新・介護百人一首

シャツの背を
ズボンに押し込む
ひまもなく
廊下を走る
若き介護士

大阪府平良りヱ子 92歳)

愛知県 佐藤秀義

詞書

ホームに勤務する男性の介護士ですが、いつもズボンからシャツがはみ出していて、注意していますが、そのまま忙しく飛び回っている。やさしい温かい活動的な青年です。

感想コメントをいただきました

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)

人は仕事に夢中になってしまうと、それ以外のことはすべて忘れてしまう。仕事に没入するあまり服装のことを気にしていない青年に、心温まる思いと好感を抱いている様子が伝わってきます。この歌をよんだ方も、かつてはそのように夢中になってかけまわる人だったのかもしれません。だからこそ、今、青春のまっただなかにいるその人生の「ひととき」のかけがえのなさもわかり、こうして言葉で多くの人に伝えることができるのではないでしょうか。

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究。文芸評論、美術評論などにも取り組む。NHKでは、〈プロフェッショナル 仕事の流儀〉キャスターほか、多くの番組に出演。