全貌を明かさないのは作戦?
ついに始まった“大河”級の時代ドラマ

いったい全何回のドラマなのか、一挙放送なのかシーズン方式なのか、はたまたどんな俳優たちが登場するのか……。気になる情報がわずかしか公表されないまま、大型(でないはずがない)時代ドラマが1月10日からスタートした。
ドラマ10「大奥」のことである。

ドラマ10という枠は、以前は女性対象の作品が多い印象があったが、最近はLGBTQを意識したものや冒険志向のエンタメ作品なども増えている。
NHKはこの枠に満を持して「大奥」を投入したわけで、老若男女、こだわり派も娯楽派もマジョリティーからマイノリティーまで満足させられる作品という自信がここに現れているように思える。

原作は、よしながふみ作の同名漫画。
19年前の2004年8月号から少女漫画雑誌での連載がスタート。
2021年2月号まで16年6か月続いた話数は全79話だという。
ストーリーをご存知の方がほとんどだと思うので多くは語らないが、いわゆる江戸城・大奥を舞台にした「男女逆転・SFファンタジー時代劇」。
これまでファンからの強い支持を受けてきたほか、国内では手塚治虫文化賞マンガ賞や日本SF大賞など、ジェンダー理解に貢献した作品に贈られる国際的な文学賞も受賞。国内外で高い評価をされている漫画シリーズなのだ。

10年ほど前、同じ原作で2本の映画のほか民放のドラマが作られていて、当時大きな話題を呼んだことは記憶に新しいが、それらは原作の一部分のみの映像化に留まっている。
対してNHK版は、三代将軍・家光の時代から大政奉還まで、ほぼ原作のストーリーと同じ、江戸時代を通して描くと発表されている。全何回になるのやら?

これって大河ドラマよりもスケールデカくね?
そんな声も聞こえてくるほどの、NHKの力の入れようなのである。漫画と同じ79回は無理だとしても、10回とか15回では終わらないのは間違いない。

近年、江戸城のセット、衣装、かつら、小物などが必要な時代劇は、予算が厳しい民放放送局ではなかなか作れない状況だという。とくに絢爛豪華な大奥を描くには、江戸の町人生活を描くのに比べて桁違いの予算が必要となるはずだ。

だからこそ、これら時代劇の“財産”がふんだんにあるNHKにかかる時代劇ファンの期待は否応なく大きくなるのである。

新旧「大奥」のキャストを見比べて見るとやっぱりワクワク感しかない!

発表された主なキャスト陣もまばゆいくらいに豪華だ。
先に述べた、10年ほど前の映画・ドラマのキャストと比較してみよう。

● 1/10放送「八代将軍吉宗・水野祐之進編 (1)」
NHKドラマ「大奥」映画「大奥」2010
水野祐之進…中島裕翔(Hey! Say! JUMP)二宮和也(当時 嵐)
徳川吉宗…冨永愛柴咲コウ
信 …白石聖堀北真希
松島…橋本淳玉木宏
加納久通…貫地谷しほり和久井映見
杉下…風間俊介阿部サダヲ
藤波…片岡愛之助佐々木蔵之介
柏木 …井上祐貴松島庄汰
村瀬 …石橋蓮司大滝秀治(声)

● 1/17放送「三代将軍家光・万里小路有功編 (2)」
NHKドラマ「大奥」TBSドラマ「大奥〜誕生」2012
万里小路有功…福士蒼汰堺雅人
徳川家光/千恵…堀田真由多部未華子
春日局…斉藤由貴麻生祐未
玉栄…奥智哉田中聖(当時 KAT-TUN)
村瀬…岡山天音尾美としのり
稲葉正勝…眞島秀和平山浩行
和田正隆…佐藤祐基遠藤要
角南重郷…田中幸太朗戸次重幸
勝田頼秀…水間ロン夙川アトム

●放送日未定「五代将軍綱吉・右衛門佐編」
NHKドラマ「大奥」映画「大奥〜永遠」2012
徳川綱吉…仲里依紗菅野美穂
右衛門佐…山本耕史堺雅人
桂昌院…竜雷太西田敏行

NHK版はもちろんだが、先行の映画やドラマも力が入っているねえ。
まさに、大河ドラマに比肩するレベルだ。
「五代将軍綱吉・右衛門佐編」はまだ3名しか発表されていないが、ちなみに映画「大奥〜永遠」のほかのキャストを見てみると……。

尾野真千子(柳沢吉保)、柄本佑(秋本)、要潤(伝兵衛)、桐山漣(大典侍)、竜星涼(新典侍)、満島真之介(佐之助)、堺正章(隆光)、宮藤官九郎(御台所)などなど。

いやあ、すごいですねえ。
今作ではどんな俳優さんが演じるの!? NHKの新たな発表が待ち遠しい。「この役はこの人がいいなあ」などと、予想してみるのも楽しいのでは。発表をわくわくしながらドラマが見られる幸せ。NHKのじらし作戦にまんまとはまっている見太郎なのである。


圧巻の冨永・吉宗、こじらせ堀田・家光にキュン!
期待の仲・綱吉は色気か、狂気か?

さて、これまで2回が放送されて、驚いた。
冨永愛演じる吉宗の威厳と安定感!
堀田真由演じる家光の愛くるしさとこじらせ感のマッチング。

それに対する中島裕翔演じる水野、福士蒼汰演じる有功も負けてはいない。とくに福士君がこれほど時代劇にマッチするとは想像以上だった。「あまちゃん」の頼りない先輩が立派になって、うれしいよ。

最近、時代劇でもコメディ要素がふんだんな作品が多いが、本作はしっかり力技でがっぷりと出演者が組む重厚感がうれしい。もちろんコメディタッチの時代劇も大好きだし、今作も男女が入れ替わるという、とんでもない設定なので、正統派時代劇とはいえないけれど、全体に凛としていて見ていて心地よい。
ストーリー自体、かなり王道なのだ!

長くなったので、それぞれの物語については次回のコラムに譲ろう。
時代劇が少なくなって寂しいとお嘆きのみなさま。
じつは大河ドラマ「どうする家康」とドラマ10「大奥」という、全くタイプの違う2つのすばらしい大作を同時並行で見られる2023年って、結構、うれしすぎる年だと思いませんか? (つづく)