10月から放送がスタートした連続テレビ小説「舞いあがれ!」。東大阪、長崎・五島列島を舞台に、空を見上げて飛ぶことをあきらめないヒロインの岩倉舞が、さまざまな困難にも負けずに、夢に向かって突き進む物語。なぜ今、空へのあこがれを持つヒロインの物語なのか、そしてヒロインを演じる福原遥さんの魅力について、制作統括・熊野律時さんに聞いた。

なぜ、空へのあこがれを持つヒロインなのか?

熊野 「舞いあがれ!」のキャッチコピーは「向かい風を受けてこそ空高く飛べる!」。この言葉通り、ヒロイン・岩倉舞は、多くの困難や逆境にぶつかりながらも、一歩一歩前に進んでいきます。また舞はなんでも自分一人で頑張るのではなく、家族や友人などと手を取り合って、共に成長していくキャラクター。人の気持ちを察するのが得意な舞だからこそ、関わっていく仲間の思いを大事にしながら夢に向かっていきます。そんな舞の成長物語をこれから見守っていただけたらうれしく思います。

そもそも、なぜ空へのあこがれを持つヒロインなのかといいますと、最初に脚本の桑原亮子さんと「どんなヒロインにしましょうか」とご相談したとき、桑原さんが飛行機好きなこともあり、「空を飛ぶことを目指す物語」が、前向きな希望を与えられるのではというお話になりました。

コロナ禍で自由に行き来できなくなった時期も経験した今、飛行機での移動は当たり前ではなく、実はすごく特別なことだと感じていて。また、飛行機を操縦することは常に危険と隣り合わせ。決して簡単なことではありません。それでも「大空を飛ぶ」という夢をかなえるため、先人たちが多くの失敗と挑戦を繰り返した結果、今の飛行機がある――。
そういったことを考えていくなかで、大空に飛び立とうとするヒロインの姿は、いまの時代に非常に力のあるメッセージになると思いました。


日だまりのような福原遥とヒロイン・舞

熊野 舞は、福原遥さんにピッタリのキャラクターだと感じていて。先頭に立って引っ張るタイプではなく、困難にぶつかったときには、周囲の人たちの思いを推しはかり、一緒に考えながら前に進んでいくようなヒロイン。そういう意味では、福原さんも舞のようなタイプの方かなと思っています。

柔らかく温かい空気をまとっている福原さんは、共演者の方ともすぐに打ち解けて。「『舞いあがれ!』を一緒に楽しく作っていこう」という思いが、現場全体に伝わっているように感じます。引っ張っていくというよりは、福原さんという“温かい日だまり”のもとに、みんなが集まってくるような空気感があるんです。これが、福原さんの大きな魅力のひとつ。まさに今回のヒロイン像を体現しているように思います。


ばらもん凧がヒロインの成長を語る!?

熊野 舞は、空高く舞いあがる「ばらもん凧(五島列島に古くから伝わる凧)」に魅了されたことから、パイロットになる夢をふくらませるようになります。そのばらもん凧は、今作のシンボルのひとつ。調べていくと、子どものすこやかな成長を願って、ばらもん凧をあげる風習があることを知りました。一方、凧は向かい風を受けないと、空高く浮かぶことができません。ヒロインの成長をしっかりと描いていく今作の象徴として、本当にピッタリだと思っています。

そんなばらもん凧を今作の「語り」にしました。声を担当するのは、長崎県出身のシンガー・ソングライター、さだまさしさんです。最後までヒロインを優しく見守ってもらいたいという思いから、とても柔らかくて優しい語り口である、さださんにお願いしました。これからさまざまな困難にぶつかっていく舞ですが、ばらもん凧と一緒に、舞の成長を最後まで温かく見ていただけたらうれしいです。