NHK財団では、介護にまつわる喜怒哀楽を歌に詠んでお寄せいただき、その中から100首を選んで「新・介護百人一首」として毎年発表しています。今年もお寄せいただいた短歌の中から、入選作100首を決定いたしました。
介護をめぐる様々な思いを三十一文字に
今年ご応募くださったのは5,783人、寄せられた歌は12,440首に上りました。毎年10代から100歳を超える方まで、さまざまな年代の方からご応募いただいています。幅広いのは年齢だけではありません。応募者と介護の関係性もいろいろ。
現在介護をしている人、受けている人はもちろん、介護を学んでいる人、教えている人、これから先の介護を見据えている人など、実に多様です。そんな介護をめぐる現状を目の当たりにして、誰にとっても他人事ではないということを強く感じます。
百首の選定が行われた最終選考会の模様をご紹介します。
入選作品は、新・介護百人一首2024の公式HPでご覧いただけます。(※ステラnetを離れます)
音にして、味わいながらの最終選考会
最終選考会が行われたのは10月30日。この日までに先生方には全ての作品に目を通していただき、203首に絞られました。選考にあたって、短歌が一首ずつ丁寧に読み上げられると、文字だけで読んでいた時とは違った、新たな魅力が立ち上がります。
短歌は歌そのものだけでなく、詞書(前書きのこと)も含めてひとつの作品です。詞書まで丁寧に読んで、一つひとつの言葉が示すもの、歌が詠まれた背景を考えながら、選考が進みます。
4年目となる今年は、選者として小島なお先生を新たに迎え、5人の選者の方々に選考を行っていただきました。
選者のみなさんから
「アンケートや統計では見えてこない現場の声がここにはあると思います。介護の必要な高齢者がますます増えることが予想される中、社会全体としてよい仕組みができるよう、こうした短歌作品を是非読んで、社会に生かして欲しいと思います」(春日いづみ先生)
「介護を受ける側の歌も介護をする側の歌も、現実の厳しさにめげることなく、前向きに明るく捉えていらっしゃる歌が多く、選をしている私たちも大いに勇気づけられ、励まされる思いがしました」(桑原正紀先生)
「他では見られない『ならでは』の歌に出会うことができます。今回も、『喀痰吸引人形』、『テリマカシー』(インドネシア語で“ありがとう”の意)など新しく知る存在や言葉も多く、新鮮な気持ちで選歌をさせて頂きました」(笹公人先生)
「新・介護百人一首の選を担当させていただくのは今年で4年目になりますが、応募作品の束が届くと、みなさんに再会したような喜びを感じるようになりました」(花山周子先生)
「老いてゆくこと。介護をすること。それは生きているすべての人にとって一日いちにちの宿題のようなものだと応募作品を通して感じています。正解のない、決してきれいごとではない老いと介護の問題を、作品を通じて共有できる場があるのを頼もしく、うれしく思います」(小島なお先生)
今年も素晴らしい短歌をたくさんお寄せ下さり、ありがとうございました。
介護の中で感じた思いを短歌として形にする……この100首が、介護に関わる様々な立場の皆さんにとって、励みになる“場所”になれたらと思います。
今回の入選作品は、新・介護百人一首2024の公式HPでご覧いただけます。(※ステラnetを離れます)また、来年度「新・介護百人一首2025」の募集についても、こちらのページでお知らせします。25年春ごろ開始の予定です。
「新・介護百人一首」では、毎年作品集の頒布や、ホームページ、月刊誌ラジオ深夜便等で入選作の紹介を行っています。
また、2023年度の作品では新たな試みとして、AI音声による読み上げをお楽しみいただけます。ステラnetの新・介護百人一首のページで聞いてみてください。
来年は、あなたも是非、介護を歌に詠んでみてください。
(展開・広報事業部 岡部桃香)