新・介護百人一首

会いたいと
忍び泣く母
励まして
涙を拭きたい
画面越しにも

広島県富田加奈子 44歳)

愛知県 匿名希望
愛知県 ペンネーム おだまき
愛知県 鈴木琴音

詞書

特養でも面会が制限されています。オンライン面会での母娘の様子、思いあう心を詠みました。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

オンラインで仕事も飲み会もできる。しかしそれで本当に平気なのかどうか、この歌を読むとわかる。顔が見られて声が聞けて、それ以外に無意識のうちに匂いもかいでいて、あたたかさがあって、しゃべらずとも時間を過ごせるのが、実際に「会う」ということだろう。画面でも全く会えないよりはよいし、できることを粛々とやっていくのが大事だと思うけれども、平たさと冷たさと、ぷっつり面会が終了してしまう、残念さが伝わる。

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2021年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。