ドラマの出演者やスタッフが「この回のあの人、あのシーン」について語ったコメントを不定期で配信するコーナー。今回は蔦​つたじゅうざぶろう役の横浜流星さん、沼意次ぬまおきつぐ役の渡辺謙さん、脚本の森下佳子さんから!


横浜流星さんの第16回振り返り

——第16回までの撮影で、「これはきつかった」というシーンはありますか?

きつかったこと……。源内先生の死は、彼に生き方や考え方を教えてもらって、すごく影響されて今の蔦重があるので、きつかったです。源内先生から言われた「書をもって世を耕す」という言葉を胸に、蔦重は行動してきました。自分の中にもその考えを入れてきたので、源内先生の死はやはり……。

わら(里見浩太朗)さんから言われた、「本を出し続けることで、平賀源内の心を生かし続ける」という言葉も取り入れて、これからの蔦重を生きていきたいと思います。


渡辺謙さんの第16回振り返り

——源内が無実の罪を着せられた挙句あげく、獄死しました。

江戸城内の魑魅ちみ魍魎もうりょうの世界に首を突っ込んだばかりに、源内は亡くなってしまった。意次には申し訳ない気持ちがあったと思います。第16回は意次にとってもターニングポイントになった回でした。

ただ、僕は、このとき源内は死んでいないと思っているんですけどね(笑)。彼の死の真相には諸説あるんです。

——なぜ意次は源内を助けなかったのでしょう。

あの展開は絶妙でしたね。蔦重に「田沼様は源内先生に死んで欲しかったんじゃないんですか!」と詰問されても、意次は否定しない。「察しがいいな、ありがた山」と言ったりする。
でも、本心ではありません。やっぱり立場上、言えることと言えないことがあるんですね。友人ではなく、政治家として物を言っていたんです。2枚くらいベールをかぶった感じで。

表向きはそのように振る舞っていますが、心の中では、「なぜ、こんなことになってしまったんだろう」「なぜ助けられなかったんだろう」というざんの思いを抱えている。こうした彼の心理を森下佳子さんが丁寧に書いてくださったので、演じがいがありました。


森下佳子さんの第16回振り返り

——森下さんは、源内に対してどんな印象をお持ちですか?

源内の書いたものを見ると、中二男子みたいな感じなんですよ(笑)。毒を吐きまくって、この世のことわりも性的に表現しちゃう。「俺は男色家だから、俺を受け入れてくれる世はない、だから天下を取れないんだ」と嘆きつつも、好色本の『なが枕褥まくらしとね合戦かっせん』のような、めちゃくちゃな話を書いちゃう人で……。

相反するものをくっつけて転換するセンスはすごいですし、本質論もしっかりしていたと思います。ただ、現代では到底できない表現ですね(笑)。そういうところも含めて、源内さんという人は本当に賢く、かつおお馬鹿ばかもので、いろんなことが早すぎたのかな、と思います。