NHK-FMの人気番組「アニソン・アカデミー」で生徒会長(番組MC)を務めている“しょこたん”こと中川翔子さんの連載コラム。
今回は、ライブハウスツアー、芸能生活20周年記念ソングの発表など、この秋に取り組む音楽活動への思いを語ります。


♪トゥットゥル~。中川翔子です。
最近、「クリエイターの方たちって、世界中がキラキラして見えるのかも」と思うようになりました。というのも、8月に「アニソン・アカデミー」に講師(ゲスト)として来校してくださった作曲家の千住明さんの姿が、とても印象的だったから。「料理と音楽は似ている」とおっしゃっていたこと、仕事モードのスイッチが入るとギラギラした感じになること、おいしいものを食べることが趣味だという話、そしてアニメへの深い愛! かっこいい生き方をされているな、とすごく思いましたね。そのおかげで、千住さんが音楽を担当された「VIVANT」も全部見ました。

さて、私、中川翔子は、この秋、たくさん歌います!
ことし2月に芸能生活20周年記念のベストアルバムを発表して、5月に「しょこたんフェス」を開催して、少し燃え尽きかけていましたが、どんどん新しく歌のタイミングがやってきました。全曲「浪漫飛行」というトリビュートアルバムに参加させていただいたり、「シティーハンター」の主題歌だった「愛よ消えないで」をカバーさせてもらったり、秋アニメの「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」の主題歌「65535」を歌うことが決まったりして、びっくりですね。「まだまだ歌っていても、いいんだよ」と未来が教えてくれたような気がして……。

私は、ほかのアーティストさんと違って、毎日やることが全然違っていて、毎回「歌手活動に、やっと帰ってきた」みたいに感じるのですが、変わらずに応援して、待っていてくださる方たちがいるので、心を込めて歌を届けたいなと思っています。

今月末は、いよいよライブハウスツアー「ゼロ距離」。「しょこたんフェス」は、たくさんのゲストを迎えての「お祭り!」という感じで、自分の持ち歌はそんなに歌わなかったから、今回はレアな曲もたくさん入れて歌いたいと思っています。

このツアーのファイナル、という位置づけになっているのが、11月のオンライン・ライブです。去年もシングル曲を全部歌うオンライン・ライブを開催したのですが、やっぱり通常のライブと違って、オンラインだとまだ慣れないというか。目線とか「あ、どうしよう?」って思っちゃうし。それでもお客さんの反応が文字で見えて ──皆さんが書き込んだコメントが、リアルタイムでステージの下に流れてくるんです──、「私、ひとりじゃない!」って思えて、安心できるんですよね。

そして、ツアーでも歌うことになりそうなのが「中川翔子」! 今回のコラムの「???」な見出しにもありますが、芸能生活20周年記念ソング(!)として作っていただいた新曲のタイトルが、「中川翔子」なんですよ。もう配信が始まっていて、MVもYouTubeで公開されているから、聴いていただいた方がいるかもしれません。

自分の名前がタイトルになった曲を歌うなんて、皆さんも驚かれたと思うんですけど、自分がいちばん困惑、混乱しているので! 「どんな顔で歌ったらいいんだろう?」って、すごくドキドキしています。「水曜日のカンパネラ」のケンモチヒデフミさんが作詞・作曲・編曲、プロデュースもしてくださったのですが、歌詞に私の人生や大好きなものが織り込まれていて、本当に尊いな、と。

もともとカンパネラの「桃太郎」や「エジソン」をものすごく聴いていて、とても耳に残っていたんですよね。それで20周年記念ソングの企画が持ち上がった際に、ケンモチさんのお名前が出て「いいんですか!?」ってなって。曲を作る前にケンモチさんとお会いする機会があって、そのときに「中川翔子はこういう人です」とプレゼンさせていただいたんです。最初は、耳に残る楽曲として「猫に特化した歌はどうでしょうか?」みたいな感じでお話しさせていただいたのですが、「いや、『中川翔子』でいきましょう!」って言われて、あれよあれよという間に曲が出来上がっていました。

「エジソン」は偉人だけあって、いろんなことが起きてキャラも立っているからこそ歌になったと思うのですが、私はまだ生きているし……。それでも入りきれないくらい私の人生が、むしろ若かりし日の封印しようと記憶に蓋をしておいたことすらも歌詞になっていたから、びっくりしました。ケンモチさんが、打ち合わせでお話ししたこと以外も私のことを詳しく調べてくださったんだなと思うと、ありがたくて涙が出てきますね。とはいえ、歌詞にある「あくなき探求心」とか「高い歌唱力」とか、自分で言うことになるわけですよ。ああ、どうしよう……。いま横にいるマネージャーが、「新曲のリリースイベントでも歌うから、心の準備を」って言ってるんですけど! 困りましたねぇ……。

でも、この曲は、私が生きた証しでもあります。多分、私の全部の行動の原動力は「芸能界で何かをしたい!」ということよりも、「猫を助けたい」&「生きた証しを残したい」なんですよね。父のこともあって思うのですが、歌って死んだ後もずっと残るから、それこそいちばんの生きた証しになる。私がこの世を去った後の人類が、この曲から「中川翔子という人がいたんだ」と知るかもしれないと思うと、恐れ多くも偉人の仲間入りをしたかのような気分になりますね。

中川翔子として生きてきたことが歌になっていて、私は自己肯定感がずっと低かったけれど、それだとこの曲は歌えないので、「この人生でよかった」と胸を張って歌えるように頑張りたいです。

5月5日生まれ、東京出身。2004年に開設した公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」が大評判となり、アニメ・漫画・特撮・カンフーなどの豊富な知識で大きな話題を集める。2006年に歌手デビューして、翌年「空色デイズ」で「第58回NHK紅白歌合戦」に出場。俳優としてのNHKドラマ出演は、連続テレビ小説「まれ」、ドラマ10「デイジー・ラック」ほか。2011年公開のディズニー映画「塔の上のラプンツェル」(日本語吹替版)では、主人公・ラプンツェルの声を担当。4月には中国・上海での音楽ライブ出演、5月には毎年恒例のバースデーライブ開催も決定している。

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