新・介護百人一首

がゆ
顔がうつると
嫌ひたり
今日より全粥
箸立つとつま

三重県室谷益子 94歳)

詞書

米寿過ぎの主人が胃癌で帰らぬ人となりました。これは闘病中にあった事です。

感想コメントをいただきました

渡邊あゆみ(わたなべ・あゆみ)

最期まで残る欲求が「食べる」という楽しみなのだと思います。胃癌を患った方の家族は食に気を遣いますよね。五分粥にされたのは奥様の心遣いでしょう。でも、粥汁にやつれた顔が映ることをお連れ合いは悲しんだのかもしれません。米粒の輝く全粥は病が癒えたようで、希望だったのかもしれません。闘病中にも笑顔を交わす瞬間があったこと、ご夫婦の大切な思い出ですね。

渡邊あゆみ(わたなべ・あゆみ)

アナウンサー。NHK放送研修センター所属。横浜市出身。「おはよう日本」「生活ほっとモーニング」「歴史秘話ヒストリア」など、数多くの番組でキャスターや司会、ナレーションを担当。現在「プレミアムカフェ」(BSP)司会、「ラジオ深夜便」(ラジオ第1)アンカー。