土曜ドラマ「17才の帝国」
毎週土曜 総合 午後10:00ほか
「NHKプラス」で1週間見逃し配信中!

第2回「幸福への選択」5/14(土)放送
真木(神尾楓珠ふうじゅ)の改革に、前市長の保坂(田中泯)らが反発し、市議会復活を直談判する。しかし真木は権威に屈せず、サチ(山田杏奈)と一緒に住民の声を聴き始める。商店街の再開発に反対する鈴原(塚本晋也)の「一度失われた風景は取り戻せない」の言葉に感動し、真木はソロンを駆使し再開発の決議を住民投票に託す。ピュアな心で政治に向き合う真木の姿に、かれていく平(星野源)。真木の志の原点にあるものとは……。

ユキ? ユキって誰?

第1回のラストで、真木が官邸の隠し部屋の奥に向かって呼びかけた女性の名だ。
ずっと誰だろうと思っていたが、今回のラスト、やっと顔を見せてくれた!
前髪パッツンにロングヘアーの美少女。セーラー服を着ているから中学生?
いや、「真木くん」って言ってたから同世代の高校生か。
ただ、隠し部屋のユキは目を閉じたままだ。見たくないものでもあるかのように……。

続くエンディング映像には、実験都市ウーアの商店街をさすらうユキと思しき女性の姿が。VR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術が進んだ世界だから、実在している人かどうかもまだわからない。
謎が謎を呼ぶ女性である。

ともあれ、第2回が放送された。
前回、真木のイニシアチブで市議会が廃止。市の職員の削減さえほのめかしたことから、ウーアの首相・真木の支持率は、10ポイント減の41パーセントに。
予想どおり、元市議会議員や市の職員たち“大人”の不平不満が噴出するが、真木のピュアな信念は揺らがない。

前市長の保坂は、真木が進める改革に大反発する。

そんな中、10年前から進められてきた商店街の再開発計画が正式決定されようとしていた。これに深くからむのは、日本の首相・鷲田(柄本明)の孫で、ウーアの環境開発大臣を務める、鷲田照。

「鷲田はわしだ!」なんてダジャレをいいたくなる名字も気になるが、鷲田照役は、2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」で織田信長を見事に演じた染谷将太だ。
ただ今作の役どころはボンボン育ちで、調子がよいが器の小さそうな男。

それに加えて、再開発を担当するデベロッパーの接待の席で、彼に土下座をさせてしまうんだから、「麒麟がくる」ファンとしては、「え! あの信長が土下座!」と、ちと悲しくなってしまう。

そんなこんなで、住民の声をもっと聞くべきだと悟った真木は、首相補佐官の茶川サチとともに商店街を視察し、人々と触れ合うことに。(2人にSPが一人も付いていないのは、大丈夫なのかなあ?)

すると、商店街の人々や住民の多くが、じつはこの再開発計画には反対だということがわかってくる。

今回は、真木のこれまで知られていなかった生い立ちも語られていく。
幼いころから母親と2人暮らしで貧しい生活を強いられ、母も早くに他界。祖母に引き取られるが、まもなく体が不自由になった祖母の介護を担うことになる。

最近、よく問題視されているヤングケアラーだ。
そんな経験が、真木に政治や社会に対する関心を育み、高校生で政治サロンに参加。政治の勉強を積む中で「助けを求める人々に手を差し伸べ、救う政治」を志し、今回、AIソロンによってウーアの首相に抜てきされたのだ。

住民の声に心動かされた真木は、ソロンに新しい計画策定を指示。それらを従来の計画と一緒に公開し、住民投票に踏み切る。すると……従来の計画は否決。新たな計画が練られることになる。
もちろん、真木の支持率も61パーセントに急上昇。めでたしめでたし。

——って、住民の声を聞いただけで、9割がた決まっていた計画をにするなんて、少々短絡的すぎの気がしないわけでもない。
それに、政治の勉強を積んだわりには、真木が政治の知識や戦略を発揮するシーンがちょっと少ないかも。これから、ぜひ“大人”との丁々発止に期待したいところだ。

もちろん真木のこのピュアさが、利己的な“大人”たちの言動を際立たせることに一役買っているのも事実。
ピュアな人が持つナイーブさや、ある種の冷たさ、残酷さにクローズアップしたいという意図もあるのだろう。

それよりなにより、両者の間に立つ内閣官房副長官・平清志の存在感がすごい。

星野源演じる、エリート政治家・平清志。

腹の中を容易に見せず、敵か味方か判別できない切れ者——。
難役を演じ、作品の要所をしっかり締める星野さん、さすがです。
これから、平のバックボーンが明らかになってくるのが楽しみだ。

もう一つ気になるのが、サチが考案した“善意ポイント”なるもの。

ウーアの総理補佐官として、真木を支えるサチ。

真木が政策として進めるよう命じていたが、「善意」こそもろの剣なのに。
物語のガイド的役割を担うサチは、真木を補佐する立場でありつつ、唯一家族全員の姿が描かれる登場人物で、ほのぼのシーンを提供してくれている貴重な存在だ。大きな波風が立たなければ良いのだが……。

第3回「夢見る街」は5/21(土) 総合 午後10時から!
次回も見るべし!


(蛇足)
第1回で紹介されたように、ウーアをつかさどるソロンは、経済成長を重視する「トリ」、生活文化を重視する「ヘキサ」、持続可能性を重視する「ノナ」という3台のスーパーコンピューターから構成される政治AI。(ギリシャ数字で、トリは3、ヘキサは6、ノナは9。みな3の倍数)

ウーアをつかさどる最先端AI「ソロン」。

今回の商店街再開発でも、それぞれ重視する観点から3つの新計画を提案したように、ウーアの行政では3つのスーパーコンピューターが違った観点から政策提案をし、最終的に閣僚たちが決定していくことになる。

アニメファンなら、3つのコンピューターシステムと聞いてすぐ思い出すのは、「新世紀エヴァンゲリオン」のマギシステムだろう。NERV本部のスーパーコンピューターシステムで、「メルキオール」「バルタザール」「カスパー」という性格の違う3つのコンピューターの合議制をとっている。

ちなみにマギ(MAGI)は、新約聖書でキリストの誕生を祝福するため、ベツレヘムに訪れた東方三博士のことで、コンピューターには、3人の博士の名前が冠されている。

じつは、今作のソロンの声を担当しているのは、緒方恵美。
「新世紀エヴァンゲリオン」の主人公・碇シンジ役で知られる人気声優だ。
今作のスタッフにもエヴァファンが多いのだろうか、粋な計らいをしてくれる。

そういえば第1回の冒頭、ソロンが真っ赤に光り、不穏な状況になっていた。ただ、それを見たサチの表情が喜んでいるように見えたが、その意味は?
当場面は、この物語が始まって半年後となっていた。
まさか、これからソロンが暴走? ウーアに大きな危機が? そして真木たちにも?
そんなとき謎の女性ユキが現れ、エヴァの綾波レイよろしく
「真木くん、あなたは死なないわ。私が守るもの」なんて言ったりして(妄想失礼)。