これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
「私は翌日」「私は2日後」と、筋肉痛がやってくるスピードで若さを競いがちな大人の皆さん。その根拠、実ははっきりしないそうですよ。詳しく紹介します!

答え:1日かけて移動した物質が痛みを感じさせるから

詳しく教えてくれたのは、人間の筋肉の働きを研究している 早稲田大学の川上泰雄教授。

筋肉痛のメカニズムは、まだ十分に解明されてはいないものの、「運動で傷ついた筋肉を治すときに生じる痛み=筋肉痛」という説が有力だと言います。

筋肉は、細長いせんがたくさん集まってできていますが、慣れない運動をするなどして負荷がかかると、この線維に傷が発生。
これを治すために、まわりの毛細血管などから、白血球やタンパク質などいろいろな成分が集まってきます。このときに起こる反応が「炎症」です。

炎症が起こると、白血球などが線維の傷ついた部分を一度壊して、新しく作り直します。この過程で、痛みのもとになる「刺激物質」が生まれます。

運動によって傷ついた筋肉を治すために集まった成分によって「炎症」が起き、「刺激物質」 が発生。しかし、ここには痛みを感じる神経がないため、痛くない。

ところが、筋肉の中には、痛みを感じる神経がないため、この時点ではまだ筋肉痛は感じられません。実は、私たちの体には、刺激物質を筋肉の外側に運び出す働きがあります。

そこで、刺激物質は1〜2日かけて筋肉を覆う膜「筋膜」へと運ばれます。ここには、痛みを感じるセンサーがあります。

刺激物質は、1〜2日かけてゆっくり体内を移動する。やがて痛みセンサーのある筋膜まで到達すると、痛みを感じるように。これが筋肉痛の正体と言われている。

つまり、刺激物質が筋膜に到達して初めて、私たちの体は痛みを感じる。これが、筋肉痛が少し遅れてやってくる理由です。

(NHKウイークリーステラ 2021年12月10日号より)