新・介護百人一首

コロナ禍で
つまは家族に
会いたいと
乱れた文字が
絶筆となる

埼玉県大野一与 80歳)

埼玉県 金今詩織

詞書

コロナ禍の中での入院は会えないつらさで泣きました。急変で話も出来ないまま、黄泉よみに逝ってしまい、あとからみたメモで、乱れた文字に胸がつぶれる思いでした。

感想コメントをいただきました

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

平安の歌人在原業平は「ついにゆく道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思わざりしを」と歌った。突然予想外に病や災害がやってきて挨拶もできないで、相手にも自分にも会いたい思いが続いているのに、思いもかけずに断絶される。それは人生の真実なのかもしれないけれど、今のコロナ禍では家族も面会が許されないままに人が亡くなってしまう。生命を守ることは大事だが、そうすることで心の方が締め出されてしまっている現実を、これほど考えさせられる歌はないと思った。

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)

脳科学者。2007年東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(学術博士)。専門は自意識と感情。2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断される。母親の「その人らしさ」は認知症によって本当に変わってしまうのだろうか?という疑問を持ち、生活の中で認知症を脳科学者として分析、2018年に『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社)を出版。認知症になっても変わらない「その人」があると結論づける。NHK「クローズアップ現代+」、NHKエデュケーショナル「ハートネットTV」に出演。2021年には、母親に限らず、認知症についてのさまざまな「なぜ?」に対して脳科学的に解説する『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規。ソーシャルワーカー・永島徹との共著)を出版。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学非常勤講師。