認知症を患う元警官の男が、殺人事件を追う刑事にマークされる。それはまったく身に憶えのない事件だが、元警官の彼には、強い犯行動機があった……。
はたして自分が犯人なのか!?
認知症を患う男性を主人公にした、新しいタイプのミステリードラマの制作が決定しました。
自分が殺人犯ではないかと恐れながらも、真相を探ろうとする認知症の元警官を小林薫さん。そして、事件の真犯人を必死に追う刑事を尾野真千子さんが演じます。
脚本を担当するのは、連続テレビ小説「風のハルカ」「あさが来た」、大河ドラマ「青天を衝け」を手掛けた大森美香さんです。
小林さん、尾野さん、そして制作陣からコメントが届きました。
佐治英雄役・小林薫
【小林薫さんのコメント】
これまで認知症の役を演じたことはありませんが、脚本や資料を読むと改めて自分の身にも起こり得ることだと実感します。
専門家の先生に伺って印象的なのは、認知症の方々は周りの世界に対してごく真っ当に反応しているということ。ただ、見る・聞くなどの認知機能に問題があって、インプットされる情報が周囲の人々と違っているので、彼らの反応が奇異なものに見えてしまうようです。
なので今回、私が一生懸命に認知症を演じようとすれば、それは間違いかもしれません。主人公の佐治が「罪を犯したかもしれない」「いや、そんなはずはない」と揺らぐ姿は、ごく普通の人の葛藤そのものです。私はただ佐治が認知している世界をそのまま感じて、それに対して素直に反応する。そのことだけを必死にやってみたいと考えています。
このドラマは認知症当事者の目線で描く、とても珍しい作品です。高齢の方だけでなく、若い世代にも興味を持って楽しんでもらえる作品になるよう、頑張りたいと思います。
北嶺亜弓役・尾野真千子
【尾野真千子さんのコメント】
久しぶりの警察官役で身が引き締まる思いです。認知症という題材に、どう理解し、どう立ち向かえるかまだわかりません。でも、小林薫さんがどんなふうに演じるのかわくわくしながらも、撮影を目前に緊張しながらセリフを覚えています。
監督(片岡敬司)とは、2000年にお世話になって以来、久しぶりにご一緒させていただきます。あの頃いっぱい怒られたな~(笑)。成長した自分を見せられるよう頑張ります!
【制作者のメッセージ】
人は認知症になったからと言って、理性や知力をすべて失ってしまうわけではありません。私たちは「憶えのない殺人」をご覧になられた方が、人は認知症となっても確かに社会と関わりを持ち、尊厳を失わずに生きていける、明るくポジティブな未来があることを知っていただける一助となれるよう、このドラマを制作したいと考えています。
特集ドラマ「憶えのない殺人」
2025年早春放送予定(1月中旬~3月頃)
東京郊外の駐在所勤務だった佐治英雄(小林薫)は10年前に退職し、今も同じ町内に暮らしていた。ある日、北嶺亜弓(尾野真千子)という刑事が近所で起きた殺人事件の聞き込みに佐治を訪ねて来る。その事件の被害者は、かつて若い女性へのストーカー行為で佐治が逮捕した男だった。
彼は服役後、今度はその女性を襲ってケガを負わせてしまった。佐治は、自分がもっと注意していればと、そのことを今も深く後悔していた。捜査を進める北嶺は、佐治が犯人であると思わせる物証に行き当たり、実直そうな彼が犯人ではないかと疑いを深めていく。
自分が殺人犯だと疑われていることに気づいた佐治は、元警官の誇りにかけて無実を証明しようとするが、その一方で、自分が犯人ではないかと疑 い始める。なぜなら彼は認知症を患っているからだ。
自分の無実を信じたい佐治と、冷静に事件を追う北嶺の2人は、いつしか彼の心の迷宮に足を踏み入れていくことになる。
出演:小林薫、尾野真千子ほか
作:大森美香
音楽:河野伸
制作統括:後藤高久(NHKエンタープライズ)、磯智明(NHK)
演出:片岡敬司(NHK エンタープライズ)