みなさんは、環境についてどう考えていますか?
最近では、飲食店に行くとプラスチックストローから、紙ストローに変わっていたり、また買い物に行く際はエコバックを持ち歩く方もいるかと思います。どちらも環境に配慮した行動です。このように環境について考えた取り組みはさまざまあります。
では、印刷物はどうでしょうか? 「環境に優しい印刷物」といっても、ピンとこない方が多いかもしれませんが、印刷工程や工場の選択次第では、環境に優しいものができあがります。
私は、チラシやパンフレットをはじめ、さまざまな印刷物を作成してきましたが、改めて環境を意識して作成した印刷物をご紹介します。
NHKの国際放送局が発行している「NHKワールド JAPAN」のパンフレット(日本語版・英語版)を今年3月に作成しました。これはNHKの国際サービスとして、NHKが発信しているテレビやラジオ、インターネットやアプリなどの情報をまとめたパンフレットです。
では印刷物を作成する際、環境に良い取り組みとは、具体的に何ができると思いますか?
印刷用紙の原料は森林問題に関係し、インキに使用されるVOC*は、大気汚染に関係します。そのほか、印刷工程で発生する廃液や、印刷設備の使用時や配送時に出るCO₂排出など、さまざまな環境負荷がかかります。
そうした環境負荷を少しでも軽減するため、印刷工場の選定をしました。しかし数多くの印刷工場がある中で、環境に配慮した工場を見極めるのは難しく、そこでひとつの判断材料としたのが、環境ラベルです。環境ラベルは環境負荷を軽減した製品に付与できるもので、印刷工場によって、付与できる種類は異なります。
それぞれの環境ラベルは、「ロゴマーク」として、皆さんにも分かる形で表れています。
「NHKワールド JAPAN」パンフレットにあるロゴマークをここでご紹介します。
グリーンプリンティング(GP)認定工場が製造し、かつ、紙やインキなどの印刷資材が環境配慮基準を満たした印刷製品に表示できるマークです。
環境や動植物を守り、森林に依存する人々や林業従事者の人権を尊重し、適切に管理された森林の樹木や適切だと認められたリサイクル資源で作られた紙・木材製品につけられるマークです。
通常のオフセット印刷では、印刷時に有害物資を含む「湿し水」を多く必要としますが、水なし印刷では「湿し水」を必要とせず、現像処理後の排水も下水に流すことができます。またロゴマークに記載されている数字は、1冊あたりの製作・輸送・廃棄の際に発生したCO₂排出量を表しています。排出されたCO₂はクレジットを購入し、カーボン・オフセットしています。
通常のインキは、大気汚染を招く危険性の高い有害物質を発生させる石油系溶剤が含まれていますが、その石油系溶剤をゼロにしたインキです。※NON-VOCマークは、各インキメーカーごとに異なります。
ここまで読んでいただくと、印刷工程を見直すことなどで、環境にやさしい印刷物を作れることがお分かりいただけたかと思います。あなたの身のまわりにある紙製品に何かロゴマークがついていたら、それは環境を考えた印かもしれません。
環境に配慮した行動というと、なかなか自分には難しいと思いがちですが、今回このパンフレットを制作したことで、何か商品やサービスを購入する際に、環境ラベルが付いているものを選択しようと思うきっかけになりました。環境ラベルの意味を理解すると、より環境保全への理解も深まります。少し気を配るだけでできる身近な環境活動として、ぜひ探してみてください。
印刷技術は、時代とともに年々進歩しています。環境課題が社会問題となる中で、環境負荷がより少ない印刷物を今後も考えていきたいと思います。
*…揮発性有機化合物。揮発性が高く、大気中で気体となる有機化合物の総称。
(文/一般財団法人NHKサービスセンター 五十嵐正恵)