これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
ふいに目に入った壁のシミが〝人の顔〟に見えて、思わず声を上げてしまった。ありえない場所に〝人の顔〟が写り込んだ写真をこっそり処分した。そんな経験はありませんか?実は、それ、理由があるんです......。


答え:点・点・点が人の顔に見えたほうがたぶん生き残れるから

詳しく教えてくれたのは、立命館大学総合心理学部の高橋康介教授。

実は、「壁のシミが人の顔に見えるのも、人面魚も、心霊写真も、ほとんどが一つの現象で説明できる」と言います。

それが、「パレイドリア現象」。目で見たものに対して、(本当はそうではなくても)自分が知っている別のものに当てはめてしまう現象のことです。

目と口は、顔を認識するうえで重要なパーツ。人物 画から、顔の輪郭や鼻などを消してしまっても、目 と口があった位置に置いた3つの点だけで、“人の 顔”に見える。これが、「パレイドリア現象」なのだ。

特に人にとっては、上に2つ、下に1つの3つの点が逆三角形の頂点となる位置にあるだけで、多くの場合、人の顔に見えてしまうのだとか。

確かに、木の幹などに3つのウロが逆三角形に並んでいたら、それぞれを〝左目・右目・口〟に当てはめて見てしまうことがありますよね。

パレイドリア現象が起きているときの脳の反応を調 べると、実際に人の顔を見たときと同じ部位が反応 していることが研究でわかっている。それほど本能 的な現象ということ。

では、なぜ人はそんなふうに3つの点を人の顔だと思ってしまうのでしょうか?

高橋教授いわく、「一つの説としては、あいまいな情報やよくわからないものに対しては、パターン付けをして判断したほうが生き残るうえで有利だったという考え方があります。

森の中で何だかわからないものに遭遇。何だかわからないながらも、3つの点によって人や動物の“顔”に見えたため、近づくのはやめて逃げることに。その正体がなんであっても、これなら命の危機に陥ることはない。

つまり、正体不明のものに遭遇したとき、『あれは人の顔だ』=『見知らぬ敵だ』と思って逃げておけば、生き延びる確率は上がる。そのためだというわけです」。

(NHKウイークリーステラ 2021年8月20日号より)