平松佑介さん(44歳)は東京・高円寺にある老舗銭湯「小杉湯」の三代目。2016年に家業を継いだ平松さんが“町の銭湯”を守る意気込みを語ります。
聞き手/遠田恵子
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2025年1月号(12/18発売)より抜粋して紹介しています。
斜陽産業と言われたけれど
――小杉湯の建物は本当に立派な構えですね。
平松 ありがとうございます。神社仏閣のようなこの建物は、1933(昭和8)年の創業以来90年以上、一度も建て替えることなく、大切に使っています。
――脱衣所の天井がずいぶん高いなと感じました。
平松 天井は3階建ての建物よりも高いんです。宮大工の手による格天井という格式の高いもので、主に屋久杉が使われています。
――大学卒業後は一般企業に就職されたとか。
平松 大学時代から“自分の代で終わらせるわけにはいかない”とは考えていました。ただ、当時は両親も元気でしたし、社会に出て働いてみたいという思いもあり、住宅メーカーに入社したんです。その後、仲間とベンチャー企業を立ち上げ、36歳のときに小杉湯を継ぎました。
ほっとできる場所でありたい
――家業を継いで以降、ここまでは順調でしたか。
平松 継ぐときにいちばん悩んだのは“これからの社会に本当に銭湯は必要なのか”ということ。今では次世代でも銭湯は不可欠だと確信しています。それを順調と言えるかどうかは分かりませんが。
若者の町にも銭湯文化を
――2024年春、東京・原宿に2号店を開業しました。ねらいは何でしょうか。
平松 業界の維持・発展のためには、新たに銭湯を増やす取り組みが欠かせません。でも経営環境が厳しく、銭湯は減る一方です。文化の発信基地でもある原宿で再開発があり、地域に根ざした銭湯を作って、その存在意義を広めたいと思ったのです。
――手応えはどうですか。
平松 原宿の町に住んでいる方が、たくさん来てくださっています。すでに常連さんもいらっしゃいますし、ご家族連れも多いんです。町の銭湯の光景が生まれていて、すごく手応えを感じています。
ひらまつ・ゆうすけ
1980(昭和55)年、東京都生まれ。2016(平成28)年に家業の小杉湯を承継。会社組織にし、1日に1,000人来る銭湯に成長。’24(令和6)年には東京・原宿に2号店を開業。
※この記事は2024年10月3日放送「100年先まで続く銭湯を」を再構成したものです。
「銭湯が好きで、この仕事が楽しいと思えるから続けていける」と語る平松さん。未来へ向けての取り組みや抱負など、お話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』1月号をご覧ください。
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