皆さん、こんにちは。NHK放送博物館・館長の川村です。
ときの経つのは早いもので、ことしもすでに2月後半。徐々に、春めいてまいりました。ところで、皆さんは、ことしで何歳になられますか?
テレビは、ことしで70歳。テレビ放送が開始されて70年となります。皆さんがお茶の間で親しんできたテレビは、もう“高齢メディア”になりました。

さて、日本のテレビ放送は今から70年前、1953(昭和14)年2月1日に産声をあげました。その節目の年にあわせ、NHK放送博物館では、企画展「テレビ70~「イ」から「Z」へ~」を開催中です。なんか、不思議なタイトル?と思われた方、ぜひ最後までお読みください(笑)。
早速、この企画展の内容を紹介しながら、テレビの黎明期のはなしをしましょう。


日本における「テレビ研究」は世界的にも早く、実用化から遡ること27年前の1926(大正15年/昭和元)年、当時の浜松高等工業学校の研究者だった高柳健次郎氏によって世界初のブラウン管式テレビの実験に成功しています。
まだ日本でラジオ放送が始まって1年しかたっていないのに、すでにテレビの原型ができていたことになりますね。

日本はテレビ研究の先進国たったのです。その後のテレビの普及は、以前皆さんにご紹介したとおりです。
テレビを普及したのは「鉄道」だった!? 放送と鉄道の噺~第1話|館長コラム#5 | ステラnet (steranet.jp)

この時の実験機を復元した模型が、当館3階のヒストリーコーナーに展示されています。この時、初めてブラウン管に映し出されたのが「イ」の文字だったのです。今回の企画展のタイトルの一部はここに由来しています。

NHKでは、1939(昭和14)年に日本初のテレビ公開実験を行いますが、戦争のため研究はいったん中止に追い込まれます。しかし戦後まもなく、研究と実験が再開され、1953(昭和28)年2月1日にテレビ本放送が始まります。この年の12月31日、東京・有楽町の日劇から「第4回紅白歌合戦」がテレビで初放送されました。白黒のアナログ放送です。

今回の企画展ではこのテレビ70年の歴史を、各時代のなつかしい番組の記録写真や資料、一部は動画を通じてご紹介しています。

会場の中心にはテレビ放送黎明期の受像機や取材用カメラなどの機器をはじめ、番組を彩ったキャラクターなどさまざまな展示物が所狭しと並んでいます。

見覚えのあるキャラクターはいましたか?
パネルでは、各時代の出来事を当時の画像を使って紹介しています。

各番組の紹介パネルには、NHKアーカイブスの「テレビ70年」特設サイトを通じて番組動画が見られる二次元コードも掲示されているので、会場で気になる番組があったらぜひチェックしてください。

テレビは70年の歴史を経て、いまや「インターネットとの同時配信」の時代を迎えました。そして、2K、4K、8K放送と、齢70となったいまも進化を続けているのです。

さて、今回の企画展のタイトルは、【TV70~「イ」から「Z」へ~】ということでしたが、この「Z」とは、デジタルネイティブ世代、いわゆる「Z世代」の「Z」を意味しています。

NHK放送博物館では、「イ」から「Z」まで、テレビの歴史をご紹介しています。ご来館いただき、皆さんの人生とともに歩んできたテレビの歴史を振り返ってみてはいかがでしょう。きっと、あの日、あの時の思い出が、こころのブラウン管に映し出されることと思います。

(文・NHK放送博物館 館長 川村 誠)

NHK放送博物館「テレビ放送開始70年企画展TV70~「イ」から「Z」へ~
~2023年4月16日(日)まで開催中 ※休館日は除く
https://www.nhk.or.jp/museum/project/2022/2022122001.html