NHKが誇る人気ドキュメンタリーシリーズ「映像の世紀」をご存知でしょうか?
そう、あの印象的な音楽とともに、世界各国で撮影されたさまざまな映像で、20世紀の歴史を振り返る歴史教養番組です。
現在放送中なのは、2022年4月に始まった新シリーズ「映像の世紀バタフライエフェクト」
各回に独自のテーマを設け、世界の片隅でおきた小さな出来事が、いかに連鎖し、世界を動かすにいたったのか?という視点で、過去の映像資料を再構成して放送。新たなファンを獲得しています。

さて今回、そんな「映像の世紀バタフライエフェクト」を愛してやまない著名人2人と番組プロデューサーによる、ファン垂涎(?)の企画が実現したという情報をキャッチしました。な、なんてマニアックな……。

しかも、なんと、ラジオ番組だというのです!

……ん? 「映像の世紀」なのに? 大丈夫? 一体、何を放送するの?
気になる番組の実態を確かめるため、ステラnetでは、その収録現場に潜入してきました。はたして、いったいどんな内容の番組なのでしょうか!?


▼出演者は、東野幸治さん&ちきりんさん VS. 番組制作チーム!

左から東野幸治さん、ちきりんさん

ゲストであり司会を務めるのは、芸能界きってのドキュメンタリー好きで、「映像の世紀」ファンを自称する東野幸治さん。そして、もう一人のゲストは、社会派ブロガーで、こちらも筋金入りのドキュメンタリーウォッチャーのちきりんさん。2人とも、「とにかく聞きたいことがいっぱいある!」と、鼻息荒く(?)収録スタジオに乗り込んでこられました。

左から伊川義和プロデューサー、映像リサーチャー・池上敦子さん、寺園慎一プロデューサー、伊東敏恵アナウンサー

そんな2人を迎えうつのは、「映像の世紀」のレジェンドプロデューサー・寺園慎一さん。「映像の世紀」を見て「映像の世紀」を作るためにNHKに入局したという伊川義和プロデューサー。世界中にネットワークを持つ映像リサーチャーの池上敦子さん、シリーズ当初から番組の語りを担当している伊東敏恵アナウンサーの4人。まさに最強の布陣です。

そして「映像の世紀」にふさわしい、一触即発の緊迫したムード……であるはずもなく、なごやかな雰囲気の中で、収録がスタート。つまり、番組ファン代表による、制作スタッフインタビューという感じでしょうか。

ところが、飛び出す質問はというと、意外となごやかじゃない!
「あの映像、どこで探してくるんですか?」「やっぱり何か裏技があるんですか?」「その国にとって都合が悪い映像は出してもらえないんでしょう?」「費用はいくらかかるんですか?」などなど……。2人による質問攻めに、制作陣タジタジです。


▼実は、12月26日(火曜・深夜)のイッキ見!と連動してます!

ところで、この番組、これだけ聞いても十分楽しいのですが、実は、26日の深夜に予定されている「映像の世紀バタフライエフェクト」3回分の再放送を見ておくと、もっと楽しめることが判明しました。

というのも、その3回というのが、実は、東野さん、ちきりんさん、そして寺園プロデューサーが、自分たちのイチオシ回をセレクトしたものだから!
「ちょ、それを早く言ってよ!」……とならないように、今言いました★

・東野幸治さんのイチオシは……「ハリウッド 夢と狂気の映画の都」
・ちきりんさんのイチオシは……「砂漠の英雄と百年の悲劇」
・寺園Pのイチオシは……「モハメド・アリ 勇気の連鎖」

スタジオでは、各回のポイントをイチオシした本人、と本人以外(笑)が口々に解説。もちろん、感想や裏話も……。これはやっぱり、先に見ておくっきゃないのでは。
ちなみに、この記事を読んでいる時点で、再放送を見逃してしまった!という方は、「NHKプラス」をご利用ください♪ 1月3日まで配信中です。


▼待望の30日(土)ビートルズ回の裏話もいち早くわかる!

やがて話は、ことし6月に放送され話題を呼んだビートルズ回へ。そうです、東野さんがあまりの衝撃に、思わずご自身のラジオでそのエピソードを語ったという伝説回です。
ビートルズ結成から人気絶頂になるまでを「赤の時代」、ライブ活動を休止してからを「青の時代」として2本に分けて放送したものだったのですが……。

「あのシーンは面白かった」「あの映像は見たことなかった」などと、皆が感想を語る中、なんだかうれしそうな寺園プロデューサー。実は、ある大ニュースの発表が待ちきれなかったのです。それは……

紅白前夜の12月30日(土)!! 総合9時!!
スペシャル回「ビートルズとロックの革命」放送決定!!!

「ちょ、待って、早く言ってよ!」……と言われないように、今言いました★
どうやら、前作に新しい映像を加えた、全くの新作だそう。
「それは見ないといけませんね!」と、東野さんも大興奮。
彼らがどんな“革命”を巻き起こしたのか?
まさに「バタフライエフェクト」にふさわしいテーマ。どうぞお楽しみに!
【「映像の世紀バタフライエフェクト」公式サイトはこちら】


▼収録を終えて……ほくほく顔の2人のゲストにインタビュー!

そんなこんなで、スタジオでの収録は終了〜。パチパチパチ……。
「なるほど、年末にビートルズか、いいじゃない!」なんて、一緒になってほくほくしている場合じゃありません。最後に、「映像の世紀」ファン代表を務めてくださったゲストの東野幸治さん、ちきりんさんに、番組収録の感想をうかがいました!

東野幸治さん
これ、番組になりますか? ほとんど“オフ会”でしたけど(笑)

僕、普段からドキュメンタリーが好きで、よく見るんです。なにげない人々の暮らしを撮ったものから、政治・社会的なテーマを掘り下げたもの、世界の決定的瞬間や自然環境もの、人物密着インタビューまで、本当にジャンル問わず、なんでも見ます。

最近は、特に、あまり演出が入っていないものや、対象者と少し距離があるタイプのものが好きですね。まあ、バラエティーだと仕事に近すぎて気分転換にならないというのもあるんですけど(笑)、ドキュメンタリーには、学びも、癒やしも、あるのでね。

中でも「映像の世紀バタフライエフェクト」は、毎回、楽しみにしています。僕は、過去の「映像の世紀」シリーズもけっこう見ているんですけど、「バタフライエフェクト」のシリーズになってからは、テーマや切り口が面白くて、一度見たことがある映像でも新しい発見があって、2度目でも全然いける(笑)。世界で起きたさまざまなことが、番組のラストに向けてまさに「バタフライエフェクト」的につながっていくと、おお!ってなりますし。

あと、「このテーマ、どうやって決めてんのやろ?」「あんな映像、どこで見つけてきた?」と、聞いてみたいことがいろいろと湧いてくる番組でもありますよね。

……ということで、今回は、そのオフ会でした! あるいはファンミーティング(笑)。いやあ、僕はすごく楽しかったですよ。「映像の世紀」シリーズにずっと携わってきたというレジェンドプロデューサーさんに、世界中から映像を探す仕事をしているリサーチャーさん、あの美しい声でとんでもない事実を淡々と語られるアナウンサーさんまで、番組スタッフの皆さんが僕の前にずらりと並んでくださって。

そして、隣には、番組ファンの社会派ブロガーのちきりんさん。めちゃくちゃ物知りで、質問が鋭いんですよ。そして、めちゃくちゃ番組見てる(笑)。
そんなメンバーで、ひたすら「映像の世紀」について語る50分間でした。ま、収録なので、本当は2時間やってたんですけど。どこがカットになるんやろ、もったいない。

で、聞いてみたいと思ってたあんなことやこんなこと、全部聞きました、語りました! 一応、手元に台本もあったんですけど、みんな、全然関係なくしゃべり倒していましたね。自分もテレビ側の人間なのにあれですけど、こういう、ガチスタッフさんに番組の裏側を聞くという機会はなかなかないのでね。いち視聴者というか、本当にファンの気持ちで参加させていただきましたね。うん、面白かったです。

ただ、僕、今回、司会をやらされるとは聞いていなかったので、それはびっくりしました。NHKのラジオ、初めてだったのに、突然司会って(笑)。うまくやれてますかねえ。ちょっとはしゃぎすぎてるかも……? それも含めて(?)、みなさん、ぜひ、29日の放送をチェックしていただけたら!


ちきりんさん
映像はウソをつけない。はずだと思っていました。 

今回お話をうかがった中でいちばん印象的だったのは、ファクトチェック(事実確認)にすごく時間やエネルギーを遣っていらっしゃるんだなということです。専従のスタッフまで雇われたりしていて……。いくらでもウソが書けてしまう絵や文章とは違って、映像はウソがつけないと思っていたのですが、その映像の裏の裏まで取っている、取らなくちゃいけないというのは、やっぱりテレビメディアって大変な責任を負ってるんだな、と改めて痛感しました。

しかもこれからは単純な間違いだけではなく、意図的に作られた「フェイク映像」も多数混じってくる時代になるわけで、それを見極める作業も必要になりますよね。「これは本物の映像なのか? AIで作られた映像ではないか?」「どこか、巧みに改変されていないか?」「誰が何を意図して作った映像なのか?」……個人がスマホで自由に映像を撮影できる時代は、映像の可能性を大きく広げる。でもその一方で、それら素人が撮った映像の真偽を確かめるにも、これまで以上に膨大な組織力が必要になるはず。

いまやアメリカやイギリスなどでは、「記録」の取り扱いは、それ自体が1つの研究領域になるほど重視されています。でも日本では、まだまだその認識が薄い。重要な記録でさえ、保管期限が切れたからと担当の役所によってたやすく破棄されてしまうような国です。映像に限らず、過去の記録という資料の価値を本当にわかっているんだろうか? と不安になることも多い。少なくともこの番組では、そのあたりもぜひしっかり取り組んでほしいと思います。

映像が示すもの、特にドキュメンタリーが私たちに見せてくれるのは本当にあったこと、つまり事実なので、そのパワフルさにいつも心動かされます。私はエンタメもドラマもあまり見ないのですが、今は現実に起きている事件のインパクトが強すぎて、作りものではなかなか追いつけない。クリエイター受難の時代かもしれません(笑)。

私の「映像の世紀バタフライエフェクト」のおすすめの見方は、いくつかの回を横断的に見ることです。1つのテーマで切り出されたエピソードが、別のテーマとリンクしていることがよくあるので。例えば、「ロックミュージックが自由の象徴だった」というフレーズは、様々な回で何度も登場します。単なる音楽ではなく、時代への抵抗を音楽に乗せている、それがロックなんだと。横断的に複数の番組をみることで、そういったより明確なメッセージを受け取ることができるのも醍醐味ですね。

あと、私は、作り手の意図やたくらみが匂いすぎるドキュメンタリーが苦手で、ついうがった見方をしてしまうのですが、「映像の世紀」にはそれがない。映像の解釈を視聴者にゆだねてくれる。そこがいい。とはいえ今回、制作サイドの話をうかがって、実は様々な意図もあるんだなとわかり、とても勉強になりました。

ひとつ気になっているのは、いま、日本だけではなく、世界中でナショナリズムが高まっていること。そしてそれは、自国や他国の歴史への無知から来ているのではないかと思うんです。だからまず、きちんと歴史の事実を学ぶことが大切だと思っていて、そのためにもこの番組をより多くの人に見てほしい。今回、制作の舞台裏をうかがって、さらに強くそう感じました。


では、改めて29日(金)NHKラジオ第1 午前8時5分〜8時55分、「映像の世紀を語るラジオ」をお楽しみに! なお、この番組は、放送後、「らじるらじる」の聴き逃しサービスで1月5日(金)まで聴くことができます。

ちなみに、ステラnetでは、この番組中に飛び出した「映像の世紀ファンならぜひとも知っておきたいQ&A」をまとめた記事を近々配信予定。こちらもどうぞお楽しみに!