学生のころ舞台俳優を夢みていました。半世紀も前のことです。そんな夢を今年、思わぬ出会いがかなえてくれました。

映画監督の大森青児さんと初めてお会いしたのは民放ラジオでした。大森さんはNHKで大河ドラマや“朝ドラ”の演出をしてきた人で、番組では朝ドラの歴史をひもときながら昭和を振り返りました。

縁は異なもの! このときのディレクターが、以前NHKラジオ「アートドラマ」を一緒に作った人でした。私と女性ゲストが、さまざまな巨匠と彼が愛した女性にふんし、その人生を語るドラマ仕立ての番組です。そのディレクターが大森さんに「映画を作るときは是非に」と、私を売り込んでくれたことがきっかけで、映画への出演が決まりました。

映画は岡山県たかはし市を舞台にした『晴れの国~もんげー幸せ~』。岡山県出身の大森監督がふるさとを舞台に家族の再生を描いています。主演は三田村邦彦さん、前野朋哉さん。三田村さんとは同じ年に共に文学座の研究所を受けていたという、これも不思議なご縁がありました。

私の役は高梁市に転入してくる人に街を案内する男です。出演シーンは3つ。もちろん、台詞せりふだってあります! そんなに多くはありませんが。しかし初めての映画、相手の芝居を受けるとかアドリブなんてとんでもありません。

2022年5月、見事な五月晴れの日にクランクイン! 現場に大森監督の陽気な声が響きました。ところが撮影2日目、なんとスタッフがコロナを発症。検査待ちの日が続き、結局撮影は次年度へ持ち越しに。この間のスタッフ、中でも監督の精神的な苦労は筆舌に尽くし難いものがあったと思います。

しかしコロナ禍、低予算という足かせの中でも映画作りにかけるスタッフの熱意は冷めることはありませんでした。翌2023年5月に撮影が再スタート。2024年、無事に完成し、岡山での先行公開を終えて、いよいよ2025年に東京や神戸などで公開予定です。乞うご期待!

(いしざわ・のりお 第2・4水曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年12月号に掲載されたものです。

最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』2025年2月号でご覧いただけます。

購入・定期購読はこちら
2月号のおすすめ記事👇
▼追悼 多くの人に愛された名優・西田敏行
▼江戸川乱歩の魅力 佐野史郎・石川巧
▼ボニージャックス リーダー・玉田元康の充実の日々
▼健康診断のデータを生かして健康長寿 ほか