「宇宙天気」という言葉をご存じでしょうか?
NHKのニュース番組などで気象予報士としておなじみの斉田季実治さんは、「宇宙天気予報士」の資格が必要だと考えているそうです。
宇宙天気って、なに?
私たちの暮らしにどんな影響があるの?
2024年9月に品川区で行われた講演会で、斉田さんがわかりやすく解説してくれました。
(講演会の企画協力をNHK財団が担当しました)

地球天気を決めるのは「雲」、では宇宙天気は?
2024年9月7日、品川区立五反田文化センターで行われた講演会「宇宙天気ってなぁに?」にはおよそ150人が訪れました。
講演は、普段の気象予報士としての仕事の話から始まりました。
雲はどうしてできるのか、雲の形から何がわかるのか、突然の豪雨や台風などの雲は、どのように観測されているのか……。
この大きな雲の流れによって引き起こされるのが「災害」です。
気象予報は災害から命を守る行動をとってもらうためにあるのだ、ということが強調されました。

地球の天気を考える時、大切なのは「雲」だということがわかりました。
では、宇宙天気は? というと……。

そう、太陽です。
およそ11年周期で活動が活発になる太陽は、今年2025年にピークを迎えています。太陽が活発になると私たちの暮らしに様々な影響があると言います。
太陽は光や熱だけでなく、X線や紫外線、高エネルギー粒子などを大量に放出しています。
太陽の活動が活発になると、表面ではフレアと呼ばれる大きな爆発が起こり、それらが大量に地球に届いて人工衛星や電力網などのインフラに悪影響を与えます。
斉田さんはいくつか例を挙げて説明してくれました。

▼通信・放送障害
人工衛星が故障すると、衛星放送が見えなくなったり気象観測ができなくなって天気予報が出せなくなる、通信途絶により航空機や船舶航行などに悪影響を及ぼす可能性がある。
▼GPSの精度低下
カーナビゲーションやスマートフォンの位置情報に誤差が生じるほか、車の自動運転や航空機、船舶の航行も位置情報の誤差が増大し、地球上の交通網に重大な影響を及ぼす可能性がある。
▼停電リスク
変電設備の変圧器の故障などで広範囲かつ、長期間にわたり停電が発生する可能性がある。
▼宇宙飛行士への影響
宇宙空間で作業する宇宙飛行士の被ばくリスクが高まり、健康被害が発生する可能性がある。
宇宙天気も災害の一つ⁈
社会生活に影響を及ぼす宇宙環境の変化を宇宙天気と呼びます。斉田さんは「私たちの社会は高度な技術に依存するようになり、宇宙天気の影響を受けやすくなった」と語りました。

2020年には国連防災機関と国際学術会議が宇宙天気を災害の1つに定義して、台風や地震と同様に宇宙天気にも向き合うことを求めています。日本では総務省の検討会が宇宙天気について予報の重要性が話し合われました。
将来、宇宙天気のコーナーができるかも?
斉田さんの今の取り組みは、宇宙天気予報士の資格を作ることです。宇宙天気予報士は太陽の専門知識を持ち、今後起こりうる通信障害や電力網など社会インフラに与える影響を国民に伝えて、被害を最小限に抑える役割が期待されています。斉田さんは「近い将来、ニュースの気象情報の後に宇宙天気のコーナーができているかもしれません」と話しています。

講演会の締めくくりとして、斉田さんは、社会インフラがより高度化し、更に宇宙天気の影響を受けやすくなる11年後に向けて、宇宙天気予報の精度向上が必要だと語りました。そして宇宙天気予報士は現在の気象予報士並みに求められるかもしれない、とその役割の重大さに触れ、幕を閉じました。
NHK財団では新しい災害に定義された宇宙天気について、今後も注視していきます。
(NHK財団 社会貢献事業本部/広報広聴事業本部 秋山樹林)