声優を目指すも、その夢を諦めかけている前島皐月(杉咲花)。その皐月と恋に落ちるガーデンデザイナー、森下陸(藤原季節)。そして独特な雰囲気を持つガーデナー、白石悠磨(森山未來)。この3人を中心に優しい関係の物語を描くドラマ10「プリズム」。主人公・皐月を演じる杉咲さんに、物語のカギとなる“3人の関係性”について聞いた。

“陰と陽”が見え隠れする皐月が好き

私が演じる皐月さつきは内向的で、一歩踏み出すことに臆病になってしまっている人。人と関わることは時に体力のいることですし、自分自身の正体を思い知らされることもあるからこそ、より一層おっくうになってしまう。

それでもやっぱり人と交流することを諦めたくない、人とつながっていたいという気持ちが、皐月にはあると思うんです。その思いは共感できました。皐月は心の内側にあるものを表現することが得意ではない方だけれど、相手の言葉をちゃんと聞き、思いを感じ取ろうとしている。だからこそ、演じるうえでは相手を“しっかりと見つめる”ということを意識しています。

また、第1話で、皐月が自作のテラリウムに込めた「きれいなものをきれいなまま、閉じ込めておきたい」という思いが、私は好きで。

この言葉には、美しいものを信じていたい一方、きれいなまま閉じ込めておくことなんて本当は叶わないと分かっている、皐月のダークな一面も含まれていて。そんなふうに陰と陽が見え隠れする皐月が、私は好きなんです。陸や悠磨との出会いを通して、今後皐月がどんなふうに変化していくのか、注目していただけたらうれしいです。


切なさを感じる陸と、つかみどころのない悠磨

皐月にとって陸は、どこか感覚的に共鳴できる人。「うれしい」「悲しい」という感覚が近いのでしょう。だから、「こういうところが好き」というよりも、なぜかは分からないけれど魅力を感じてしまうのだと思います。あとは、実際にお芝居していると“切なさ”みたいなものを陸からすごく感じるんですよね。

陸を演じる藤原さんはとてもピュアな方です。真摯に作品に向き合われている姿をお見かけする一方、撮影前に「八百屋さんで野菜を買い出ししてきた」と、リュックいっぱいに詰め込んだ野菜を見せてくれたり。どんなことに対しても素直で飾らない姿がすてきだなと思います。

また森山未來さん演じる悠磨は、心の中にあることをあまり言葉にしない、つかみどころのない人物。

だからこそ、ポロっとこぼしたひと言が皐月にとても響く——。演じる未來さんにしかない空気感も相まって、話す内容は台本で分かっているのに、これから彼は何を話すんだろうと思わず耳を傾けてしまうんです。とても魅力的な人物だと思います。


大切な人を思う作品になったら

今後皐月は、陸や悠磨をはじめ、皐月の母(若村麻由美)や父(吉田栄作)、父の同居人・しんさん(岡田義徳)との関わりもとおして、少しずつ心を開いていきます。皐月の内面的な変化をしっかりと表現することを大切にしたいと思いますし、演じるのが楽しみでもあります。

皐月と陸、悠磨、それぞれの思いが交わることで、自分自身と向き合ったり、何かを伝えたり、決断をするようになっていく——。
私自身、皐月という役を通して、今、この作品をお届けする意味を探している最中ではありますが、作品を見た方々が、自分や大切な人、まだ会ったことのない誰かのことを思い浮かべるようなきっかけになったとしたら、とてもうれしいです。

[スペシャルクエスチョン]
Q「プリズム」に出演されて、植物に興味を持つようになりましたか?

ガーデニング経験はなかったのですが、今回の撮影でお花屋さんに行った際に「ツルウメモドキ」を購入して育てています。水やりをすると葉の色が濃くなる、そんな変化を見るだけで心地よい気分になります。
杉咲 花(すぎさき・はな)
1997年10月2日生まれ、東京都出身。
NHKでの主な出演作に、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」、連続テレビ小説「おちょやん」「とと姉ちゃん」ほか。主人公の声優を務める、劇場アニメ『ぼくらのよあけ』が2022年秋に公開予定。

ドラマ10「プリズム」
放送後1週間、NHKプラス(https://plus.nhk.jp/)で見逃し配信
公式HP:https://www.nhk.jp/p/ts/VW95PNPX88/