1981(昭和56 )年、ドラマ「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)に出演しスターとなった渡辺徹さんと、1977年、『私の先生』で歌手デビューした榊原郁恵さんは、2022年で結婚35周年。2021年には、「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれたお二人に、ご夫婦や家族の楽しいお話をうかがいました。
聞き手/後藤繁榮
いい夫婦だからいい夫とはかぎらない?
――昨年、「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」に選出されましたね。おめでとうございます。
渡辺 ありがとうございます。いやあ、何だか照れくささが先にありましたね。普通の夫婦なのにと、恐縮しました。
榊原 私はうれしかったです。結婚するとき渡辺が、「みんなに祝福してもらえる夫婦になるよう頑張ろう」と言ったんです。「大勢の方に見守っていただいてるんだ」と頑張ってきたところもありますから「いい夫婦」と言っていただけるのはうれしいですね。
――徹さんは憧れの郁恵さんと結婚なさったんですものね。
渡辺 あんまり言いたくないんですが、高校時代、ファンで。レコードも買ったりね。
榊原 レコードについてくる特典ポスターを部屋に貼ってたって情報もありましたね。
渡辺 うちのおふくろがよけいなことを。黙ってればいいのに……。
榊原 気持ち悪いと思いましたけどね(笑)。
渡辺 気持ち悪いって言うな(笑)。
――今では芸能界を代表するおしどり夫婦と言われるようになって。
渡辺 おしどり夫婦という実感はないんですよ。あっちへぶつかりこっちへぶつかり、一緒に笑ったり怒ったりを繰り返してきましたから。おしどり夫婦って言われると、なんかハードルが高くてね。それにそういうレッテルを貼られると、うかつに楽しいところに飲みに行けないしね。
――楽しい?
渡辺 いやあの、楽しいっていうのは、具体的なことはちょっとこっちに置いといて……。
榊原 そうですか、いいですねえ。まあ夜の蝶のように羽ばたくときもおありでしょうね。
――郁恵さん、ずいぶんと懐が深い。
渡辺 そう、女房の懐が深いからここまでやってこられたんです。「パートナー・オブ・ザ・イヤー」の授賞式でも、俺は「いい夫婦だからいい亭主とはかぎりません。受賞は女房のおかげです」と申し上げましたから。
榊原 家でそんなことを言ったんですよ。だから「それはいい言葉ね、ぜひとも授賞式で言うといいじゃない」って。
渡辺 あのね、今優しく言いましたけど、平たく言うと「それは必ず言え」と。
――それでちゃんとおっしゃった。
榊原 でもね、授賞式の朝、同居する私の母に、「お母さんのおかげでこの日を迎えることができました。ありがとうございます」って。そういう言葉って照れくさくて言わないじゃないですか。だけど言われればすごく気分がいいしうれしい。母だってその言葉で、自分は役に立ててたんだなと思えるんですよね。なので夜の蝶になって、いろんなところに行っても、「おかえりなさい」ってね(笑)。
互いの両親への感謝を忘れずに
――徹さんからの「ありがとう」は、お母様にとってうれしい言葉だったでしょうね。
渡辺 それはお互いさまなんですよ。うちのおやじとおふくろは亡くなって久しいですけど、晩年は田舎で二人暮らしでね。おふくろが具合を悪くしたときとか、女房が子どもたちを連れて、仕事で不在の俺に黙って世話しに行ってくれることもあったんです。
――そういうご夫婦の愛情が、お二人の息子さんにも十分伝わってるんでしょうね。渡辺家では、お孫さんもおばあちゃんに対する優しい気持ちがあふれてるんですよね。
榊原 子育ては私たち二人だけが頑張ったわけじゃない、渡辺と榊原の両方の親にどれだけ世話になったかと。そういう感謝はなかなか言葉には出せないんだけど、渡辺徹さんという人は、大事なところでひと言言うんですよ。そこがすごいなって思うんです。
渡辺 小・中・高校と生徒会長でしたから、ポイントポイントのあいさつはうまいことね。
榊原 そうなのよね、幼稚園のときもね……。
渡辺 〝渡良瀬川の水もぬるみ土手の芝も一斉に芽を吹き始めるこの三月〞。幼稚園の卒園会の答辞でこれをやりましたからね。
――幼稚園(笑)。
渡辺 ちなみに小・中・高校の卒業式の送辞、答辞の出だしも。
榊原 全部これだったのよね。
(後編はこちらから)
構成/小林麻子(トリア)
(月刊誌『ラジオ深夜便 』2022年4月号より)
購入・定期購読はこちら
12月号のおすすめ記事👇
▼前しか向かない、だから元気! 池畑慎之介
▼闘う現代美術家 村上隆の世界
▼毎日が終活 菊田あや子
▼深い呼吸で心を穏やかに 本間生夫 ほか