どうも、朝ドラ見るるです。

今週は解説委員の清永さんに、高等試験について聞いたばかり(「超難関、戦前の“司法試験”のマニュアル本発見! 驚きのその内容は!?」)なんだけど、実は見るる、もうひとつ気になることが……。

こちらは、弁護士の佐賀千惠美先生に突撃取材しちゃいました。教えて、佐賀先生!

三淵嘉子と2人の合格者 日本初の女性法律家たちって?

見るる 佐賀先生、こんにちは! 実は、今週の放送でどうしても気になっていたことがあって、来ちゃいました……。

佐賀先生 はい、どうぞ、なんでも聞いてください。

見るる ありがとうございます! ドラマの中では、トラコ(とも)と一緒に中山先輩と久保田先輩が高等試験に合格していました。佐賀先生のご著書にも、“日本初の女性法律家”として、三淵嘉子さん以外にも、2人の女性の名前が出てきますよね?

佐賀先生 はい、三淵さんが高等試験に合格した1938(昭和13)年、中田正子、久米愛という2人が一緒に合格しています。3人とも明治大学法学部の出身で、法曹を志す女性にとって希望の星でしたね。

見るる そうだったんですね〜。どんな人たちだったのか、気になります!

佐賀先生 以前お話ししたように、私の義理の母だった佐賀さとも明治大学法学部で、三淵さんの10年後輩。この3人にも会ったことがあったようです。それぞれの印象を「三淵さんは、丸ぽちゃでおしゃべり好きの明るい人」「中田さんは、すらりとした貴婦人タイプ」「久米さんは、スラックスでつかつかと歩いて来るイメージ」と表現していましたね。

3人が揃った写真。左から、久米愛、三淵嘉子、中田正子。1939(昭和14)年、のちに総理大臣になった、弁護士で政治家の片山哲氏との座談会にて(写真提供/鳥取市歴史博物館  原資料/鳥取市歴史博物館寄託〈個人蔵〉)。

見るる 貴重な証言! ドラマの先輩たちとはちょっとイメージ違うかも。ところで、ご著書によると、佐賀先生も、中田さんにはお会いになっているんですよね?

佐賀先生 ええ。1986年のことです。中田先生は、当時77歳でしたが、気品があってしなやかな雰囲気の方でした。私が当時の高等試験についてお聞きすると、「ガリガリやらなければ国家試験には受からないわよ」と、きっぱりおっしゃって(笑)。優しさの中にも強い芯があって、さすが、初の女性弁護士になるだけのことはある、という方でしたね。

中田正子(1910〜2002)。1940(昭和15)年頃、弁護士の法服姿(写真提供/鳥取市歴史博物館  原資料/鳥取市歴史博物館寄託〈個人蔵〉)
「右が中田正子先生、左が若かりし頃の私です。1986(昭和61)年8月、鳥取市にあった中田正子先生のご自宅兼事務所を訪ねたときに撮影したものです」by佐賀先生(写真提供/鳥取市歴史博物館  原資料/鳥取市歴史博物館寄託〈個人蔵〉)

見るる そういえば、佐賀先生も司法試験は受けていらっしゃるんですよね。大変でしたか……?

佐賀先生 正直、東京大学の入学受験よりも、ずっと難しく感じました。今でもたまに、試験に落ちる夢を見ます(苦笑)。
で、話を戻しますと、中田先生は、最終的に合格した前年、1937(昭和12)年に筆記試験までは受かっているんです。自分では口述試験にも自信があったそうで、当時、「女性だから落とされたんじゃないか」といううわさが立ったとか。真実はわかりませんけど、そういう世の中の空気はあったんでしょう。
弁護士になられてからは、戦時中、夫の実家のある鳥取県に移って、以来ずっと地元で弁護士をされていました。
鳥取の弁護士会では、日本で初めて女性で弁護士会長にもなられています。後年、お子さんたちに東京に呼ばれても、「鳥取には私を必要としている人たちがいる」とおっしゃって離れようとしなかったとか。

見るる すてきな方だったんですね。そして、久米愛さんのほうは……?

佐賀先生 残念ながら、久米先生はすでに亡くなられていたのでお会いできず、ご遺族である夫の知孝さんにお会いして、お話をうかがいました。知孝さんは、すごく久米先生を大切にしていらっしゃる方という印象でしたね。
結婚のいきさつをお聞きしたら、「まだ子どもにも話したことがないんですが」と照れながら、同世代の男女混合で行ったハイキングをきっかけに、親しくなったという話をしてくださいました。

久米愛(1911〜1976)。津田英学塾(現・津田塾大学)で英語を学んだあと、明治大学専門部女子部に入学した。写真は1951年のもの(写真提供/明治大学史資料センター)。

見るる え、ハイキングですか⁉︎ わ〜! ドラマでも、トラコたちがハイキングに行くエピソード、ありましたね! 実際にそういうイベントがあったなんて、なんだかホクホクしちゃいます。

佐賀先生 当時、知孝さんは東京大学法学部の3年生、久米先生は明治大学法学部の1年生。話題は、「自由主義」だったそうですよ。よほど意気投合されたのでしょう、その年のうちに婚約もされています。

そうそう、知孝さんは、そのころに久米先生からもらったという手紙まで、わざわざ抜き書きしてご提供くださったんですよ。

私はこの階段(弁護士になる試験のこと)を通らなければ、自分の一生は開けないのだ。どんなことがあっても一生懸命やるんだぞって、常に自分に言い聞かせていました。
また、女性に新しい道が開かれてその上を歩もうとするとき、自分個人の問題としてではなく、少し大げさに言えば社会的な意義や使命といったようなものさえも、感じていました。
(1937年6月30日付の手紙より一部)

見るる なんか、未来の女子部存続のために学長たちに頭を下げたトラコたちと重なりますね……! こういう先人たちのおかげで、今、100年後の見るるたちにも多くの選択肢があるんだって思ったら、感動しちゃいます。

佐賀先生 それから久米先生は、日本の女性法律家のフロントランナーとしてご活躍をされていきます。亡くなるまで、日本婦人法律家協会(現・日本女性法律家協会)の会長でもありましたしね。でも、ちょっと長くなっちゃいましたから、その話はまた今度。

見るる はい! でも、おかげで中田正子さん、久米愛さんのことが、経歴だけでなく、人柄まで感じられた気がします。またぜひ聞かせてください〜。

 

参考:佐賀千惠美『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』(日本評論社)、図録『日本初の女性弁護士 中田正子』(鳥取市歴史博物館/2006年)

中田正子さんにまつわる展示会「日本初の女性弁護士 中田正子」を鳥取市あおや郷土館にて開催中(〜5月19日まで)。詳しくは郷土館公式HPでご確認ください。

次週!

第7週「女の心は猫の目?」5月13日(月)〜5月18日(土)

意味:《女の心は気まぐれで変わりやすいことのたとえ。女心は、猫の目が光によって形が変化するように変わりやすいとの意から。》(ジテンオンライン『ことわざ辞典ONLINE』より)

晴れて弁護士になった寅子! でも次週予告を見る感じ、なんだかちょっとうまくいってない……? そして、寅子、プロポーズされちゃったりするの? お相手は……花岡⁉︎ ほんと〜⁉︎ 一体どうなっちゃってるの、次週が気になりすぎる〜!

というわけで、今週の「トラつば」復習はここまで。
来週の講義も、お楽しみに〜!!

佐賀千惠美(さが・ちえみ)
1952年熊本県生まれ。1977年司法試験合格。翌年に東京大学法学部を卒業、司法修習生に。1981年東京地方検察庁検事を退官。1986年弁護士登録。これまで、京都府労働委員会会長、京都弁護士会副会長、京都女性の活躍推進協議会座長などを歴任。著書に、『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』(日本評論社)、『三淵嘉子の生涯〜人生を羽ばたいた“トラママ”』(内外出版社)などがある。

取材・文/朝ドラ見るる イラスト/青井亜衣

"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。