フェイクニュースが生まれるプロセスを体験してみたら……インフォメーション・ヘルスAWARD 準グランプリ受賞 内田響さんインタビューの画像
第一回インフォメーション・ヘルスAWARD 準グランプリ受賞の内田響さん

NHK財団が主催した「インフォメーション・ヘルスAWARD2024」。

準グランプリに輝いた「フェイクニュースを身近に感じるワークショップ」は、受賞者自身の経験から、ネットの様々な課題を高校生に身近に感じてもらおうと考案されました(インフォメーション・ヘルスAWARD実施報告はこちら) 。

記事のタイトルをあれこれ工夫して、どうしたら注目を集めてアクセスを稼げるのか。タイトルを実際に作ってみるワークショップに参加する過程で、フェイクニュースやアテンションエコノミーの構造を学んでもらう狙いです(アテンションエコノミーについてはこちら)。
準グランプリ受賞者の内田さんに聞きました。


第1回インフォメーション・ヘルスAWARDシンポジウム(2024年04月2日)より、右が内田さん。

うちひびきさんは、応募時は法政大学社会学部・藤代裕之ゼミ4年で、今年4月から社会人として東京で仕事を始めています。

——インフォメーション・ヘルス=情報的健康についての意見を聞かせてください。

ネットで見ている情報の偏りって、なかなか目に見えないものなので意識しづらいと思うんです。そこのところを「食品と身体の健康の関係と同じように、情報摂取も極端に偏ると良くないのでは」とわかりやすく説明するのは大事な考え方だと思います。

私たちの世代は、自分が見ている情報の偏りを漠然と意識している人は多いと思っています。「最近YouTube見てる時間が長いかも」というような話はよくします。

ただ、そうした時の対応はYouTubeやインスタグラムなどを見る時間を少しセーブしようというくらいで、自分自身から積極的にいろいろな情報を見にいってバランスを取ろうというアプローチは、まだまだ広まっていないと思います。

目の前にどんどん情報が飛び込んできて、しかもアテンションエコノミーの構造がすごく強いので、見るか見ないかという選択をすることしかできないんだと思います。

——内田さん自身はどのように対応されていますか。

僕の場合はネットのコンテンツを見ていて嫌になってしまった時は、他のネットの情報を探しに行くのではなくて、媒体そのものを替えて、例えば本を読んだり、リアルな場所に出かけたりするようにしています。

最近ちょっとハマっているのは国立科学博物館です。土日などに通って専門の先生の話を聞いたりしています。


第1回インフォメーション・ヘルスAWARDシンポジウム(2024年04月2日)より。

フェイクニュースが生まれるプロセスを体験してみる

内田さんは去年8月、自分たちで企画したワークショップを開催、一般公募で集まった高校生14人が参加しました。
課題は「被災地に1000万円寄付したので応援して」というコンテンツクリエーターの投稿を記事にする時、どんなタイトルにしたらクリックを稼げるか。
参加した高校生たちは、ネットニュースの記者になったつもりでタイトルを考えます。
インパクトのある表現で誇張したり、炎上しそうなネガティブなタイトルにして好奇心をくすぐったり、タイトルの語尾に「〇〇か、とか〇〇も」を付けて続きが気になるようにしたり……様々な工夫を実際にやってみました。

——今回の受賞作「フェイクニュースを身近に感じるワークショップ」に参加した高校生の意識にはどんな変化がありましたか。

アクセスを稼ぐための見出しを作ってみることで、自分には直接関係ないと思いがちなフェイクニュースが、普段何気なく見ている情報に潜んでいる可能性があるのだと感じるきっかけになったと思います。

こんなに工夫して注目を引く「釣りタイトル」を作っているのだから、情報を受け取る側はもっとちゃんと意識しなければというふうに高校生が感じてくれたのは嬉しかったです。

若い人たち=高校生はそうしたタイトルを普段から見慣れているので、ちょっと疑問形にしてみるとか、刺激的な表現にするとか、そうした工夫はとても高いレベルで理解できているんだなと驚かされました。

——フェイクニュースを見分けるコツを紹介するものはよく見かけますが、「どのように発信されるかに着目したアプローチが面白い」という評価が選考委員から出されていました。こうした発想はどこから生まれたのでしょうか。

大学3年生の時に、同期のゼミ生8人でいわゆる「まとめサイト」記事の真偽を調べる研究をしたのですが、これが8人掛かりでも結構難しくて、同じことを日常生活の中で1人でするのはハードルが高すぎると感じました。

だからネットの情報には真実とうそ、両方が“当たり前にある”ことを前提に、どうしてそうした情報が発信されるのかプロセスを知ることが重要だと思うようになったんです。情報空間の全体像をかんできるようなワークショップにしようと発想しました。

——最後に第2回のAWARDに応募しようと思っている方々にメッセージをお願いします。

我々若者だけでなくて高齢者にとっても情報的健康の意識は必要だと思います。SNSなどでの情報交換であれば、年齢もジェンダーも関係なくいろいろな立場の人がコミュニケーションできるので、AWARDにも親子で応募してみるとか、どうでしょうか。

それから第1回の応募作品で、高校生がぼう中傷ちゅうしょうにフォーカスして、自分自身の問題意識から生まれたアイデアを提案していたのがとても面白いと感じました。

情報的健康といってもその人なりのいろんな健康のタイプがあると思うので、自分としてはもっとこうなって欲しいというような「自分発信」のアイデアをたくさん見ることができたらいいな、とすごく楽しみにしています。

——ありがとうございました。

法政大学でも、大学のHPで内田響さんのAWARD受賞を伝えています(ステラnetをはなれます)。

(NHK財団 インフォメーション・ヘルスAWARD事務局)

インフォメーション・ヘルスAWARD 2024に関しては公式サイトをご覧ください。
お問い合わせフォームもございます(お問い合わせはこちら)。