譜」の上に「じぶん」のルビが! ときには、こちらで楽しんでみると、意外な発見があるかもしれません。
追記3
第10 話に先だって放送されていた「N響×青のオーケストラ コンサート」もむちゃくちゃよかったですね。N響の最上級の演奏と、アニメの魅力がしっかりと組み合わされていて。クラシックに詳しくない方、普段アニメを見ない方、両方が大満足できる内容だったのではないでしょうか。小原好美さんのナレーションも想像していた以上に多かったし……。私は当日、この会場にいたのだけれど、そのときにはまだ完成していなかったと思われる第8話の夜の公園のシーンも使われていて。単なる演奏会中継じゃなくて、しっかりと番組として構成されていましたね。
だからこそ。
もったいないなぁと思うのは、60分という時間の短さ。えー!? コンサート自体、休憩時間を除いても1時間半以上あったよね? 企画コーナーの取材も、もっとしてたよね? 声優さんたちも、たくさん語っていたはずだし……。演奏のみの時間を合計しても優に1時間を超えていたから、楽曲がダイジェストになってしまうのは仕方のないことなんだけれども、ドヴォルザークの「新世界から」の短さときたら! できれば完全版を放送していただきたいと、切に願う次第です。
*「N響×青のオーケストラ コンサート」の見逃し配信もあり! NHKプラスで6/18(日曜)午後4:55 まで。
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023061102464
カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。
☆これまでの感想記事は、ここに(https://steranet.jp/list/category/stera_aniken )。