話題沸騰中の男女逆転・SFファンタジー時代劇「大奥」。これまで、八代将軍吉宗、三代将軍家光の物語が紡がれ、第5回から「五代将軍綱吉・右衛門佐編」がスタートした。
奔放な将軍・綱吉は、大奥だけに留まらず城の外でも男を漁るほどだが、なかなか子を持てずにいて——。今回、徳川綱吉を演じる仲里依紗に、時代劇に初挑戦しての感想や役への思い、そして注目のシーンを聞いた。


――徳川綱吉役のオファーをいただいたときのお気持ちはいかがでしたか?

「大奥」はファンの方が多い作品なので、こんな大役を私で大丈夫だろうかという不安もありました。また役柄の説明には、「美貌と教養を兼ね備えた、徳川幕府5代将軍」と書いてあって。私はこれまで、浮気や不倫をされる、ちょっと残念な役が多かったので、男性陣をちゃんとはぐらかせるかなという不安も(笑)。
原作は5回ぐらい読みましたね。どんどん読み進むほど、おもしろくて。菅野美穂さんが綱吉を演じられた、映画『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』も5回見ました。

――今作が時代劇初挑戦となりますが、発見や驚きなどはありましたか?

撮影前から、所作やセリフ回しなどへの不安があったのですが、現場でもいろいろ戸惑ってしまって。まず畳の縁を踏んじゃだめなことに、びっくり! 肩を動かさずに歩かないといけないことに、さらにびっくり! セリフもイントネーションが独特だったり、難しい用語を使ったりと、すべて1からの勉強なので、通常のドラマより体力を消耗しています(笑)。

ただ、皆が私のことを「上様」と呼んでくれて、命令すれば従ってくれるのは楽しいです。役作りのため、最近では家族にも上様と呼んでもらっていますが、やっぱりいい気持ちになりますね(笑)。綱吉役がもう少しで終わってしまうことがさみしいです。

――そんな綱吉を、仲さんはどのような人物だと捉えていますか?

綱吉は、孤独な人だと思います。奔放な部分も多く、好き勝手生きているように見えるので、町人からは良く思われていません。でも実はそうではなくて、将軍家を背負う責任と、果たすべき使命を全うできていない無力さを感じているんです。強がっているけれど、根はすごく弱い人。心の奥底に孤独を秘めているんですよね。

そんな強がってしまう部分は、自分と近いような気もします(笑)。逆に全然違うと思う部分は、頭の良さ。綱吉は、漢詩などいろんなことを学ぶのがすごく好きなんです。そこから、右衛門佐さん(山本耕史)と惹かれあうことにもなります。「美貌と教養を兼ね備えている」ってすごいなと改めて感じました。

――「子を作らなければ」という綱吉の苦悩は、物語の鍵となりそうです。

そうですね。強い権力を持っている将軍ではありますが、子どもを産むのは女性だから、子どもができないと悪く思われてしまう。本当に大変だなと感じましたし、自分の人生を単に生きるのではなく、次世代のためにも生きる綱吉のことを尊敬します。時代劇ではありますが、今を生きる私たちにも響くものが多くある作品だと思います。

――綱吉を長らく演じて、何か影響を受けたことはありますか?

言葉づかいは影響を受けていますね。江戸時代のことばがはやると、おもしろいですよね。この「大奥」をきっかけに、「面を上げい」「良い面構えじゃ」といった言葉をはやらせたいです(笑)。合コンなどで「良い面構えじゃ」なんて使ったら、おもしろそうですよね。

また今回で、江戸の上様気質が身に沁みついたので…、今後時代劇に出演させていただくときは、「綱吉は最上級の位だったんだ」ということを心にとめて、臨みたいと思います(笑)。

――綱吉は三代将軍・家光(堀田真由)の娘なので、似ている部分もあるように思います。

そうなんです。「真由ちゃんの娘役を演じます」と最初聞いたときは、理解が追いつかなかったのですが(笑)、その家光の芯の強さは、綱吉も受け継いでいるように思いますね。衣装の派手さは、綱吉らしさじゃないでしょうか。私は洋服が好きなので、今回キラキラでかわいい着物をたくさん着ることができてうれしいですね。あと、セットもすごいんです。壁に、蝶や花の模様が施してあって、こんな家に住んでみたいなと憧れました。

――右衛門佐役の山本耕史さん、吉保役の倉科カナさんとの共演はいかがでしたか?

今回、山本さんの存在にとても救われました。たたずまいや動き、セリフの掛け合いなどたくさん勉強させていただきましたし、山本さんがいるだけで、空気も引き締まるんです。また、「いろいろ調べすぎないほうがいいよ」と声をかけていただいて。そのおかげもあり、固くなりすぎずに、リラックスして撮影に臨むことができましたね。

倉科さんが演じる吉保は、とても色っぽくて、これは桂昌院様(竜雷太)もメロメロになるよねと思いました。そして、吉保が抱く綱吉への深い愛が、目に見えないヘビのような感じなんです。綱吉の首元が、吉保に常にぐるぐる絡みつかれていると感じるくらい、倉科さんのお芝居は本当にすばらしくて。ぜひ2人の関係性にも注目してほしいです。

――最後に、視聴者へのメッセージをお願いします!

「綱吉編」は、「吉宗編」「家光編」に増して、お色気がすごいと思います。本当にたくさん美男がそろっているんですよ。そのシーンを見るだけでも楽しめると思います(笑)。その中で、綱吉の苦悩も感じていただけたらうれしいですね。これから、綱吉がどんな決断を下すのか、最後まで見守っていただけたらと思います。

仲里依紗(なか・りいさ)
1989年10月18日生まれ、長崎県出身。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「エール」、「つるかめ助産院〜南の島から〜」「昨夜のカレー、明日のパン」ほか多数。