新・介護百人一首

入院の
決まりし父の
背をさする
そうだよ父さん
洋子の手だよ

長崎県北原俊紀 59歳)

愛知県 久木野円奏
愛知県 ペンネーム 鈴木

詞書

自宅療養していた妻の父が急に入院することになり会いに行きました。その時の妻の様子を歌いました。ずっと父の背中をさすっていました。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

どうしたらいいという対策がとれない時、人間は最大のストレスを感じる。治るという保証もなく言葉にならない感情がお腹から上ってくる。お父さまも奥さまも簡単に言葉を交わせなかったかもしれない。そんな時でも互いを触ることはできる。言葉はかけられなくても、動揺していても、相手に自分の存在をあたたかい温度を通して知らせることができる。出口なく膨らんでいく感情を吸収しようとする手が見つめられている。

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2021年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。