今年の確定申告でのこと。例年は税務署でパソコン入力をしていましたが、税務署の方から「スマホなら簡単。次からは自宅でもできますよ」と数年前から言われていたので、今回はスマホ入力に挑戦してみました。

予約をしていたため待ち時間はゼロでしたが、細かい数字をスマホ画面に入力するのは大変で記入項目も多く、2時間かかりました。ずっと立ったまま小さい画面とにらめっこをしていたので非常に疲れました。なぜスマホにしたかというと、各画面をスクリーンショットで保存し、それを参考に、来年は自宅で入力できると思ったからです。

私のサポートをしてくれたのは大学4年生の男性で、終始笑顔で対応してくれました。しかし、途中で分からなくなって2回、職員を呼んで確認をしていました。最後には「追加の納税が必要」という表示が出て、私が「毎年、何万円か戻ってくるんだけどなぁ」と言うと、また職員を呼んで見てもらい、未記入の項目があることが分かりました。

でも、明るくさわやかな青年だったので、気持ちよく入力ができました。「順調です」「スマホ、使いこなしていますね」などと私をおだててくれ、雑談もしながら和やかに入力ができました。マスクをしていましたが、目元が涼やかでイケメンに見えました。

彼はIT企業に就職が決まっていて、最後のバイトだと言っていました。「人と話すのが好きで、このバイトはいろいろな人と会えて楽しいし勉強になる」と話していました。私が「仕事は人と人とで行うものだから、君のような人はどこの会社に行って大丈夫だよ」と言うと、「本当は早く起業したい。自分で事業を始めたい」と言います。なるほど今の時代、優秀な学生は卒業間もなく起業するケースが少なくないですものね。

入力が終わって、別れ際にまた少し雑談をして、私から「頑張れよ!」と言って別れました。外は小雨でしたが、爽やかな気分で夕方の街を歩くと、いつの間にか疲れも忘れていました。

(なかむら・ひろし  第2金曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年6月号に掲載されたものです。
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