留学生の皆さんに防災知識を学んでもらい、いざというときの行動につなげてほしい――。

こんなミッションを掲げ、NHKの地域局と国際放送局、NHK財団は「留学生向けの防災セミナー」を開催しています。今年度は2つの大学で実施しましたが、今回はいつもとは少し異なる試みに挑戦しました。

2023年11月の訪日外国人客が244万800人となり、2019年同月とほぼ同数、2カ月連続でコロナ前の水準となり、順調な回復が続いています。でも、日本で大きな災害が起きてしまったら、滞在中の外国人観光客や留学生のみなさんはどうなってしまうのでしょうか?

そこで、千葉県旅館ホテル生活衛生同業組合、ホテルポートプラザちばのご協力を得て、「留学生向けの防災セミナー」がパワーアップ! その時の様子をご紹介します。

■外国人観光客を想定した避難訓練からスタート
まず、「有事に備えた海外旅行者への対応力向上のための避難訓練」が行われました。外国人観光客のホテル宿泊が増えているなか、もし避難誘導が必要な場合はどうするか?  宿泊客の命を守りながら、スムーズに避難誘導ができるか? こうした課題意識を持った旅館組合とホテルが、深夜の火災を想定した避難訓練を行いました。千葉県内の留学生や日本語学校の生徒が観光客役となり、訓練に参加。

「火事だ~ 火事だ~ 逃げてください!」
 ‟Fire, Fire, Escape!”


こう叫びながら、ホテルスタッフが客室のドアを叩いて避難誘導していきます。真剣な避難訓練を通じて、「外国人観光客にもわかる避難経路を示す表示を掲げておく必要性や事前に説明してしておくことも大切」といった課題が見えてきました。さらには、誘導にはジェスチャーも効果的という発見もありました。この訓練の様子は「首都圏ネットワーク」でも放送されました。

増える外国人観光客の防災 千葉のホテルの避難訓練に密着! | NHK(NHK首都圏ナビのウェブサイトへ移動します)

■後半は英語で学ぶ防災知識セミナー
では、避難したあとはどうすればよいでしょうか? 特に地震など自然災害の場合は最新の状況や被害の程度を知るために、テレビやラジオをつける人も多いでしょう。しかし、留学生や外国人観光客の場合は日本語が壁となり、正確な情報にたどり着けないケースも多いというのです。

そこで後半は「不測の事態に備えよう! (Be Prepared for the Unexpected)」と題して、NHKグループによる、英語での防災セミナーを行いました。

ここで参加者に伝えたのは、基本的な防災事項。3つあり、1つ目は「地震が起きた時の初動」です。これは、地震の揺れを感じたら、「何よりも頭を守る」「(可能なら)ドアを開けて避難経路を確保する」といったことです。私たちの命を守るために何よりも大事な行動です。

2つ目は、「正しい情報が得ることの重要性(reliable information)」。震度や震源地などを伝える第一報はもちろんのこと、災害状況は刻一刻と変化します。SNSなどにも多くの情報が流れますが、正確で信頼できるニュースを手に入れましょう。

そして3つ目は、「平時の備え」です。これは、家や学校、職場の近くで、どこに避難場所があるかを把握しておくことです。地震で建物が倒壊した時、その場から離れなくてはなりません。平時から、「ここなら避難できる」という場所を知っていれば、落ち着いて行動できるはずです。

講師はNHKの国際放送で長く英語ニュースのキャスターを務めた青谷優子さん

■正しい情報を入手することが大切!
「基本的な防災事項」の2つ目にもあるように、正しい情報を入手することは大切なこと。災害時に何が起こっているか、正確で最新の情報を把握できれば、冷静に行動できるようになるからです。そのためには、そこで役に立つのが、スマートフォンアプリ「NHK WORLD-JAPAN」です。セミナーでは、アプリの基本的な使い方や、いざというときにどうすれば必要な情報にたどり着けるかといったことを説明し、多くの受講生がその場でダウンロードしていました。

【NHK WORLD-JAPANアプリでできること(抜粋)】
①日本国内のニュース速報を英語にてプッシュ通知でお知らせ。
英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語に対応。
②震度5弱以上の地震になると、総合テレビでのライブニュース映像に自動翻訳した英語字幕と英語AI音声が載り、それがアプリでライブ配信されます。

特に①のプッシュ通知は留学生や外国人観光客におすすめの機能!
NHKワールド JAPAN公式アプリ | NHK WORLD-JAPAN(NHKワールドJAPANのサイトへ移動します)
震度6弱の揺れをVRで体験してもらいました

セミナーを終えて、参加者からは

「来日後、就寝時に地震を経験しました。その時は大丈夫だろうとすぐに寝てしまったのですが、次はNHK WORLD-JAPANで震度を調べたり、情報収集をしたりしたい」(ベトナム出身 日本語学校の生徒)

といった声が寄せられました。

今回は旅館組合とホテルの協力を得て、2本立てという充実した防災イベント。すべての人が命を守れる行動ができるようになる、実りある1日となりました。

テキストとして使用した「Japan Life Guide」はこちらからご覧いただけます。日本語版のほか、英語版、中国語簡体字版、中国語繁体字版、ポルトガル語版、ベトナム語版があります。
Japan Life Guide - 日本の暮らしをもっと楽しく! - インフォメーション | NHK WORLD-JAPAN - NHKの国際サービス(NHKのサイトへ移動します)

(取材・文/NHK財団 国際事業本部 鈴木伊都子)