○MC:田村淳
〇ゲスト:大久保佳代子、影山拓也(IMPACTors/ジャニーズJr.)、青木歌音

○ナレーター:水瀬いのり

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2022年5月に、産後11か月でリングに上がり、WBO女子世界スーパー・フライ級チャンピオンとなったプロボクサーの小澤瑶生たまおさん。彼女のお相手は、世界各地の民族音楽を取り入れた独自のスタイルでバンド活動も行っている、ピアニストの岸本良平さんだ。いったい2人は、どうしてカップルに?

こちらは2人の「なれそめ」を語るのに欠かせない、「なれそメモ」! 


▶出会い>>数々の彼女と…

プロのボクサーながら、ボクシングだけでは食べていけなかった瑶生さん。彼女は収入を得るために、音楽を聴きながら食事を楽しめる会員制の店で、フロアスタッフとして働いていた。その店にピアニストとして入ってきた良平さん。彼に対する瑶生さんの最初の印象は、「モテる人」だったという。

瑶生「気がついたら“彼女”がかわってた、みたいなことがあって、モテる人やな、と。で、私の試合の応援をしに来てくれたり……」

良平「(瑶生さんの)初めての世界タイトルマッチを、僕は当時付き合っていた彼女と見に行ったんです」
田村「そうなんだ」
良平「その試合は、残念ながら負けちゃったんですけど、次の日も店に出てきたんですね。もう顔がお岩さんみたいにボコッと腫れあがっていて。ちょっと引きましたね」
田村「その状態で働くんだねぇ」
良平「何でそこまでして(ボクシングを)やるんかな?と、そのときは思ったんですけれど、よく考えたら僕もピアノを弾いたり、好きなことをやっているので。彼女は彼女で好きなことをやってるんやな、と
田村「瑶生さんは世界戦で負けて、『次もう1回やってやる!』みたいなところだから、恋愛しようとは思ってないですよね?」

瑶生まったく思っていなかったですね
大久保「(お互いに対する恋愛感情が)00ゼロゼロですか? 00から1って、生まれるのかな?」
瑶生「ねぇ。何があったんですかね(笑)」


▶告白>>5年目、バーでいきなり●を

出会いから5年、同じ職場で働く仕事のパートナーとして関係を深めていた瑶生さんと良平さん。瑶生さんはフロアスタッフのリーダー的な役割を任され、良平さんはバンドマスターとして、それぞれ多忙な日々を送っていた。

良平「めちゃくちゃ仕事が忙しくて、ちょっと相談しないと大変やな、と」
田村「連携をとらないと、お店の世界観を維持できなくなるから」
瑶生「協力しないと大変というときに、ご飯を食べに行って、仕事の話をして。『盛り上がったし、もう一軒行こうか』となって、そこで恋愛観とか結婚観とか……」
田村「二軒め、ずいぶん話の内容が変わりましたね」
良平「そもそも(瑶生さんが)男性とお付き合いしたい人なのかすら、よくわからなくて。盆と正月、日曜以外は、週6日毎日ジムへ行って、ずっと練習している人やったんですよ。どんな結婚観を持ってるのか、すごく興味があって
瑶生「そういう話をしていたら、お互い『すごくわかる』『むっちゃ合うなぁ』となって。それで気づいたら、なんか私の手を持っていて
田村「え? 展開が早いな」
瑶生「……『彼女は?』っていう」
田村「そのとき彼女いたんですか!? ほな、アカンやん!(笑)」
影山「良平さん、モテていたわけじゃないですか。数々の彼女がいらして。僕が瑶生さんの立場だったら、もしかしたら自分もそのうちの1人になってしまうかもしれない、と思っちゃうんですよ」
青木「私も、その軍団の女性の1人みたいな、不安で仕方がない気がするんですけど」
瑶生「そのときはそれで話が終わったんですけど、しばらくして『彼女としっかり話をして別れてきた』と」
田村「えー、急に誠実。どうしたんだ? 良平さん」

良平「そのときお付き合いしていたのは、もっと若い彼女だったんですけれど、その子は大きな夢を持っていたので、僕と結婚するよりも自分の夢を追いかけてほしいと話しました」
瑶生彼女としっかり話し合って、相手のことも考えた結果、こうしましたと言ってくれたので、ちゃんと人のことを大事にする人だなというふうに思いました。なんか(良平さんは)結婚相手をずっと探していた、という感じなんですよね」
田村「なるほど」
瑶生「その良平が『結婚したい』と言うのなら、大丈夫かな、と」
田村「お付き合いはしていないけれど、人間としての確認のし合いは、仕事を通じてしていたってことですよね」
青木「新しいですね」
良平「お互いに忙しすぎて、お付き合いするぐらいだったら、一緒に住もうか、結婚しようか、みたいな話になって」
田村「そう、トントンだ」
影山「よくわからないです……。頭が追いついてないです」
田村「追いつかないけど、先に進むね(笑)」
全員 (笑)

田村「そんな2人の絆が深まる出来事があったそうです。それが『ドイツ』。何があったんですか? ドイツで」
瑶生「2回目の世界戦のチャンスが来て、タイトルマッチで私がドイツへ行ったんです。年齢も30を超えていて、私の中では、これがラストチャンス。絶対に(チャンピオンになるという)夢をかなえるつもりで行ったのに、負けてしまって。試合が終わってホテルに帰って、まず最初に(良平さんに)電話して『アカンかったわ』って言って……。自分の中では『やめる』『これで終わった』と思いながら電話していたんですけど、良平が『頑張るんやったら応援するよ』と言ってくれたんです。『絶対できるから諦めるな!』みたいな感じではなくて、私がどうしたいのか、答えが出るまで付き合ってくれたんですよね。で、話しているうちに『私は、まだやりたいんやな』と

田村「気づかされたんだ。やめようと考えていたのに」
良平「僕も試合をインターネットで見ていて、ものすごく残念な、悔しい気持ちになりましたけれど、本人がいちばん悔しいだろうし。『負けたからやめます』ではなく、自分の中に『もう一度チャレンジしたい』という気持ちがあるなら、そうしてほしいと思いました。もし、次にそういうチャンスがあったら、絶対にチャンピオンになれるように応援したいと思いました
田村「チャレンジしてほしいという希望を伝えるんじゃなくて、頑張るんだったら支えるよ、ということを言葉にしたんだ」
大久保「今、きょういちばんポイントが上がりました」
影山「やっと理解が追いつきました」
大久保「酔って手を握っちゃったから結婚しました、みたいな話じゃないのね?」
田村「そういう話じゃないです」
全員 (笑)


▶結婚>>ライバルが現れて

多くの人に祝福されて、2人は結婚。その後、瑶生さんは3連勝し、再び世界戦が視野に入ってきた。一方、良平さんも、インドやイタリア、ベトナムなど、海外で精力的に音楽活動を展開。そんな中、2020年8月に瑶生さんの妊娠がわかった。

田村「3連勝して世界が見えてきた中の妊娠。子どもができるのは、めでたいことですけど」
瑶生「もう1回どうしても挑戦したいし、頑張るぞっていうときだったのですけど、子どもがほしいという気持ちもあって。本当に迷ったけれど、『じゃあ、産んで戻るか』
大久保「すごい決意」
瑶生「で、無事に生まれてきてくれたんですけど、実際に産んでみたら、もう毎日初めての育児で、寝る時間もなくて」
田村「(赤ちゃんが)夜中に起きるからね」
良平「こんなに寝ない生き物か!みたいな」
田村「そんな中で『ライバルが現れて』」
青木「何のライバル?」
大久保「もうひと悶着があります? これ」
青木「ダメダメダメ」

瑶生「これはですね、産後4か月のときに、世界戦のオファーが」
田村「えっ!?」
瑶生「チャンピオンからオファーが届きました」

田村「でも出産後4か月で、体は何もしてない状況ですよね?」
瑶生「何もしてないし、寝れてもいないし。無理じゃないかと思って、しばらく悩んでいたんです。やっぱり子どもを育てながらは自信がないし、どうなるかわかんないし、って思っていたら、良平が『頭で考えてできるかできないかじゃなくて、できることから始めてみよう』と言ってくれたんですね
大久保「良平~!」
田村「尻上がりに、いいですねぇ」
瑶生「それを聞いて、そやな、と思って。『私、どっちもしたいんやな』というのを、また気づかしてもらったというか
良平やっぱり悩むということは、本当はきっとやりたいんだろうなと、そのときも思いましたし。『絶対に勝ってほしい』と言うのも、ちょっと違うかな、と思って。それでも、やる以上は勝てるような状況を作ってもらってチャレンジしてほしいな、と」
青木「良平さんが、瑶生さんにボクシングで勝ってほしいという気持ちが芽生えたのって、どのタイミングからだったんですか?」
田村「自分ごとのようにね。世界を獲ってほしいって」
良平「僕も音楽とか、自分のやりたいことをやっていて、同じように自分の夢に向かって頑張っている彼女を見ていて、すごく自分のことみたいに思っちゃうんですよね
瑶生「その気持ちがあって、私も決断できて。子どもにも、私が出産を選ぶことでボクシングを諦めたと思ってほしくないし、私自身がそう思って後悔するのも嫌だし。だったら、産後にチャンピオンになるほうが難しいけれど、より大きな目標を目指そう、と

田村「母ちゃん、すげぇ~。そのときに良平さんは?」
良平「彼女に練習に行ってもらうと、子どもの面倒をみる人がいなくなるので、僕は外に出る仕事を全部断って」
田村「え? 世界に出てバンドをやっていた人が、家だけで音楽をやる?」
良平「(オンラインで)音楽教室を作ったり、アーティストのプロデュースをしたり」
田村「支援モードに切り替えたんですね」
影山「すごいですよね。良平さんも自分の人生がある中で、それを全部瑶生さんに捧げる、見守ってあげる、その懐の大きさは、カッコいいなと思いますね」
田村「家族で戦っている感じがするよね」

産後11か月で迎えた世界タイトルマッチ。見違えるような体に仕上げ、3度めの世界戦に挑んだ瑶生さんは、最終ラウンドまで、チャンピオンと強烈なパンチを応酬。判定の結果、見事に新チャンピオンに輝いた。

田村「いやぁ、母ちゃん世界一になりましたよ!」
影山「(試合の映像を見て)めちゃめちゃ元気をもらいました。何か『不可能なことってないんだな』『支えるって、こういうことなんだな』って感じました」
田村「いろんな感情が、リングの上であふれたでしょうね」
瑶生「本当に今回の挑戦って絶対私だけではできなくて、主人と息子がいちばん頑張ってくれたんですけど、それ以外にも主人の両親とか、地域の方にもちょっと預けたりして。そういうことがなかったら、たぶんやめていたんじゃないかとすごく実感していたので『人を動かすのは、やっぱり人の力だな』と本当に感じました
良平「子どもも含めてなんですけれど、みんな頑張っていたので。うちの子、それまで夜泣きがすごかったんですけど、試合の2週間くらい前になったら、急に泣かなくなって」
瑶生「それが、試合が終わった途端、もう私から離れなくなって」
大久保「我慢してたのかな」
瑶生「だから、いちばん頑張ったのは息子だなって思います」


▶現在>>心地よい不協和音

現在、良平さんは音楽活動を本格的に再開。音楽イベントを開催するなど、活躍の場を広げている。そのライブ映像を編集するのは、瑶生さんだ。映像の編集作業はまったく未経験だったが、良平さんの手伝いになることをしたいと取り組み、その作業におもしろさを感じているという。

瑶生「私は本当に『世界を獲らせてもらった』と思っているので、今度は思いっきりやりたいことをしてほしいなぁ、と。別に、音楽で成功してほしいとか、絶対にこうなってほしい、と思っているわけではないんですけれど。まぁ、ダメならダメで、サバイバル生活でもすればいいかなと思っています
田村「瑶生さんはできそうだけど、良平さんができそうにない(笑)」
大久保「お互いがお互いのことを本当に尊重して、気持ちよくやらせてあげようっていう、そんな人間がいるんですね。そんなパートナー関係あるんだ……」

田村「この『心地よい不協和音』というのは? 不協和音って、心地よくなさそうですけれど」
良平「僕たち夫婦、すごく違うところもたくさんあって、でも違うからダメっていうわけじゃなくて。そういうところがあるから、逆に気持ちいい部分がもっと見つけられるというか。尊重し合いながら受け入れる、っていうのが大事なのかなと思っています

田村「そのあたり、瑶生さんはどう感じてますか?」
瑶生「相手が何をしたいかということを大事にして、『手伝うよ』という感じで寄り添ってくれるのは、パートナーとして、すごく心地がよいなぁと思ってます


▶▶2人にとって“超多様性”とは?

瑶生「自分で限界を決めないということです」

良平「押しつけないで寄り添うということかなと思います」


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