「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーを「ステラnet」でも。今回は松井治伸アンカー。最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』7月号で。

アンカーエッセーを書き始めてから国語辞典を引くことが増えました。書きながら言葉や言い回しが適切か気になると、ページをめくって確認しています。今回冒頭の文章「国語辞典を引く」の「引く」も、調べてみたらちゃんと載っていたので一安心。

最近はワープロソフトにも辞書機能が付いていますが、私は国語辞典が手放せません。知らない言葉に出会えたり、知っている言葉でも別の意味を知ったり。国語辞典は発見の宝庫です。時にはエッセーを書く手が止まってしまって、あれこれパラパラめくっていることも。うーん、はかどらない。

例えば同音異義語。手元の国語辞典で「ほうそう」を見てみると「放送」「法曹」「包装」「疱瘡」「奉送」「芳草」などなど色々ありました。「ほう、そうか! 」などと、つまらぬ駄洒落だじゃれも出たりして(すいません)。

それからおもしろいのが「語釈」です。語釈とはその言葉の説明や解釈のこと。よく引き合いに出される冗談に、「〇〇」という言葉を引いたら「××のこと」とあるので 、「××」を引いたら「〇〇のこと」とあった……。さすがにこんな語釈は載っていませんが、いかに分かりやすく的確に説明するかが国語辞典の腕の見せどころです。

とはいえ、ふだん当たり前に使っている言葉をいざ説明しようとすると、これが難しい。例えば「右」。皆さんはどう説明しますか? 「右は右ですよ」と言いたくもなりますが、そうはいきませんね。そこで、家にある3冊の国語辞典の「右」を引いてみました。するとこれがまた三者三様。それぞれ工夫を凝らした語釈が載っていました。皆さんもよかったらお手元の国語辞典で調べてみてください。「なるほどね」という語釈が載っていると思います。一つの言葉を引くと、また他の言葉を調べたくなる。こうして「言葉の海」の中を漂うのもなかなか楽しいものです。

アンカーエッセーも5年目に入ります。赤の入ったゲラを見るたびに、これからも国語辞典が手放せなくなりそうな私です。

(まつい・はるのぶ 第1・3月曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年5月号に掲載されたものです。

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