「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーをステラnetでも。今回は芳野潔アンカー。

最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』9月号で。

表題の曲は、さだまさしさんが1995年に発表した作品です。さださんは今年歌手デビュー50周年。 歌手としてはもちろん、「今夜も生でさだまさし」をはじめ、昨 年は連続テレビ小説「舞いあがれ!」でナレーションを担当するなど、歌手以外でも大活躍しています。

落研出身でとにかく話がおもしろいさださん。コンサートでは歌よりもトークの時間の方が長いと言われるほどで、ステージのトークだけを集めたアルバムもリリースしています。

今年5月、初めて自分で名刺を作りました。これまでは、会社から支給されてきた名刺。サラリーマン生活は終わりましたが、これからも仕事を続けていくことを見据えてネット注文しました。出来上がってきた名刺は実にシンプル。所属していた団体のロゴがないこともあり、黒文字だけの落ち着いた名刺に仕上がりました。これまで記されていた所属部署や役職、会社の住所や代表電話番号などもないので白地が際立ちます。自分でデザインした名刺の出来栄えに、思わずニヤニヤしてしまいました。

社会人としてスタートした40年前、初めて名刺を手にしたときもこんな気持ちだったのかなあと、ちょっとした感慨もあります。以来、勤務地や所属、肩書が変わるたびに、新しい名刺に交換してきました。ざっと数えて20種類くらいになるでしょうか。

どれほどの名刺を渡してきたかは分かりませんが、いただいた名刺は大事に保管してあります。競技の魅力を教えてくれたスポーツ関係者、酒造りのいろはを教えてくれた蔵元、貴重なお話を聞かせてくれた被爆者、中継ネタに困ったときに泣きついた企業の広報部の方などなど。見返していると、取り組んでいた仕事とともに、社会人としての成長を支えてくださった方々の顔が思い出されます。

さださんの歌では、皮肉と悲哀を込めて〝名前を書いた小さな紙切れ〞と歌われていますが、私にとって名刺は、大切な出会いの履歴になっているのです。

(よしの・きよし 第1・3水曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年7月号に掲載されたものです。

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