○MC:田村淳
○ゲスト:LiLiCo、中村嶺亜(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、なかねかな

○ナレーター:水瀬いのり

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小児科の看護師として働く五十嵐隼人さんと、精神科の訪問看護師として働く菅野貴文さんは、ゲイであることをカミングアウトし、一緒に生きていくことを決めた看護師のカップル。ゲイの出会い系アプリに登録し、それぞれ友だちを探していたという。2人は、どうしてカップルに?

こちらは2人の「なれそめ」を語るのに欠かせない、「なれそメモ」! 


▶出会い>>一生独りで…

田村「この『一生独りで…』というのは、どういったキーワードなんですか?」
隼人「私は生まれてから、親に『もっと、たくましく生きろ』と言われて育ったんです。でも、自分では女性より男性がすごく好きだったりして……。本当は、告白とかもしたかったんですけど、(自分の気持ちを)人に伝えちゃいけないのかな、自分は周りの友だちと違うんだろうな、みたいなところがあって。だから、きっとこのまま一生独りで生きていくんだろうな、と

田村「この悩みを持っている人は、たくさんいるんじゃないですか? カミングアウトできる人もいるけれど、なかなか、ねぇ。思いをつまびらかにするのも難しい」

自分がゲイであることを周囲に明かすことなく看護師になった隼人さんは、同じ看護師として働くゲイの友だちがほしいと考え、ゲイの出会い系アプリに登録。そこで、同様に友だちがほしいと願う貴文さんとマッチングし、貴文さんがアプリに載せていた写真を目にする。

隼人「そのときの写真が、すっごい金髪で(ノリノリのポーズで)『ウェーイ』みたいな感じだったので、『え、ちょっとおもしろい。こんな人がいるんだ』と思って」
中村「今と(イメージが)全然違う」
隼人「それで会ってみたいと思って、連絡を取り合ったんです」
田村「貴文さんから見て、隼人さんはどういうふうに映っていたんですか?」
貴文「『カッコいい人だな』と。ただ、そのとき(僕には)いい感じの人がいて
なかね「え、別に?」
貴文「思いを寄せる、まではいかなかったんですけど、ちょっと気になる感じの人が」
田村「でも、この段階では、友だちを探しあうだけだから」
貴文「そうですね。やましい感じではなく、友だちとして

田村「最初に会ったときのこと、覚えていますか?」
隼人「写真が金髪で『ウェーイ』みたいな感じだったので、『楽しい人なのかな? 友だちになるんだったら楽しい人がいいな』と思って、ワクワクしながら会いに行ったんですけど、会ったら黒髪で、なんか目線も合わせてくれなくて
全員 (笑)
隼人「話をしても、『……あ、はい』みたいな」
田村「全然違うね、想像していたのと」
隼人「『あれぇ~?』みたいな。『何これ、消化試合なんだけど~! きょう、ハズレじゃん』とか思って」
全員 (笑)
中村「その空気感の中で、どんな話をされたんですか?」
隼人「最初は『なんか写真と違いますね』みたいな(笑)。でも、話をしているうちに“ゲイあるある”というか、『カミングアウトしてる?』という話題になって、貴文が『実は(友だちにカミングアウトを)してるんだよね』と言うんですよ。カミングアウトしている人って、すごく派手というイメージがあったから、『こんな普通っぽい人がカミングアウトできるんだ! この人、何?』とすごく衝撃を受けて。そこからだんだん惹かれていきました」
LiLiCo「隼人さんは、今までそういう友だちはいなかったんですか?」
隼人「そうですね。女性の友だちが多くて、ゲイの友だちは今までいなくて、貴文が初めて出会った人だったんですね」


▶告白>>排水溝の髪の毛

中村「今の話から、なぜ次が『排水溝』?」
隼人「友だちとして遊んでいるうちに、ある日『家、来る?』みたいな感じで誘われて、ちょっとワクワクして家に行ったんですよ。そうしたら、まあ部屋が汚くて、足の踏み場がないくらいの感じで」
LiLiCo「え~」
中村「一緒に掃除しようと思って呼んだわけじゃないですよね?」
貴文「全然。これぐらいならいいかと思って」
全員 (笑)
なかね「そもそも、部屋が汚くなるほどの出来事があったんですか?」

貴文「そのときが看護師1年目で、けっこう仕事の失敗とか続いていて、本当にやめようかなと迷うぐらい、身体的にも精神的にも追い詰められているような状態で。部屋を片づける余裕もなくて」
田村「ただでさえ仕事が忙しいからね、看護師さんは」
隼人「だから、まず部屋を掃除しなきゃダメだと思って。遊ぶつもりで行ったのに、掃除道具を2人で買い始めて、みたいな。で、いちばんがお風呂場の排水溝ですね。すごく髪の毛が詰まっていて」
田村「うわぁ」
隼人「私、実家の排水溝の掃除にも、かなり抵抗があるんです。でも、この汚さが彼の健康面とかに何か影響するんじゃないかと思ったら、いてもたってもいられなくて。ふだんならできないんですけど、そこをひたすらキレイに掃除して」
田村「できちゃったんだ」
隼人「できちゃったんですよ。その瞬間に『あ、この人のためなら、こういう汚い仕事でも、つらい仕事でもやっていけるんだ、自分は』って……

なかね「あっ、すてき」
隼人この人とは友だちじゃなくて、一生添い遂げたいなと思ったんです」

自分が抱えている恋心をはっきりと自覚した隼人さん。しかし、20年近く“自分の本心を誰かに伝える”ことをしていなかった隼人さんにとって、告白のハードルは高い。クリスマスイブが近かったこともあり、隼人さんは貴文さんにクリスマスパーティーを提案。料理を作り、いろいろな準備をして、貴文さんの家へ……。

隼人「いろいろ持って行って、ケーキを食べているときに『ちょっと、いい感じなんだよね』『好きなんだよね』みたいな感じで言ったんですよ。そうしたら『ちょっと待ってください』と言われて
なかね「うわ~!」
隼人「うわ、私また人生独り、みたいな
中村「初告白だった、ってことですもんね」
田村「でも、貴文さんは貴文さんで気になる人がいるから、即決できないもんね」
貴文「そうですね、そこはちゃんとけじめをつけないと。僕もそのときは、すごく好きっていう思いだったんですけれど
田村「まだ、こっちのことが片付いてないから、と」
貴文「そうですね」
LiLiCo「そこはちゃんとしてるのね。部屋も掃除してくださいよ(笑)」
全員 (笑)
田村「で、ちゃんとけじめをつけてから、今度は貴文さんのほうから言ったんですか?」
貴文「そうですね。『お願いします』って感じで」
田村「それはいつぐらい? 時系列で言うと、クリスマスイブにそれがあって」
貴文「翌日のクリスマスの……」
田村「それは早いね! (隼人さんに)これはうれしかったでしょ?」
隼人「すっごくうれしかったですね。『これから、どんなハッピーが始まるのかな』みたいな感じで、いろいろ考えちゃいました


▶結婚>>放送 見ました

隼人さんと貴文さんは、付き合い始めて半年後に同棲を開始。そして貴文さんは、隼人さんの誕生日にプロポーズすることを決意する。サプライズで用意したのは、鮮やかな色の花びらで彩られた、ケーキのプレート。そのプレートには「結婚しよう」というメッセージが! それに対して、隼人さんは花びらを使って「YES」の文字を……。

だが、結婚を決めた2人は、ある悩みを抱えていた。当時、隼人さんはカミングアウトをしておらず、実は貴文さんも両親にだけはゲイであることを伝えていなかったのだ。

隼人「私のほうは誰にもカミングアウトしていなかったんですけれど、『自分だけが気にしているのかな?』『周りは意外と気づいているんじゃないかな?』とも思っていたんですけれど、いちばんの波乱が……」
田村「やってくるんだ」
隼人「実家に帰って、母親と他愛のない話をして。で、『友だちとして紹介していた貴文と、結婚したいんだよね』と伝えたんです。いけるかなと思って母親の顔を見たら、この世のものとは思えないくらい引かれていて。『えーっ!?』みたいな。そこで言い合いになって、最後には『あんたなんか産まなきゃよかった』ぐらいのことを言われてしまって。こっちもカッときていたし、親と縁を切っても貴文と一緒になりたい、認めてもらえないなら仕方ないと思っていたから、『わかりました!』と言って家を出て、泣きながら貴文のところに帰りました」
貴文「家を出たすぐ後に、泣きながら電話がかかってきて。すごく落ち込んでいたから」
田村「まあ、そうだよね」
貴文「お母さんはお母さんで考えもあって、受け入れがたい部分もあると思うから、たぶん時間が解決してくれるだろうなというのは思っていました
田村「貴文さんのほうはどうだったんですか? カミングアウトは」
貴文「プロポーズした後、もう結婚すると決まっていたから、言わなきゃいけないと思っていて。そう考えているときに、『テレビ番組の中で、カミングアウトしませんか?』という話をいただいたんです」

テレビ取材をきっかけに里帰りした貴文さんは、自分の母親に、結婚したい相手が男性であることを告げる。すると母は「貴文は貴文だから、何も変わらない。悩む前に言いなさいよ」と温かく包み込んだ。また、紹介された隼人さんに対しては「つらいことが起きても、くじけないで。しんどくなったら、頑張らずに逃げて」と優しく声をかける。そして「反対しているお母さんが普通だと思う。隼人くんのことを思って反対していると思うから。頑張れ!」と——。

なかね「いやぁ、すてきな話。めちゃくちゃ入り込んじゃった」
LiLiCoお母さんの言葉がすごく強くて。もう全部、愛

中村「頑張らないで逃げて、ですからね」
LiLiCo「少しドキドキしなかった? テレビに出るっていうことは、本当に誰が見ているのかわからないから」
隼人「そう思ったんですけど、でもやっぱり、出ることによって、自分みたいに苦しんでいる人が元気づけられたらいいなというのはあったので。2人で考えて、出よう、という話になりました」

田村「で、この『放送 見ました』というのが……」
隼人「私の母親の話なんです」
田村「お母さんが見ていたんだ」
隼人「3か月くらい、連絡をとってなかったんですけど」
田村「だって、絶縁でもいいと思って出たんだもんね、家を」
隼人「そうしたら、放送が終わった直後ぐらいに電話がかかってきて、『お母さん、放送見ました。あんたたちのこと、これから応援するから頑張るんだよ』みたいに言われて。急に、『えーっ!?』みたいな」
田村「あんなに反対していたのに?」
隼人「そう、『産まなきゃよかった』まで言っていたのに。本当に、傷ついた心も返して!と思ったんですけれど(笑)。まあ、今は仲よくやっているんですけどね」
田村「でも、お母さんも、経緯をポイントポイントで理解していったんじゃない? あ、こういう人なのか、それでカミングアウトするにはこういう苦しみがあるのか、とか。いろんな思いがだんだんとわかって、こんなに好き同士なんだったら私も応援する、に変わったんだろうね
隼人「ああ、確かに」
田村「貴文さんも、隼人さんのお母さんにちゃんと理解してもらえたというのは、心がだいぶ楽になったんじゃないですか?」
貴文「そうですね。やっぱり家族になるから、自分のお母さんにもなるわけなので。すごくうれしかったです


▶現在>>夫夫ふうふもいるよ

2018年、2人は親族や友人などおよそ80人を招待し、お互いの両親の祝福を受けながら結婚式を挙げた。同棲生活以降に料理の腕を磨いた隼人さんが得意料理をふるまい、貴文さんは洗濯などを担当。そうした日々の出来事を、カップルの日常としてブログにアップしている。

田村「そして、夫・夫の『ふうふ』もいるよ、ということですけれども」
隼人「やっぱり大半は、男女の夫婦がすごく多いと思うのですが、夫・夫だったり、女性のカップルの『ふうふ』もいる、いろんな愛のカタチがあるというのを伝えていければいいかなと思って、今、ブログやSNSで発信しています

貴文「僕は結構、ゲイであることを楽観視していて。というのが、高校生のころからゲイのカップルさんのブログなどを見ていて、すごく救われていたことが大きかったんです。で、今度は自分たちも、そういう誰かの助けになればいいなという思いがあって、発信しています

田村「何かやってみたいことがあるんですか? 情報発信の中で」
隼人「今後の目標なのですが、私たちのような夫夫も子育てができるような世の中になればいいな、という思いがあります」
田村「本当に、アメリカのドラマとか見ていると、ゲイのカップルが子どもを育てているのなんて、普通のファミリーとして描かれている。それが特別のこと、ではなくてね。それが当たり前のことなんだと発信できるようになるといいですね」
隼人「そうですね」
中村「きょう、お2人に話を聞いて、各々が悩みを抱える中での勇気ある行動や、発信していく強さに接して、僕もすごく力をもらいました。見てくださった方も、同じ悩みじゃないかもしれないけれど、すごく勇気をもらった方がいると思いますね」


▶▶2人にとって“超多様性”とは?

隼人「マイノリティーもマジョリティーもない世界だと思っています」

貴文「自分と途方もなく違う考え方の人でも、相手を理解しようとする姿勢だと思っています」


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