これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
朝起きて、天気がいいと気持ちがいいですよね。心も体も元気が出てきます。反対に、雲が一面に広がって、今にも雨が降りだしそうな空模様だったら、憂鬱な気分に……。その理由、あなたは知っていますか?

答え:現代人が働き者だから

詳しく教えてくれたのは、明治大学で進化心理学を研究している石川まさ教授。
私たちの気分が天気に左右される理由は、現代人が持つ〝遺伝情報〟と関係していると言います。

石川教授によると、人類は、進化の過程で「晴れた日には活動的になり、天気が悪い日には休息モードになる」という遺伝情報を持つようになってきたと考えられます(体の仕組みでいうと、自律神経の交感神経と副交感神経の作用による)。

晴れの日は、明るく温暖なので、自律神経のうち交 感神経が活発になって心拍数を上げる=活動的に。 一方、天気の悪い日には、気圧が下がる影響から呼 吸が浅くなる。すると今度は副交感神経が働いて心 拍数を下げるので、活動力も落ちる=休息モードに。

▼ところが、実際は……
雨や曇りの日は、遺伝情報から、さらに自律神経の働きで体は休息モードなのに、実際には働かねばならない。結果、憂鬱な気分に……。

実際、産業革命以前は、多くの人々が農業や漁業によって生計を立てていたので、「晴れの日は働いて、雨の日は休む」という暮らしが合理的とされていました。

ところが、産業革命のあと、世界中の多くの人々は、天気とは関係なく、一年中働き続ける〝働き者〟になってしまいます。
すると、保有する遺伝情報と、直面している現実にギャップが出ることに。

当時は、まさに「晴耕雨読」の暮らしをおくっていたため、遺伝情報にも矛盾せず、「雨の日だから憂鬱」ということはなかったのかもしれない?

つまり、空がドンヨリしているような日、私たちの体は遺伝情報に基づいて休息モードに入っています。

にもかかわらず、実際には、雨が降ろうと雪が降ろうと、いつもどおりに働かなくてはなりません。そんなせめぎ合いの結果、憂鬱になってしまうというわけです。なんだか、せつないですね。

※雨が降っても食べ物が取れる地域に長く生活していた人たちの子孫は、「雨の日は休む」という遺伝情報がなくなっていったため、雨や曇りの日に憂鬱になることは 少ないという。

(NHKウイークリーステラ 2021年9月24日号より)