新・介護百人一首

ひもすがら
微睡まどろおうな
そばに寄り
亀の甲羅の
ごとき爪切る

山梨県角田好弘 68歳)

詞書

施設で働いているが、何もしなくても爪だけは伸びるんだと寝たきりの老女が教えてくれた。注意深く見るようになった。

感想コメントをいただきました

渡邊あゆみ(わたなべ・あゆみ)

かつてはその足で闊歩し、日々を忙しく過ごしていたであろうおばあさん。亀甲を想わせる硬い爪をもはや自分で切ることはできないのですね。爪や髪が伸びるという生(せい)の証を見守る介護士の眼差しはやがて老いる我が身をも見ているのでしょう。加齢とはどういうことなのか、介護の現場は気付かせてくれます。68歳というこの男性も、幼い頃は母に柔らかい爪をそうっと切ってもらっていたことでしょう。

渡邊あゆみ(わたなべ・あゆみ)

アナウンサー。NHK放送研修センター所属。横浜市出身。「おはよう日本」「生活ほっとモーニング」「歴史秘話ヒストリア」など、数多くの番組でキャスターや司会、ナレーションを担当。現在「プレミアムカフェ」(BSP)司会、「ラジオ深夜便」(ラジオ第1)アンカー。