NHKスペシャル「東京ブラックホール」シリーズの第3弾「東京ブラックホールⅢ 1989-1990 魅惑と罪のバブルの宮殿」が、5月1日(日)に放送される(総合 午後9:00~9:59)。物語の主人公・タケシ(山田孝之)がタイムスリップするのは、バブルの絶頂期。今回、そんな狂乱の時代を自由に軽やかに生きる女性・ひふみを演じた伊原六花りっかさんに、本作の見どころを聞きました。

――「東京ブラックホールⅢ」で、バブル期を演じてみた感想は?

高校時代はダンス部で「バブリーダンス」を踊っていましたが、そのときもバブルについていろいろ勉強しました。でも、私が調べていたのは、バブル絶頂期の華やかな部分。今回の作品では、バブルの絶頂から崩壊までがクローズアップされていて、華やかさだけではなく、その時代を必死にもがきながら生きる人たちの姿が描かれています。私が演じたひふみも、裕福な暮らしをしているわけではないけど、一発逆転を狙う恋人とともに夢を追いかけている女の子です。

これまで、私が抱いていたバブル期のイメージは、とにかくみんなお金を持っていて、ぜいたくな暮らしをしているということ。当時は、きらびやかで楽しい時代だったんだろうなと。今回ひふみを演じて、バブルの絶頂から瞬く間にそれが崩壊していく落差というのは想像以上でした。

バブル崩壊後、ひふみ自身が「自分は夢を見ていたんじゃないか……」という錯覚に陥るくらい。それほど絶頂期は、なんでも許されて、なんでもできちゃうような感覚だったのかもしれません。だから、今では考えられないような無秩序なこともたくさんあっただろうし、エネルギーが強すぎて生き急いでいる人たちも多かったのかなと。

でも、その中で、苦しんだり、生きづらさを感じたりする人もいて……。バブル崩壊後のシーンを演じて、私自身もどこか夢から覚めて、ふわーっとした気持ちになりました。これは、時代も価値観も違う現代では感じることができないものですし、だからこそ、自分がやりたいと思ったことは、やれるときにチャレンジすべきなんだと、この作品を通して強く感じました。
 

――撮影で印象に残っていることは?

今回、共演させていただいた山田孝之さんとは、撮影の合間にいろいろお話させていただきましたが、とにかく知識量の多さに驚きました。宇宙の話であったり、食べ物の話であったり、今話題になっているニュースであったり。しかも、それらに対して、自分の考えをしっかり持っていらっしゃる。

きっと、その中から山田さん自身が、お芝居にも生かしている部分もあるんだろうなと感じました。すぐにマネすることは難しいですが、私もいろいろなことに興味を持って、勉強したり、チャレンジしたりしていきたいと思います。

バブル期にタイムスリップしたタケシ(山田孝之)は、キャバクラで働くワタル(浅香航大)とその恋人・ひふみと出会う。


――バブル期の衣装で踊るシーンはいかがでしたか?

とても懐かしかったです! 高校時代に踊っていたバブリーダンスのときは、スーツっぽい、かっちりとした衣装を着ていて。今回はニットワンピなど、今着てもかわいいと感じる衣装や、あざやかな衣装が多かったので、演じていて楽しかったです。撮影のたびにネイルをして、髪の毛をきれいにセットして、濃いメークをして、というのはワクワクしましたし、テンションも上がりました。


――“グリーンバッグによる撮影”で苦労された部分はありましたか?

過去に放送された「東京ブラックホール」第1弾、第2弾のメーキング映像を見たものの、実際にどうやって撮影しているんだろうと思っていました。第3弾のグリーンバッグの撮影は数日間でまとめて行われ、撮影前には私たちが映像に入り込んだら、こういう合成イメージになりますと丁寧に説明していただきました。

そしていざ本番、カメラの前に立つと、目の前に置かれたモニターには合成された映像が映っていたんです。自分の近くに何かがあることを想像しながらお芝居するというより、モニターの合成映像を見ながら演じることができたので、違和感を覚えることなく撮影に臨むことができました。

ただ、山田さんは、登場シーンで、過去の映像の中に出てくる人物とのかけ合いもあったので、目線やタイミングを合わせるのは、結構難しかったのではないかなと思います。

4月23日に多摩美術大学で行われた「東京ブラックホール」トークイベントにも参加した伊原さん。最新の映像合成技術のすばらしさに驚いたと語る。


――「東京ブラックホールⅢ」の注目ポイントを教えてください。

ひふみのセリフに「私を躍らせるのは、お金じゃなくて自由なんだよ」という言葉があります。一人の女性が自分の生きる道を選択し、懸命に前へ進んでいく力強さを表現したセリフで、私はグッときました。

これまで、ドキュメンタリードラマというものに出会う機会は少なかったのですが、今回参加して、その時代を知る一つの手段として、とてもすてきなコンテンツだなと改めて思いました。

もちろん、その時代について知らなくても生きてはいけますが、私は知ったからこそ、今の自分の環境と置き換えて、ここはこうするべきなんじゃないかなと考えるようになりました。ぜひ、今この時代を生きる皆さんに「東京ブラックホールⅢ」を見ていただいて、バブル期ならではのギラギラとしたエネルギーを感じてもらえたらうれしいです。

※「東京ブラックホールⅢ」トークイベント&ファンミーティング in 多摩美術大学(前編)リポートは、こちらで公開中。

1999年6月2日生まれ、大阪府出身。高校時代にキャプテンを務めたダンス部で「バブリーダンス」を披露し、注目を集める。2018年から芸能活動を始め、俳優・歌手として活躍。NHKでは、連続テレビ小説「なつぞら」、「家康、江戸を建てる」などに出演。