2023年12月29日(金)放送のちょっぴりマニアックなラジオ番組、「映像の世紀を語るラジオ」。(詳細はこの記事を参照)いちばんの聞きどころは、なんといっても「映像の世紀」ファンを自称する東野幸治さんと社会派ブロガー・ちきりんさんが、番組スタッフに向かって繰り出す質問の数々でしょう! 番組収録の中で飛び出した、ファンなら知っておきたい「映像の世紀バタフライエフェクト」制作にまつわるQ&Aを以下にまとめてみました★


Q1回の放送を制作するのに、どれくらいの時間をかけているの?

現在放送中の「映像の世紀バタフライエフェクト」の場合、1回の放送につき約5か月をかけています。というのも、45分の放送時間に対して、素材として集めてくる映像資料は、平均して約50時間(3000分)もあるため。そこから試写を繰り返し、内容を精査し……という作業に、大変な時間がかかるからです。もちろん、その前段階の、企画を練ったり、映像を集めたり、というのにも膨大な時間がかかります。

ちなみに、現在、この番組のディレクターは15〜16人。1人につき、1年間で2~3本を担当しています。(by伊川義和プロデューサー)


Q各回のテーマはどうやって決めているの?

できる限り、いま、世の中の多くの人たちが興味を持っているもの、知りたいと思っているものをテーマに据えるようにしています。
が、いちばんは、各ディレクターが、自分自身が見たい!と思えるものであるかどうか、が基準です。同じ時代、同じ国で暮らしている“いち生活者”として当然の感覚を、番組作りにおいても重要視しています。(by寺園慎一プロデューサー)

寺園慎一プロデューサー

Q誰が、どこから映像を集めてくるの?

映像を集めてくるのは、映像リサーチャーの仕事です。現在は、日本、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、インドなどに散らばる約20人がチームで動いています。

具体的には、番組ディレクターが作った構成台本に従って、各国の映像資料を収蔵するアーカイブ施設、大学、資料館、博物館、個人などにあたって、ふわさしい映像を探し出します。

どこにどんな映像があるのか、誰がその映像を持っているのか?は、長年の経験からあたりをつけられることもありますが……基本的には地道にリサーチをかけたり、人づてにたどっていってやっと見つけたということも。
一方で、見つけようと思っていたわけではないのに、偶然、大ヒット!というお宝映像に出会うこともあります。実際、放送で使われた映像の中にも、そういうものがけっこうあったりします。(by映像リサーチャー・池上敦子さん)


Q映像資料のリサーチで大変なのは?

初めから、「間違いなく(その映像が)ある」とわかっている場合ならともかく、その映像が本当に存在しているのかどうか、今でも残っているのかどうかがわからない場合には、当時の年表などと照らし合わせて、いかにも持っていそうなところにコンタクトをとって、「こういう映像はありませんか?」などと地道に問い合わせていく必要があるので、大変な手間がかかります。

今は、多くの映像がデジタル化されているので、オンラインでサンプルを見ることができたり、だいぶ時間短縮されるようになりましたが……、かつては、現地にいかないとその映像が見られなかったり、フィルム(のコピー)を船便や航空便で送ってもらわないといけなかったり。それで、本当に放送までに間に合うの?とヒヤヒヤしたこともありますし、いざ手に入れてみたら期待外れということもありました。(by映像リサーチャー・池上敦子さん)


Q「その国にとって不都合な映像」は、提供してもらえない?

そういうことがないわけではないです。ただ、現在、制作に協力してくださっている各施設は、基本的に、この番組の趣旨に賛同してくださっているので、政治的な理由から映像を出し渋るということは、あまりありません。むしろ、危険を顧みず、NHKで報道してくれるなら、と映像を探し出して提供してくれることもあります。

とはいえ、やはり、いろいろな事情から交渉が難航する場合も。ですから、リサーチャーの仕事には、映像を見つけたあと、それを使わせてもらうための「交渉」も含まれているわけです。(by映像リサーチャー・池上敦子さん)


Q映像の使用料……やっぱり、お高いんでしょ?

ものによりますが、限られた予算で制作している以上、できるだけコストをかけずに素材を集めるようにはしています。
そのうえで、どうしても使いたい映像の場合には、時間をかけて値段交渉をすることもありますし、ほかの映像の使用を諦めて、例えば動画ではなく静止画にしたりするという工夫で乗り切ったりすることもあります。(by映像リサーチャー・池上敦子さん)


Qファクトチェック(事実確認)はどうしてる?

揃った素材を5週間くらいかけて45分に編集し、それにあわせて台本を書き上げたら、専属の校閲担当者に渡して徹底的にチェックをしてもらいます。英語、中国語、ロシア語が堪能な博覧強記な方ですが、だいたい1週間ほど図書館にこもって、各国の資料・文献にあたって事実確認をしてくれるので、信頼しています。
また、各テーマにそって、詳しい専門家の方に監修もしていただいています。とにかく間違いのないように、最善を尽くしています。(by伊川義和プロデューサー)

左から東野幸治さん、ちきりんさん

Q語り(ナレーション)で心がけていることは?

テーマによっては非常に心が揺さぶられることもありますが、自分の感情を届けるのが役割ではないので、収録ブースに入るときには、個人的な感情は極力削ぎ落とし、事実だけを伝えることに徹しています。
やはり、この番組の主役は映像ですし、どんな感情を抱くのかは、それを見た視聴者次第ですから。なるべく淡々と、必要以上に制作サイドの意図が前に出ないように、細心の注意をはらって原稿を読むようにしています。(by語り担当・伊東敏恵アナウンサー)


Q視聴率は気になる? メインの視聴者層は?

もちろん視聴率は気になります。やはり、作ったからには、「見てもらってなんぼ」なので。たくさんの方に見ていただいていれば、それだけやりがいにもつながりますし。ちなみに、この番組の場合、回によって視聴率が大きく変動するということはなく、一定のファンの方々に、安定して見ていただいていると感じています。

視聴者層は、これが意外なことに(!?)20〜30代の方々が多いのが、この番組の特徴です。さらに、今回とったアンケートの回答者で最も多かった世代が10代という、うれしい結果も。これは、中学生、高校生などがいるご家庭で、歴史の勉強をかねて見てくださっているのではと思っています。(by寺園慎一プロデューサー)


Q番組スタッフも、「リアタイ(リアルタイム視聴)」してるの?

もちろんです! 番組は作って終わりではなく、やっぱりみなさんに見ていただくところまでが制作者としての役割なので。
ですから……みなさんの感想、とても気になっています。ぜひ、「#映像の世紀」「#バタフライエフェクト」などのタグをつけてご意見・ご感想を投稿してください。
一同、泣いて喜びます。どうぞよろしくお願いします!(by番組スタッフ一同)

左からちきりんさん、東野幸治さん、寺園慎一プロデューサー

こんな感じで、制作の裏話がたっぷり聴ける「映像の世紀を語るラジオ」 放送は、29日(金)NHKラジオ第1 午前8時5分〜8時55分
最後に、ちょっとだけクイズを出します。正解は、「バタフライエフェクト」を見れば分かる!(えっ?簡単すぎる?)

【クイズ1】
モハメド・アリの写真を執務室に飾っていた、アメリカの大統領とは?
「モハメド・アリ 勇気の連鎖」 で登場

【クイズ2】
「イスラエルが最も重視すべきなのはアラブ人に完全な平等を保障したいという願望を常に抱き、それを明確に表し続けることでなければなりません。アラブ人に対してどんな態度をとるかが民族としての私たちの道徳水準が試される本当の試金石になります」と言った著名なユダヤ人科学者とは?
「砂漠の英雄と百年の悲劇」 で登場

【クイズ3】
自身が主演した映画に影響されてシークレット・サービスになった人物に、命を助けられたアメリカの大統領は?
「ハリウッド 夢と狂気の映画の都」 で登場

【クイズ4】
ビートルズに影響を受けて音楽を始めたミュージシャンといえば……?(もちろん複数回答!)
→ここだけの話、貴重な映像がてんこ盛りだそうです! 絶対にお見逃しなく!
スペシャル回「ビートルズとロックの革命」 紅白前夜の12月30日(土) 総合午後9時!!