見るとウキウキ心が弾み、リズムにのっておどりだしたくなるEテレのミニアニメ「チキップダンサーズ」。そこで多くのキャラクターの声を担当している声優・花江夏樹の言葉を手がかりに、改めて作品の魅力を深掘りしていこう。


我が家でも、このアニメが役に立ちました

ちょっぴりチキン(こわがり)だけど好奇心が旺盛な「ほねチキン」や、スキップしながら近づいてくるダンスの先生「スキップガエル先生」といった、個性豊かなキャラクターたちが大活躍しているEテレのミニアニメ「チキップダンサーズ」。2021年10月にスタートして放送を重ねてきたが、9月25日(月曜)からは、いよいよ第3期に突入! 

劇中のナレーションも担当する弓木英梨乃が手がけた新しい主題歌「ボーン! ボーン! ボーン! 」とともに、新キャラクターも次々と登場し、さらにパワーアップした作品世界が展開していく。さまざまなキャラクターの声を、人気声優の花江夏樹と石川由依が2人だけで担当している点は、これまでの放送と同じ。特に花江は、今回の第3期で「ほねチキン」「スキップガエル先生」のほか、新キャラクターを含めて実に8役を演じ分けることになった。

ⓒSan-X/チキップダンサーズおどるん会

軽快なダンス場面やちょっぴりシュールな世界観で大人たちからも絶大な支持を集めているが、その魅力のベースにあるのは、未就学児を中心とする子どもたちが興味を持ち、共感できるような作りになっているところだ。実生活では3歳の双子の父親として子育てに奮闘している花江も、そこに大きな魅力を感じているという。

子どもたちの目線で見てみると、一般的な生活習慣、お風呂に入るとか、歯を磨くとか、そういった身につけていかなければいけない大事なものを、かわいいキャラクターと一緒に学んでいけるところが魅力的だなと思っています。子どもと一緒に楽しく見て、自分たちで取り入れていけるお話が結構あるので、すごくありがたいな、と。
例えば、うちの子どもも最初はお風呂が苦手で、水に濡れると泣いてしまう時期があったのですが、ほねチキンがお風呂に入りたくない「おふろでゴシゴシ」という回を見たときに、音楽に合わせて一緒に「♪ゴシゴシゴシ」と言っていたんですよ。それをお風呂の中でやってみたら、とても楽しそうで、こんなに影響を与えてくれるんだとわかりました。最近は食い入るように、真剣に見てくれています。

ただ、うちの子は、いつも「カエル先生が見たい!」と言ってくるから、作品のタイトルを「カエル先生」だと思っているフシがありますね(笑)。その「カエル先生」を僕が演じていることも教えているのですが、「違うよ、パパじゃないよ」と言われています(笑)。

ⓒSan-X/チキップダンサーズおどるん会

子ども向けアニメに携わっていきたい

かつて子ども向け情報番組「おはスタ」(テレビ東京系)でMCを務め、映画化もされた「鬼滅の刃」シリーズで主人公・竈門炭治郎の声を担当するなど、数多くの代表作で知られる花江。当代きっての人気声優だが、それでも子ども向けミニアニメには積極的に出演している。そこで、さまざまな役を演じることに対して、どんな思いを持っているのだろうか。

お仕事をいただけるのは本当にありがたいことなので、基本的には、極力出演させていただきたい、と……(笑)。僕はアニメが好きで、アフレコが仕事の中でいちばん好きなので、時間の許す限り受け入れるようにしています。子どもが生まれてからは「子ども向けに作られたアニメに携われたら」という自分の中の希望が、より強くなっていて。だから「チキップダンサーズ」のオファーをいただいたときも、すごくうれしかったですね。

5分のアニメなのですが、1話を録るのに(演じているキャラクターの)人数分の収録を繰り返さなくてはならないので、やっぱり大変だなぁとは思います。単純に、セリフの量が多くなるので。ただ、同じ作品の中でキャラクターの演じ分けができるのは役者として贅沢なことだし、それを任せてもらっていることに対して感謝の気持ちと、その期待に応えたいという思いもあります。だから大変だと思いつつも、完成したものが子どもたちに届くところを想像しながら、それをモチベーションにして収録に臨んでいます。

「チキップダンサーズ」が第3期を迎えたことで、制作スタッフとの関係も良好。新しく登場するキャラクターを除けば、声の表現については一任されていることも多く、アドリブも「入れられるところがあれば、入れてみよう」という意識で収録を行っているという。

絶対に毎回入れよう、という気持ちはそれほどないのですが、自分でも何か「いいアイデアを思いついた!」って思ったら、やってみるようにはしています。比較的、「スキップガエル先生」が多いですね。口が動いていないところ、顔が映っていないところ、背中だけのところなどでアドリブを入れています。

「チキップダンサーズ」監督のラレコさんと、以前一緒に仕事した「兄に付ける薬はない!」というアニメの現場が、演者さんがいろいろアドリブを入れられる現場で、ラレコさんの作品ってリハーサルVTRにガイドとしてラレコさん自身が声を入れていて、それこそSEまでラレコさんの声で入れてあるんですよ(笑)。それがかなりおもしろくて、確かに声で表現したほうがおもしろいなと感じるところもあるので、そのアイデアをもとにしてやっているところもあります。

⇒ひとりで8役を演じ分けている花江さんの声色の違いがわかる動画「チキップダンサーズ キャストインタビュー」はこちら
また記事後編では、演じ分ける際の苦労話や、アフレコ収録で感じた第3期ならではの見どころを紹介します!

花江夏樹(はなえ・なつき)
1991年6月26日生まれ、神奈川県出身。2011年に声優デビューして、数多くの作品に主演。大ヒットした「鬼滅の刃」シリーズでは、主人公・竈門炭治郎の声を担当している。NHKでの出演は「ピアノの森」雨宮修平役、「進撃の巨人」ファルコ・グライス役ほか。

「チキップダンサーズ」(3期)
9月25日(月曜)から毎週月曜 Eテレ 午前8:45~8:50

監督:ラレコ
脚本:田辺茂範、ラレコ
ダンス振付:康本雅子
主題歌:「ボーン! ボーン! ボーン! 」作詞・作曲・うた/弓木英梨乃

取材・文・撮影/銅本一谷