共演する先輩たちを必死に追いかけてきました
ところで「進撃の巨人The Final Season」は、第87話「人類の夜明け」まで放送されて(これに続く完結編は2023年に放送)、最初の「進撃の巨人」放送から数えると10年近くミカサ・アッカーマンを演じてきたことになりますね。
私は「進撃の巨人」の前にデビューしているのですが、それまでに出演した作品は片手で数えられる程度だったんです。この「進撃の巨人」以降、本当にいろいろな作品に携わらせていただけるようになって、私の声優人生は「進撃の巨人」とともに歩んできたような思いを持っています。
ミカサを演じることで、自分の中でも声優としての芝居にどんなことが大事なのか、たくさん考えるようになりましたから。正直に言うと、この物語はずっと続いていくのではないかという思いもどこかに持っていたんです。だから、原作の連載が終了すると聞いたときは、完結まで見ることができるうれしさと同時に、終わってしまう寂しさがありました。
ミカサを演じることで、彼女と一緒に成長してきたような感覚もありますか?
成長、そうですね......。ミカサは、本当にいろんな出来事を経て、良くも悪くも強くなったんですけれど、どちらかと言うとミカサの弱い部分が私に近いというか、その弱さを忘れないようにしながら演じてきた気がしますね。成長というより、同志として一緒に戦ってきた、みたいな。ミカサに引っ張られたりもするし、私がミカサを導いてあげることもあるし。
エレン役の梶裕貴さん、アルミン役の井上麻里奈さんをはじめ、共演している声優のみなさんに対しても、いろんな試練をともに乗り越えてきた“仲間”という感覚になっています。Season 1のころの私は声優として本当に未熟で、あまり記憶が残っていないぐらい、先輩たちを必死に追いかけていましたね。私は新人で、みなさんは大活躍されていたので、隣に並ぶときに恥ずかしくない自分でいたい、とにかくお芝居がうまくなりたいと思っていました。
いまだに追いつけない偉大な先輩たちで、そういう存在でいてくださったからこそ、お芝居に対して「これでいいや」と思わずに、今もうまくなりたいという気持ちを持ち続けていられるのかもしれません。
第73話「暴悪」に、ミカサがエレンから「お前のことが嫌いだった」と言われる場面がありました。エレンの真意が別にあるとしても、あれはミカサとしてはつらいですよね。
自分を全否定されたような気持ちですよね......。原作を読んでいたから、そういう場面があることはわかっていたけれど、そのシーンをアフレコする何週間か前から、アルミン役の井上さんと「嫌だね」「この日が来なきゃいいのにね」「いっそ、収録をボイコットしちゃおうか」と、ずっとそんな話をしていました。演じるのが苦しいというか、悲しいというか。
そのシーンで、アルミンが今まで見せたことのないような態度でエレンに立ち向かっていったので、アルミンの気持ちに気づくことができたうれしさがありつつも、やっぱり言葉にできない悲しさがあって。
3人の関係性も、子どものころとは変わっているように見えます。
「進撃の巨人The Final Season」の収録が始まって、原作がまだ連載中のころは、エレンが本心を明かさないまま行動していたので、梶さん自身もエレンが最終的にどうなるのかを聞かされていなくて、エレンの行動の真意がわからないまま、ずっと「この感情表現で合っているのかな?」と迷いながら、演じていらっしゃいました。
ミカサは基本的にエレン命なので、そんなにブレることはありませんでしたが......。本心を見せないエレンを演じる梶さんと、気持ちが変化していくアルミンを演じる井上さんは、悩まれているのを感じましたね。
エレンたちの選んだ道が、はたしてどこに向かうのか、完結編の放送が今から待ち遠しいですね。
お届けできるのは、少し先になりますが、ぜひ楽しみにしていてください。アフレコ収録でも、必死に“戦って”きました。実は私、原作の最終巻だけは読まないようにしていて、物語がどういう結末を迎えるのか、まだ知らないんですよ。アフレコと一緒に、その結末を知っていけたら、と思っているので。
今はまだ、エレンが何を考えて行動してきたのか、どんな気持ちでいるのかもわからない。それでもミカサとしては仲間を信じて、そしてエレンのことも信じて、戦い抜きたいと思っています。最後まで見届けてくださいね!
ちなみに、石川さんはミカサのほかにも、ヴァイオレット・エヴァーガーデンといった印象的な役をたくさん演じてこられましたが、ご自身に近いキャラクターは?
実は最近、「これ私だ!!」と思えるキャラクターに出会ったんです。それは職場ではシュッと、シャキッとしているのに、家ではダメダメなキャラクターだったのですが、そのダメ人間的な部分が自分と近いなと。まだ情報解禁されていない作品なので、楽しみにしていてください(笑)。
ええっ、石川さんって、おうちではダメダメなんですか!?
ダメダメですね。家では何もしたくない(笑)。
それは意外ですね。やっぱりミカサやヴァイオレットなどで評価されている方が多いのかなという気がしますが。
そうですね。「進撃の巨人」も「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も、世界に通用するような大きな作品になったので、見てくださる方も増えて、「好きです」って言ってもらえることが増えました。自分でも強くてかっこよくて、みたいなキャラクターをやらせていただく機会が多い印象があります。
たくさんの作品に出演しても、誰もが知っているような代表作と巡り合うのは難しいことなので、そんな作品たちと出会えたのは、本当に幸せで、ありがたいことだなと思っています。
5月30日生まれ、兵庫県出身。8歳で初舞台を踏み、舞台やミュージカルで数多く主演を務める。2007 年にアニメ「ヒロイック・エイジ」ディアネイラ役で声優デビュー。主な出演アニメ作品は、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「トロピカル〜ジュ!プリキュア」「ブラック★★ロックシューターDAWN FALL」ほか。
Eテレ 毎週火曜 午前8:45~8:50
「進撃の巨人The Final Season完結編」
総合テレビで、2023年放送予定
NHKアニメホームページ https://www.nhk.jp/g/anime/