古今東西の名著を、25分×4回=100分で読み解く教養番組、Eテレ「100分de名著」。8月の放送は「for ティーンズ」と題し、10代に向けて4つの名著を届ける夏休みスペシャル。今回司会を務めるのは、俳優、作家、タレントとしてマルチに活躍する加藤シゲアキさん。番組の見どころや10代におすすめしたい本を加藤さんに伺いました。

「100分de名著 for ティーンズ」Eテレ 午後10:25
8/1(月)放送 第1回:トルストイ『人は何で生きるか』
8/8(月)放送 第2回:ポール・ナース『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』
8/15(月)放送 第3回:バルファキス『父が娘に語る経済の話。』
8/22(月)放送 第4回:『竹取物語』
司会:加藤シゲアキ、安部みちこアナウンサー
生徒役ゲスト:鈴木福(第1,2回)、本田望結(第3,4回)

「4つの名著」すべて読んでほしい!

今回、10代に向けた名著ということで、どれも分かりやすく、味わい深さも感じられる作品だと思います。何より今回、司会を務めさせていただき、とても楽しい時間で、知識を得る喜びを実感しました。

4作品どれも面白かったですね。トルストイ『人は何で生きるか』は、小説というより神話のような物語で分かりやすい。作品に込められたメッセージを、「100分de名著」ならではの読み解きで、深掘りしていきます。また今、世界的に不安定な情勢の中、非暴力主義を掲げるトルストイの名著を読むことは、とても意味のあることだと思います。

第1回の生徒役ゲストとして鈴木福、そして講師を若松英輔が務める。

ポール・ナース『生命とは何か』は、個人的に興味を持った作品です。自著『オルタネート』がメンデルの話から物語が始まるように、僕は生物の進化の話などをよく小説に入れ込むんです。細胞の話が、遺伝子学などにも通じているのがすごく興味深くて。生物学っておもろいなと改めて感じました。

バルファキス『父が娘に語る経済の話。』は、経済学に関する物語。生物学や経済学は、10代はなかなか食指が動かない分野かもしれませんが、これらの学問で得られる知識は、まったく他人事ではありません。「これはおもしろい考え方だ!」と気づきを得られることもたくさんあると思うので、ぜひ興味をもっていただけたらうれしいですね。

『竹取物語』は、おそらくほとんどの方が内容を知っていると思いますが、改めて読み返すと、とても面白かったです! 指南役の木ノ下裕一さんが「小説を読むことでしかできない体験」とおっしゃっていましたがその通りだなと。名著と呼ばれるものは、それなりの理由があることを改めて実感しました。


自分に刺さる本との出会いは「運」

僕が本を好きになったのは大学生のころ。読書好きな人が周りに多く、面白い本をいろいろ教えてもらっているうちに、読書の幅が広がったんです。「100分de名著」が放送されていたら、もっと早く本を好きになれたのにと思います(笑)。

いちばん好きな本は、『キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑で捕まえて)』。

『グレート・ギャツビー』や『ティファニーで朝食を』もそうですが、村上春樹さん翻訳の海外小説が好きなんです。村上さんの訳は分かりやすく、文体のリズムも心地よくて。

その中でも『キャッチャー・イン・ザ・ライ』には、すごく感情移入ができました。作品内で描かれる、心の中ではモヤモヤしているけど、誰とも共有できない、苦しみのような感情に共感できたんですね。なんでこんなに自分の気持ちがわかるんだろうと思うと同時に、この作品に「救われた」ようにも感じられて。そんな体験を与えてくれる本と出会えることは、本当にすばらしいことですよね。

そういう“自分に刺さる”本との出会いは、本当に「運」だと思います。だからこそたくさん本を読むことが大事なんでしょうね。
ですので、10代の皆さんにどのくらい刺さるかどうかはわかりませんが、僕が今おすすめしたい本は、エーリッヒ・フロムの『愛するということ』です。

小説ではなく、哲学書寄りの本で、少し難しい部分もありますが、タイトル通り「愛とは何か」について考えさせられる内容。愛について、ひいては人生をどう生きるか、考えを深めるヒントをくれる本。10代のうちに、少しでもそういったことを考えるのもいいなと思うので、興味を持っていただけたら、ぜひ読んでいただきたいです。

若い方に、本を楽しんで読むためのアドバイスですか……。これは本当に「100分de名著」を見ることだと思います(笑)。

僕の周りでも「100分de名著」を見て、本を読むことが増えた人もいます。名著のそれぞれの面白いポイントを端的に説明してくれますし、読み解くためのヒントも与えてくれる。4冊全部読んでから収録に臨みましたが、自分では気づかなかった面白さに、たくさん気づくことができました。ぜひ「100分de名著 for ティーンズ」を多くの方に見ていただけたらうれしいです。

加藤シゲアキ(かとう・しげあき)
1987年7月11日生まれ、大阪府出身。NEWSのメンバーとして活動しながら、2012年に「ピンクとグレー」で作家デビュー。2021年「オルタネート」で吉川英治文学新人賞、高校生直木賞を受賞。