特集ドラマ「幸運ななひと」は、夫が「がん」と分かった後の「日常」の物語。仕事のこと、子どものこと……これまで先延ばしにしてきた夫婦が、病気をきっかけに関係を再構築していく。
主演は生田斗真さん、多部未華子さん。

3月6日にNHK-BSP/4Kで放送したこのドラマ。多くの反響を受け、新たに編集を加え、前・後編にして地上波(総合テレビ)で放送します。
※NHKプラスでも1週間配信


【放送情報】
前編 2023年4月4日(火)よる10:00~10:45 総合/BS4K
後編 2023年4月11日(火)よる10:00~10:45 総合/BS4K


【ドラマ制作舞台裏】
2023年4月14日(金)午前0:35~1:05 総合 ※4月13日深夜

舞台裏ドキュメンタリーも放送。このドラマは、夫をがんで亡くした脚本家・吉澤智子さんの体験がベース。タイトルを「幸運なひと」とした理由とは?
生田斗真さん、多部未華子さんが、がん当事者や家族に話を聞いてきた様子とあわせて放送。ドラマとあわせてご覧いただくとリアリティと納得感がさらに高まります。


【ドラマのあらすじ】

拓哉(36)は中学校の保健体育の教師。仕事に力を注ぎすぎ、家では面倒なことは後回し。音楽事務所でミュージシャンのマネージャーをしている妻の咲良(34)は、ようやく自分の夢がかないつつありました。

拓哉のがんがわかったのはそんな時。二人は先送りしてきた問題「子どもを持つかどうか」の選択を突き付けられます。普通の暮らしがどんどんできなくなる2人は「夫に残された時間が子どもを作るタイムリミット」という現実に直面。拓哉は、人生のチャンスをつかみ輝く妻への嫉妬が抑えられず、そんな自分に当
惑していました。

一方、「自分の仕事をセーブして夫に尽くしたほうがいいのか」と悩む咲良は、ある決断をします。がんとわかった後も続く「日常」。これまで、お互いを傷つけないよう気を遣って生きてきた夫婦が、夫のがんをきっかけに、キレイ事なしに向き合って関係を再構築していく物語です。


実体験をもとに脚本を書いた
脚本家 吉澤智子さんコメント

「家事分担してよ」
おそらく日本中の夫婦の間で、日々交わされている不満まじりのこの言葉。今作中でも妻である咲良が夫・拓哉に突きつけます。
ただし、拓哉はがん患者──。
実際夫ががんになった私は、彼を可哀そうに思いつつも正直面倒くさいなと思う時も、私の方が疲れてる時もある。と他人には言えぬ愚痴を、当の本人に呟きました。
がん患者になったからって人生悟って聖人になる訳でも、看病する家族はいつでも献身的な訳でもない。
このドラマはただがんの辛さや悪妻を描いたものでも、美しい闘病記でもありません。
がんのある日常を普通に生きる拓哉と咲良の姿に、人ってわがままで愛おしいなぁと微笑んでいただけたら幸いです。


演出:一木正恵(朝ドラ「おかえりモネ」チーフ演出 ほか)コメント

「あなたも表現者ならユーモアを描きなさいよ」。これは24年前、番組で取り上げたがん患者さんに言われた言葉です。当時の私はがんを感傷的な重い病としか捉えず、その言葉の意味がまるで分かりませんでした。

「幸運なひと」は24年の熟成を経て、ついに辿り着いた夫婦というバディムービーです。一つのことを巡って考えの違いが露呈、すれ違い格闘し、やがて深く理解しあう。「病と闘う」がベースではなく、バディが人間として成長する物語です。病だからって突然高尚な人になるはずがない。エゴをぶつけ合い、前言を翻し、相手をわざと傷つける。人の日常は人に見せられたものじゃない。そんなダメな二人を、こっそり覗いているような感覚で見るのが、このドラマの醍醐味です。生田斗真さん、多部未華子さんは最高の日常を生きてくれています。しょうもない日常をキラキラ輝かせる技こそが「ユーモア」。 今ようやく答えに近づいたところです。


制作統括:上松圭(「あさイチ」チーフプロデューサー)コメント

私は普段、朝の情報番組「あさイチ」を制作しています。これまでがんの当事者やご家族を取材する中で、情報番組ではなかなか伝えられなかったことがありました。それは、がんと分かった後、本人や家族が歩む「日常の暮らし」です。私も6年前に父親を肺がんで亡くしましたが、がんと分かった後の生活は、それまでと変わらず笑いのある日常と、命に向き合うヒリヒリした感覚とが同居していました。このドラマには、当事者にはわかるあるあるが詰まっています。細かな心の動きを「のぞき見」しているように共感していただけると幸いです。

最初、脚本家の吉澤さんから「幸運なひと」というタイトルをご提案いただいたときはドキッとしました。「がん」という言葉の持つ「負」のイメージとのギャップに驚いたからです。「これまで取材したがんの方たちやその家族は“幸運”だったのか?そして、死んだ私の父や残された母はこのタイトルを聞いてどう思うだろうか?」

「幸運なひと」というタイトルは、一つの「問い」だと思います。がんに象徴される病気という「負」に対し、「幸運」だと思う当事者や家族がいるならばそれはなぜか?逆に、「幸運」だと思えないならば、その背景は何か?お金・医療・仕事・人間関係・家族・人生観?それとも自分の中にあるがんへのイメージ?
誰もが病気になるのは避けられません。「負」への向き合い方を考えることは、どう生きるかを考えることにつながります。暮らしの中から、それを考えるきっかけになるとうれしいです。


ドラマに合わせて、NHKでは「がん」について様々な角度から番組を放送予定。

★3月29日(水) 総合 午後10:00 「病院ラジオ 東北大学病院編」

病院に一日限りの出張ラジオ局を開設し、患者や家族の本音を聞いていく「病院ラジオ」。今回は番組MC・サンドウィッチマンのふるさと・宮城県にある東北大学病院が舞台。
声を失った夫と支える妻、緩和ケアを受ける母を見守る夫と娘、余命を告げられた男性など。日ごろ言えない気持ちや感謝の思いにリクエスト曲とともに耳を傾けます。

★4月4日(火)総合 午後10:00 特集ドラマ「幸運なひと」前編

★4月5日(水)総合 午前8:15 「あさイチ」 ※ゲスト:生田斗真さん

テーマはがんの「アピアランスケア」。仕事をしながらがん治療をする人が増える中、抗がん剤による「脱毛」「むくみ」「爪の割れや変色」などをカバーするケアが注目されています。「見た目」をケアし、社会とのつながりを確保することで湧いてくる、不思議な力をお伝えします。

★4月7日(金)総合 「おはよう日本」
テーマは「がん教育最前線」。がんの種類やその治療法など、医学的な知識はもちろんのこと、がんに付随するイメージや認識のアップデートを行う「意識改革」を重視した、「がん教育」の今を伝えます。

★4月11日(火)Eテレ 午後8:00 「ハートネットTV」
テーマは「がんとにんようせい」(妊孕性とは妊娠するために必要な能力のこと)。夫婦ともにがんサバイバーの当事者が初めての出産を迎える貴重な現場を記録。一方で、抗がん剤治療で妊孕性を失った当事者も取材。番組を通して「あなたはひとりじゃない」というメッセージを発信します。

★4月11日(火)総合 午後10:00 特集ドラマ「幸運なひと」後編

★4月13日(木)総合 午前8:15 「あさイチ」
テーマは「家族ががんになったら?」 ドラマの内容を交えながら、当事者・家族の体験をお伝えします。

★4月14日(金)総合 午前0:35 「幸運なひと」ドラマ制作舞台裏 ※4月13日深夜


特集ドラマ「幸運なひと」
【放送予定】
ドラマ本編 前編 4月4日(火) 午後10:00~10:45 総合・BS4K
ドラマ本編 後編 4月11日(火)午後10:00~10:45 総合・BS4K
【 作 】吉澤智子 【 音 楽 】原摩利彦
【 出 演 】生田斗真 多部未華子
西田尚美 加藤諒 相島一之 宮崎美子 山中崇 ほか
【制作統括】上松圭 【プロデューサー】城谷厚司 吉永証 谷紗耶香
【 演 出 】一木正恵