「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーをステラnetでも。今回は石澤典夫アンカー。最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』8月号で。

この3月まで「ミッドナイトトーク」でご一緒した岩崎宏美さん。これまで歌番組の歌手と司会者として何度もご一緒しましたが、1つのテーマをもとに毎回2時間近く生放送で語り合うのは初めてでした。

子どものころは盆踊りのやぐらの上で踊ったり、プールや浦島太郎ごっこが大好きな女の子。「スター誕生!」でグランドチャンピオンの座を射止め、高2の春にデビュー! 本当に自分のレコードが売られているか心配で、近所のレコード屋にそっと見に行ったそうです。

宏美さんとは、巨匠といわれた男たちの人生を描くNHKラジオの「アートドラマ」でもご一緒しました。彫刻家ロダンと彼を取り巻く女性にスポットを当てた回で、宏美さんにはロダンが愛した3人の女性を、そして不肖私がロダンを演じました。"俳優・岩崎宏美"の演技の深さを体験しました。

宏美さんにとってのお宝は、お子さんたちからもらった絵や手紙、図工作品。今も大事にとっているそうです。2人の息子さんと離れて暮らした時期もあっただけに「なんでもないことを気軽に話せる息子がいてよかったなぁって思っちゃいます!」と目を潤ませるその表情は1人の幸せな母親の顔でした。

「深夜便」で宏美さんが一瞬、表情を曇らせたときがありました。昨年11月9日。実はこの日の放送の直前に最愛のお母さんが息を引き取りました。曲がかかっている間にフッともらしたという感じで「今日母が亡くなったの」とひと言。曲が終わると何事もなかったかのように話の続きに戻る宏美さん。仕事のプロの厳しい一面を見た思いがしました。

宏美さんが大事にしているひと言があります。それは声の変化で悩んでいたときに野口五郎さんがかけてくれた言葉。「昔の自分と競うのではなく、新しい未来に向けて、"新生・岩崎宏美"として歌えばいいんじゃない?」。尊敬する先輩歌手からのこのひと言が宏美さんの背中をそっと押しました。デビュー48周年、包み込むような深い味わいの歌声で「天まで響け!! 岩崎宏美!」。

(いしざわ・のりお 第2・4水曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年6月号に掲載されたものです。

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