NHK-FMの人気番組「アニソン・アカデミー」で生徒会長(番組MC)を務めている“しょこたん”こと中川翔子さんの連載コラム。今回は、声優を務めたアニメ「伊藤潤二『マニアック』」や、YouTubeでの動画配信について語ります。

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♪トゥットゥル~、中川翔子です。

さて私は、いまNetflixで配信されているアニメ「伊藤潤二『マニアック』」に、声優として参加(#12「耳擦りする女」に出演)させていただいています。伊藤潤二先生とは個人的に仲良くさせていただいていたので、こうしてご縁をいただいて、とにかくうれしかったですね。声を録ったのは去年の3月でしたが、伊藤先生がリモートでアフレコ現場を確認しながらの収録でした。原作者の方が聴いている状態でアフレコする機会はあまりなかったので、緊張しましたけれど。

私は、アニメ作品に出演させていただくとき、だいたい「もっとゆっくりで!」って言われちゃうくらい早口にしゃべってしまうことが、ずっとコンプレックスだったんですよね。でも、今回演じた主人公は、私よりももっと早口で自分の心配事を口にしているキャラクターでした。

「これ、どうしたらいいの?」「座ったらいいの? 立ったらいいの?」「座るなら、どうやって座ったらいいの?」って、ずっと問い続けているような。こんなに早口のアフレコ、初めてだったかもしれません。アニメで声を担当させていただくときに、いつもは私自身のイメージを消そうとしながら挑んでいるのですが、今回は声色こそ使っているけれど、主人公の発言内容にめちゃくちゃ共感しながらのアフレコで。だからなのか、ほとんど1回か2回でOKが出て、それもうれしかったです。

その「伊藤潤二『マニアック』」は配信による公開なのですが、私のアニメ視聴も、今は配信が中心になりました。リアルタイムでテレビを見る時間がなかなか取れないから、移動中とか、メイク中とか、寝る前とか、お風呂に入りながらとか。

私が好きなアニメの見方は、「マッサージを受けながら」。配信だと字幕が出るから、マッサージベッドの顔のところに空いた穴の下にスマホを置いて、マッサージされながら字幕で見る、という。それが幸せな時間ですね。「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」は、そうやって見ていました。コロナ禍の影響もあるのか、最近は配信が充実しているから、すごく助かります。もう、配信で見るのが当たり前の時代になったんじゃないのかな。これが20年前からあってほしかった! 今の子どもたちがうらやましいです。

と言いつつも、「チェンソーマン」の最終回は、リアルタイムで見ましたよ! 私は「芸術的でおしゃれで下品で」という、ものすごく完成された原作が大好きだったので、アニメ化されて“残念”だったらどうしよう……、と心配していたのですが、作画とか演出とかがぶっ飛んでいて、もう最高でしたね。カメラもぐるんぐるん動く中での、光の感じとか表情とか、すごい気合いの入り方で。

しかも、全12回の放送で、エンディングの映像とテーマ曲が毎回変わってた! 「アニアカ」の中でも時々語っていましたが、この時代にぴったり合ったやり方のおかげで、ワンクールでこんなにたくさんの名曲と出会えるってすごいことだな、と思いました。そんなふうに、スタッフさんの熱量が伝わってくる作品は、もう感謝しながら見ちゃうようになりますね。

ところで、私がやりたいことを好き放題にアップしていくYouTubeチャンネル「中川翔子の『ヲ』」は、2月28日現在でチャンネル登録者数が95万人を超えました。いろんな好きなことをやれるのが面白いんですよ。「あ、このラーメン食べたい!」って思ったら、それだけで動画にできるし、いまの愛車に出会えたのもYouTubeのおかげだし。さまざまなコラボをすることで、本当に仲良くなった方たちもいます。ゆきりぬちゃんとか、プライベートでもすごく遊ぶようになったし。

YouTubeって、生きた証しが残るんですよね。芸能活動20周年のメモリアルとして、初めて自分で夏休みをとってハワイに行ったんですけれど、そういうことが映像記録として残せるのが、めちゃくちゃうれしいですね。あとちょっとで100万人!というところまできましたが、数字のことを気にし始めると大変な思いもするだろうから、これからも自分の「好き」を形にすることを第一に考えていきたいと思っています。

もしYouTubeをやっていなかったら……。私はとても狭い世界、閉じた世界にいたんじゃないかと思います。それこそ、もう芸能界から消えていたかもしれない。だってコロナ禍になったときは、テレビのロケとか全部飛んで、「仕事ない、中川翔子もう終わった」と、思っていましたから。

でもYouTubeを始めたら、すごく楽しくなって、かつてブログを書き始めたときのようなキラキラした思いが甦ってきて。たとえば愛車を走らせてると「あ、YouTubeで見た車だ!」みたいに声をかけられたりして、いろんな方が見てくれていることを実感できるんです。たくさんの方に私のことを知っていただけて、出会っていただけて、YouTubeをやって本当によかった。ピンチのときに新しいことを始めるのはすごく怖いけど、新しいことを否定しないで、そこに飛び込んでみる勇気を持つのって、すごく大事なことですよね。そんな積み重ねがあって、私は20周年を迎えられたと思っています。

「チェンソーマン」…“チェンソーの悪魔”に変身する能力を身につけた少年・デンジの活躍を描いた、ダークヒーロー作品。過激な描写や衝撃的な展開が特徴で、多くの熱狂的ファンを獲得している。アニメはMAPPA制作で、2022年10月からテレビ東京系列で放送された。

5月5日生まれ、東京出身。2004年に開設した公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」が大評判となり、アニメ・漫画・特撮・カンフーなどの豊富な知識で大きな話題を集める。2006年に歌手デビューして、翌年「空色デイズ」で「第58回NHK紅白歌合戦」に出場。俳優としてのNHKドラマ出演は、連続テレビ小説「まれ」、ドラマ10「デイジー・ラック」ほか。2011年公開のディズニー映画「塔の上のラプンツェル」(日本語吹替版)では、主人公・ラプンツェルの声を担当。4月には中国・上海での音楽ライブ出演、5月には毎年恒例のバースデーライブ開催も決定している。