さて、2月11日(火)放送の「魔改造の夜 脚立25m走」はご覧になられましたか?

※ここからはネタバレになるので、ぜひ【NHKプラス】で番組をご覧いただいてからお読みください


すべてのチームが一体となった夜会

前回の放送前の記事では、結果まで書けずに不完全燃焼でしたが、今回は違います! 大手を振って優勝チームの発表ができます。

 

優勝チームは、「M田製作所」!

 

脚立が25mを走り抜け、今回の最速をマークしての劇的な優勝となりました。

1回目の試技を振り返ると、
「O阪工業大学」は、ゴール右の柱に衝突して記録なし。
「Oレック」は、無事にゴールしたものの走行中に跳ねたことで10秒43。
「M田製作所」は安定した走りをみせて8秒76。
この時点で、M田製作所が暫定1位となる。

その後、緊張の最終試技へ。1回目に記録が出なかった「O阪工業大学」は、ステアリングの調整が功を奏し、自己新記録となる8秒90をたたき出す。続く「Oレック」は、スタートこそよかったものの、惜しくも12秒13と記録を伸ばすことができなかった。そして、最後の試技となる「M田製作所」の2回目。こんなに脚立は早く走れるものなのか。すべてのチームが応援するなか、脚立がゴールする。

静まり返る会場に8秒11という記録が響き渡る。今回の最高記録である。会場のボルテージは最高潮に盛り上がりを見せ、うれし泣き、悔し泣き、ガッツポーズする者、抱き合う者、すべてのチームが一体となった——優勝は「M田製作所」!

最高の時間をともにできた夜会に感謝するとともに、私の心を魔改造したこの番組はぜひおすすめしたい!

 

競技を終え、夜会に参加した者たちが得たものとはなんだったのか、夜会「魔改造の夜」という番組はそれぞれ参加した者にとってどんなものだったのか?

後日、各チームにアンケートで思いを伺ったところ、予想を超える熱量の言葉が寄せられた。ほんの一部だが参加した技術者たちの思いを紹介しよう。


学生と教員がタッグを組む最強チーム「O阪工業大学」

マシン名「HAdeS(ハデス)弐号機」【2位】
1試技目 記録なし / 2試技目 8秒90

——参戦した理由は?

・普段は答えが分かっている授業や、ある程度道筋が見えている研究に従事していますが、大学にいるうちに一度「何をしたら良いのか全く分からない」ことを学生と一緒に頭を抱えてみたくなりました。(田熊/教職員・リーダー)

・信頼できる仲間が集まっていたからです。今までその人たちの隣で頑張っている姿をたくさん見てきました。その人たちと一緒ならどこまでも行ける気がしました。(ボブ/学生)

——お披露目の時、ライバルチームのモンスターを見てどうでしたか?

・制作途中で似た機構を採用されていたので、自分達のチームで出た欠点をどのように改善していたのか気になって仕方しかたなかったです。走行する所がいち早く見たいと思いました。(角田/学生)

・自分達のチームが課題としていた部分の解決策や対策があり、ライバルチームがそれらを開発できたことに対する尊敬と自分達が実現できなかった悔しさを感じました。(北村/学生)

——製作途中での思い出は?

・直接製作に関わることではなく恐縮ですが夜中にポーズを考えていた際、アドレナリンが出過ぎて笑いが止まらなかったのが最高に楽しかったです。(竹内/教職員)

・学生時代みたいに無茶むちゃをしたり、バカやったりとすべてが楽しかったです。(辻田/教職員)

・1か月半の本番期間は休むことなく、学生や教職員と過ごしました。体力的につらいかと思いきや意外とそうではなく、統括者としての精神的な難しさの方が大きく、自分をひと回りか、ふた回りくらい成長させてくれたような気がします。(牛田/統括)

——モンスターが出来上がった時の思いは?

・最初の10日目にできた機体と方式が同じになったのですが、当時は「これが答えなのか?」と疑問ばかりだったのが紆余うよきょくせつを経て「これが答えだ!」になったのが感慨深かったです。(田熊/教職員・リーダー)

・モンスターが安定して走る状態で完成したことには大きな喜びがありました。しかし、タイヤの選定など納期までに間に合わなかった部分もあったため、若干の心残りを抱えた複雑な心境だったと記憶しています。(荒木/学生)

——モノづくりへのこだわりや譲れない部分は?

真似まねをしない。自分しかできないことを考える。(桑原/教職員)

——競技を終えての感想

・ゴールすることができて本当によかったです。第2試技終了時の自分の感情は、あんと興奮と喜びが混ざってぐちゃぐちゃでした。あんな感情になることは今後ないのかもしれないです。そして、メンバー全員が笑顔だったのが印象的で嬉しかったです。(松本/学生)

・ドラマみたいな展開で……めちゃくちゃ良かったです。他チームの開発者さんとお話も出来て、技術的なことを学ぶことができました!(小谷/学生)

——夜会「魔改造の夜」という番組は皆様にとってどんなものでしたか?

・「魔改造の夜」の“失敗してもいい”というルールのもと、失敗をものともしないタフな学生・教職員たちとともにモノづくりを楽しませて頂きました。一方で私は裏方作業がほとんどでしたが、モノづくりをする人々を支える仕事の大切さ、面白さにも改めて気づかされました。(眞鍋/教職員)

・ものづくりってええなって思わせてくれるもの。一方で、Oneチームになることの難しさを痛感させてもらいました。(堀/教職員)

・最高に熱く、最高に馬鹿ばかげている(良い意味で)番組です。お題がお題なだけに感動とは遠いような番組だと思っていましたが、人生で一番感動しました。(斎藤/学生)

・今までで一番、制限なくモノづくりに熱中出来る時間でした。テレビで多くの人が頑張る姿を自身が体験でき嬉しく思います。(横山/学生)


フランスのワインぶどう園でも活躍! 福岡の農業機械メーカー「Oレック」

マシン名「爆走!! キャタツーリング」【3位】
1試技目 10秒43 / 2試技目 12秒13

——参戦した理由は?

・我々が主な市場としている「農業業界」の変化に伴い、市場環境や提供する価値が激変しており、我々も技術者が新たな価値提供をいち早く生み出さなければならない中、開発経験の浅い若手の技術者達が限られた時間の中で与えられた課題に対し新たなアイデアを生み出し、その課題解決を実践できる場となると考え、参戦を希望しました。(大城)

——お披露目の時、ライバルチームのモンスターを見てどうでしたか?

・最初の2択の選ばない方を2チームが作ってきたので、正解はそっちだったのかと感じてしまった。(豊福)

・そうきたか!と思いました。私たちも一度は試してやめた方法だったのでそれで本当にうまく行くのかという疑念と、その方法で自分たちより速いのならすごいという期待と、両方でした。ただ、この時は自分たちのモンスターにかなり自信がありました。(河野)

——製作途中での思い出は?

・モンスターの走行スピードが遅かった時は目標を達成できるか怖かったです。モンスターが折れたりしたときはこの構造の限界かなと思いました。ただチーム全員で様々な問題を乗り越え目標タイムを切ることが出来た時はとても嬉しかったです。(松雪)

・アイデアの方向性が決まるまでの期間は、目に見えたしんちょくを出しづらく、考えても案が浮かばない状態が続いていたのが辛かったです。方向性が決まってからは、個人の役割も明確になりやるべきことだけに目を向けられました。(橋口)

——モンスターが出来上がった時の思いは?

・「モンスター」というのにふさわしく、メカメカしい出来上がりだったので純粋に技術者ってすごい!と思いました。(次郎丸)

・出来上がった時はイケてる!って思いました。(結果としては反省点ばかりですが) (坂本)

——モノづくりへのこだわりや譲れない部分は?

・モノを作る際はなるべくシンプルなモノにするように日頃から注意しています。また目的の為の形状であり機能ですので作っているモノが本当に目的に沿っているかは常に確認します。(中島)

・モノづくりは実物が無いと問題の解決策も見えないし、どこをどうしたらいいのかが明確にならないと思う。そのため、最速で試作機を完成させて動作を確認できた点はよかったと思う。モノの完成するスピード感がモノづくりのこだわりだと思う。(中垣)

——競技を終えての感想

・結果はもちろん大事ですが、チームの一員として限られた期間でやり遂げた達成感が強かったです。(荻原)

・結果がどうあれ参加している人全員が皆にリスペクトを持っているのを感じて非常に清々すがすがしい気持ちで終えることができました。競技としては終わったのですが、自分のモノづくりとしてはまだまだこれから成長していかないといけないと再確認できました。(中島)

——夜会「魔改造の夜」という番組は皆様にとってどんなものでしたか?

・こういうエンジニアになりたい!と思って見ていたものが、見られる側になって私も同じように見られているのだろうか、とふと考えます。これから続く人達へ、これからエンジニアになる人達へ、モノづくりを楽しんでくれる人たちへ、楽しさを伝えられるように、恥じることがないように、そしてこれからも正しくあり続けられるように、エンジニアとしての覚悟を再認識する場となりました。(河野)

・設計士としての自分の甘さに気づくことが出来て、大きく成長をさせてくれた番組でした。自分がモノづくりが大好きなんだなと再認識した番組でもあります。(松雪)


年間1兆個超の極小コンデンサを生産。世界的メーカー「M田製作所」

マシン名「STELA(ステラ)」【優勝】
1試技目 8秒76 / 2試技目 8秒11

——参戦した理由は?

ゼロから創り出す・できないことをできるようにする・圧倒的なパフォーマンスを誇る設備開発はまさにチャレンジの連続です。そんな業務を普段から行っているメンバーのマインドは「魔改造の夜」に通ずるものがあり、メンバーの中でも「技術者として魔改造に参戦したい」「これまでの領域を超えた未知なものにチャレンジしたい」の想いと、会社としての参戦表明が同時に進んだため、みんな高いモチベーションで参戦する方向となりました。(中島・リーダー/以下同)

——お披露目の時、ライバルチームのモンスターを見てどうでしたか?

キラキラ輝いて見えていました! 自分たちも1か月半という短期間で作り上げるのに苦労したこともあり、ライバルでありながらなんか同じお題を遂行した仲間のような気持ちになり「おおー、そうきたか!」と見入ってしまいました。同時に2つのモンスターを見て、ここから始まる競演がより楽しみになり、ワクワクした感覚が込み上げてきていました。

——製作途中での思い出は?

「未知な領域へのチャレンジ」は毎日毎日楽しかったです。みんなで案出しをして、各チームで買い出しに行く。ぱぱっと試作を繰り返し、1st・2ndコンペをする。タイムが上がるときの高揚感。何度も脚立が折れ、思い通りにいかない悔しい想い。そこからの発見で、深夜までみんなで最終追い込み(福永さんのコロッケパン差し入れ)。最後の最後に大きなトラブルも。

特に思い出にあるのは、
・1stコンペで5機体が並んだ圧巻の光景:このチームはやっぱすげー!
・2ndコンペでの決断:苦しい決断だが本当に一つのチームになった瞬間でもある
・最後のトラブル:このチームは持っている(本番前にトラブル発生してよかった)

——モンスターが出来上がった時の思いは?

ついにここまできたかという達成感・安堵感とともに、限界を超えられたとまではいえない悔しさは少しありました。でも、みんなで走り切った感は強く、とにかく早くみんなでこの瞬間を喜び合いたい!と思いました。

——モノづくりへのこだわりや譲れない部分は?

①原理原則に基づき本質を捉える ②独自のコンセプトを持つ ③真剣に楽しむ、です。ただし「魔改造の夜」は短期間開発なところもあって一部やりきれなかった(追い込みきれなかった)ところはあります。その中でも自分たちのモノづくりマインドは通せたかなと思っています。

——競技を終えての感想

本当にあっという間の楽しい一時でした。メンバーの中には当分魔改造ロスになった人も(笑)。同じ目的を強くもったモチベーション高いメンバーが集まると、スピードある効率的な高いレベルのモノづくりができるのかと感動すら覚えました。

——夜会「魔改造の夜」という番組は皆様にとってどんなものでしたか?

真剣な技術者の遊び、ですかね。未知な領域に対し、限られた時間の中で集中する時間を持ち、自分たちの考えるモノを追求し形にする。これまででは考えられない革新を生み出すタネをいただいた大切な存在です。熱く夢中で駆け抜けた時間、という意味では技術者の青春なのかもしれません(笑)。


各チームの思いが詰まったコメントの数々。これでもまだほんの一部なんです。全部お見せしたいのですが、膨大な量のため、掲載しきれず申し訳ない気持ちでいっぱいです。

技術者たちがどのように「魔改造の夜」に挑み、どのように向き合い、感じたのかが伺えるコメントですよね。モノづくりに対しての意義を再確認させていただきました。

 

そして! 次回、この3チームは、2月27日(木)放送の「魔改造の夜 トイレットペーパーホルダー トイレットペーパー投げ」で再び対戦! 薄い紙を切らずに、どれだけ遠くまで投げられるかを競います。目標の飛距離は30m。紙は強く投げるとすぐ切れてしまう。この超難題を1か月半の制作期間で、各チームとも驚きのアイデアで衝撃の投げ方を開発します。「O阪工業大学」と「Oレック」の逆襲はあるのか?それとも、「M田製作所」の連勝となるのか? 大興奮と歓喜の夜会はまだまだ続きます!


「魔改造の夜」第16回  トイレットペーパーホルダー トイレットペーパー投げ

2月27日(木) 総合 午後7:30~8:42
出演:魔改造倶楽部
   顧問/伊集院光、伊藤亜紗(東京科学大学教授)
   実況/矢野武
   解説/長藤圭介(東京大学大学院准教授)